
Photo by
tofumazeta
詩138「でんでんむし」
でんでんむし
を目にしたのは
ずいぶんと
久しぶりで
紫陽花を
観にきたのに
でんでんむしが
気になる
でんでんむしむし かたつむり
おまえのあたまはどこにある
つのだせ やりだせ あたまだせ
と幼児の合唱が頭に響く
ひとりだけ
音を外しているのが僕だ
言われなくても
直ぐに分かる
あの頃は音痴なんていう言葉を知らず
誰よりも元気に歌っていた
幼稚園の発表会に集まった保護者たちが
僕の歌声を笑っていたとは知らずに
楽しんでくれていると思っていた
でんでんむしむし かたつむり
おまえのあたまはどこにある
つのだせ やりだせ あたまだせ
やがて
小学生になり
独唱したら
みんなから笑われた
音痴だと
みんなから笑われた教室の景色を
今でもはっきりと憶えている
こどもは
正直で
残酷だ
あの日から
なるべく小さな声で
時には口だけ動かして
歌うふりをするようになり
音楽はいつも「2」だった
家に帰ったら
風呂場で
元気に歌ってみようか
幼稚園の頃のように
でんでんむしむし かたつむり
おまえのあたまはどこにある
つのだせ やりだせ あたまだせ
今でも
相変わらず
人前で歌えないが
代わりに
詠うようになった
大人になってから
詩に出会えて
良かった
と思う