『悲しみの秘義』若松英輔(21)【一対一】

 河合隼雄とのエピソード。
 若松さんが大学生時代の或る会合で河合さんの右隣りに座った時の印象話は興味深い。いつも笑顔のイメージがある河合さんを間近で見た者のみが知る、あるいは若松さんだからこそ気づいた場面だったのかもしれない。

 深層心理学から「たましい」学へ。

 数学教師が心理学を学び、治療者、研究者から思想家へ。

 河合隼雄を突き詰めて学ぶことは「かなしみ」を理解するためには有効なのかもしれないな、と思った。今まで、数冊の著書や対談を読んだことがあるけれど、若松さんのエピソードを知ると、読み方が甘かったような気持ちになる。分かったような気持ちになっていたが、本質はもっと奥深いところにあるのだろう。

 その道を究めようとする者は皆「かなしみ」を経験し、乗り越え、更なる高みへと歩みを続けるのだと改めて教えられた気がする。

 「かなしみ」は決して負の事象ではない。
 

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