高野山槇尾道【和歌山】
まだ鉄道も大きな道路もなかった時代、高野山から泉南の槇尾寺(西国三十三所第六番札所)へと通じていた「高野山槇尾道」。今年のGWにはその一部、九度山から紀伊神谷までの約8㎞の道のりを、家族四人で歩いてみました。
まずは九度山町役場の脇から山の道へと入り、龍王峡の水の流れを眺めつつ赤い鉄橋を間近に見て、初夏の緑を満喫。
いつもは南海高野線の車窓から眺めているだけの風景の中を、自分の足でゆっくり歩くのはとても気持ちの良いものでした。山肌には水が滴り、野太いカエルの合唱が聞こえてきた場所も。大きな柿の古木からは無数の若葉が空へと広がり、あたりの大気までが輝いて見えました。
ところが……
高野下駅の集落を過ぎてからは本格的な山道となり、薄暗く茂る木々の中、延々と続く心臓破りの上り坂。
苅萱堂(かるかやどう)跡から先は道そのものの存在が怪しくなり、斜面脇にある靴幅二つ分の狭小な道を滑り落ちないよう、
「集中!ここからは集中して歩くよ!」
と、部活動さながらの声かけをしつつ、じりじり進んでゆくという……。
私たちは軽いハイキングのつもりでやって来たので、きちんとした装備も持っておらず、何事もなく歩き通せたのは奇跡のような状況でした。
途中、人の手が入りづらい所にお地蔵様が二体おられ、せめてもと四人でお大師さまのご真言をお唱えしたのですが、そのお守りをいただけたのかもしれません。
見慣れた紀伊神谷駅に到着した時にはそれまでの緊張が解けて、心の底からほっとしました。
後でGoogleマップで確認してみると……高野下駅の少し先からは道の表示がなく……。
「道なき道を歩いたんだね……」
家族皆、遠い目になってしまいました……。
でも古い時代、「高野山槇尾道」はお大師様を始め、きっと多くの人たちが歩いたであろう信仰の道。途中、町石道のように高野山までの距離を表す石標もあり(近年作られたような新しいものです)、道としての整備もされているように思いました。
また次の機会には今回の続き、紀伊神谷から女人堂までの道を歩いてみたいと、懲りもせず考えている私たち家族です。
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