あの子は今も夢を追って
今日、仕事で郵便ポストまで車で行ってる最中
高校の部活の後輩とすれ違った。
同じ部活の後輩のその子は途中で部活を辞めた。
その子には夢があった。女優になることだった。
配信で人気者になって、事務所に入って…とまぁ私にはよく分からない色々の為に部活を辞めた。
しかしびっくりしたのは引退してから半年後のこと、配信で本当に人気者になろうとグランプリに出場した。
なんとなく片手間に応援しようと、ポイントを1日1回その子に投げた。私は匿名アイコンだったが、後輩の健気な姿に癒された。
同級生からはバカにされていた。なんとなく可哀想だと思って、(というかその同級生、めっちゃ嫌いだったな)配信をなんとなく毎日見るようになった。
次第にランキングを上げ、気づけばグランプリで2位になっていた。私は日に日にその配信を見る時間が増えていた。
グランプリ最終日もその子は2位だった。しかし最後の1時間、その子の友達、ファン、たくさんの人がポイントを見たことも無い勢いで投げていた。
グランプリ終了5分前、その子は1位通過した。
グランプリ終了、その子は1位通過した。
すごいものを見た。
同級生からはバカにされていたが、1人のいつも優しいクラスメイトが肩を叩いて、
「(匿名アイコン)ってお前だろ?僕も実は応援しててさ、嬉しかったな!嬉しかったよな!」
と優しい声で言った。
バレてた。
その子が、後日嬉しそうにクラスに来て
「先輩ー!(優しいクラスメイト)君から聞きましたよー!応援ありがとうございます!!」と抱きついてくれた。心がぼわんとした。
自慢の後輩は東京のランウェイを歩き、雑誌に載った。
その後は知らなかった。
けれども今日、すれ違った時に友達と楽しそうに笑ってて嬉しかったなぁ。
声掛けようかなって思ったけど、それは違うよなって思ってやめた。
私の事覚えてないかもしれない。
去年高校を卒業した私は社会人。
今年高校を卒業するその子は、
今も、
今も、
夢を追って。