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リモート再会:数学の先生

先日、お母さんから、ある一枚の名刺が突然送られてきた。
ばったりとお会いしました。連絡してみたら?と。

みてみたら恩師の名刺だ。

それは高校生の頃の、生意気でめんどくさい私の、
とてもお世話になった、先生の名刺だ。

そうか、教頭先生になったのね、とうれしくなった。

高校1年生。
私のクラスはとにかく、個性的で騒がしい人ばかりの
ある意味問題児の多いクラスだった。
先生も大変だっただろうな。と思う。

今では、フリーランスや若手社長、バリキャリの人たち。
そんな人たちの集まりだったから、
ちっちゃい中学から入学した私は、雰囲気の変化に戸惑ったり、
わくわくしたり、刺激的な高校1年生だった。

1年生のクラスが面白く、勉強も楽しかった。
だから、2年生になっても3年生になっても、数学で迷うことがあれば、
その先生に聞きにいった。

おいおい、俺んとこにくると、角が立つんだぞ。と、大人のふるまいを教えてくれたけど、
めんどくさそうにしながらも、先生はうれしそうだった。

2年生の中間ごろだったか、突然、進路を決めるタイミングがくる。
白い紙に進路を書いてくださいと言われても、よくわからなかった。

親からは、お金は心配しなくていいから、大学には必ずいって、卒業しなさい。と言われた。
正直、いい大学に入ることは「映え」のようで、気が乗らなかったし、
いい大学にいってブランドを身に着けるよさが全然わからなかった。

私は美容師か花屋になりたかった。けど、運よく進学校に通えたこともあり、
大学以外の選択肢を選ぶ人は学年でも数人で、変わりモノ扱いされた。
頑張れば、名の通った大学に入学するチャンスがあるのに、努力しないの?
そんな雰囲気をビシビシと感じて、言い出すことが出来ず、細く長く、社会で生きていくためには
何を学ぶほうがいいのかなあと、漠然と考えた。
こうゆうとき、やっぱり私の足は、職員室の先生のデスクに向かうのだ。

そもそも社会を知らない。
やりたいことなんてない。
なんとなく、医療系には詳しいほうだけど、
私はグロテスクなものを見ることができないし、
生命にかかわる医療に敬意はあるが、
仕事とするには荷が重すぎる。

きっと、研修医ってだけで、ぶったおれそう。
現に私のおばさんは、研修医時代に、オペ室でぶっ倒れたらしい。

それを聞いて、すぐに、やめよう、、、と思った。

じゃあ、血をみない、理学療法士とか、
内科医とからなら?
とか思ったけど、医療に関われるほど、
頭がよくないことは、わかっている。努力しても、難しい気がしている。
問題児ばかりの個性と、実力のある人たちの中で、私のプライドはすっかり折れていた。

理学療法士なら、なんとかなるかもしれない。でもなんとなく、しっくりこない。

それ以外に、資格があって、どんなに日本が不景気になろうと、
続けていける、食べていける職種はないものか。

現実主義な私は、やりたいことより、やれそうで、永続的なものを
選択したいと思っていた。

悩んでいたけど、当時の担任の先生とは考え方が合わなかった。

だから、恩師のデスクに向かった。

バリバリの理系脳でありながら、ぜんぜん教師っぽくない人。
普通伝えちゃいけないようなことも、俺はこう思うんだ、、、と伝えてしまう人なのだ。

「君たちには、日本の未来を背負う責任があるよ。」
だって、努力すれば、総理大臣にはなれなくても、何かのリーダーになれる。
人を束ねていけるかもしれない。

人にはそれぞれ、役割がある。
生まれた環境によって、チャンスがない人たちも大勢いる中で、
君たちにはいま、無数のチャンスがある。

何もせずにニートになることもできるし、
やりたいことを優先することは可能だけど、
少し努力をすれば、手でつかめるチャンスが、
君たちの目の前に広がっていることを、理解できているだろうか。

そういわれたとき、何者にもなれるような気がしてきた。

すべては自分次第なのだ。そう、この時も思っていた。

その中で、それなりに稼ぎとなり、
ハードにやりがいをもって働けることがいいのかな。と
漠然と思いつつ、それがなんなのか、決めきれないでいた。

ぽつぽつと理由を並べては、ポジティブとネガティブな側面を
先生と話しあう。

看護師は?保育士は?学校の先生とか。理学療法士?

どれも話す中で、ちょっとネガティブなものがものがでてくる。

あー、建築は?

…。

ありかもしれない!

そうやって、私の進路は建築にきまった。

まあでも、チャンスはあれど、
有名大学にさくっと入れるわけではなく、
あんなに直前まで頑張った物理が大幅に
足を引っ張って、受験は見事に失敗した。

大学ではゆるく生き、社会人になって、
私は平凡な会社員になった。
人生初めての体育会系な会社に
戸惑いながらも、建築に携わることは
とても面白いなと思う。

チャンスをものに出来ていないような気がして
親にも先生にも申し訳なさは残っているけど、
それなりに、私なりに仕事をしてきた。

元気か?生活はどうだ?
そうやって、社会人になっても先生は気にかけてくれた。

元気かな。
私は人に支えられて生きているなあとつくづく思う。

不器用なりに、今も生意気に生きております。
うまく生きれているかはわからないし、成功とはほど遠いのかもしれないけど。

16歳はいい大人になりました。

先生と、一緒にお酒が飲みたいな。

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