通勤途中に恋をした。

いつも通勤途中にすれ違う。
どのくらい経ったのかは分からないけれど彼の存在に気がついたのはもう随分前。

最初は気になる程度。
きっと年上なんだろうなぁ位。

通勤で行きも帰りもすれ違うことを知ったその日から、私は毎朝、同じ時間に家を出て彼とすれ違うことを期待する。

遠くから彼が見えてきたその時から意識してしまってなんだか緊張する私。近づいてくる彼。
すれ違う瞬間、気がつかれないようさりげなく彼を見る。周りの人にも気がつかれたくない。すれ違ったあと振り返りたい気持ちも我慢する。だってこんな気持ち、誰にも気がつかれたくない。絶対に。

そう。
私は彼に恋をした。

いつしか彼は私の癒しになっていた。
誰かの言葉が刺さり胸が痛い日も、バカなことしちゃったなと落ち込んだ日も彼とすれ違うだけで少しのあいだ、痛みを忘れることができたしなんなら元気になれた。

他の人でもいいかなと思ったこともある。だけどやっぱり何かが違う。何が違うかは分からないけれど最終的に心を許せるのは彼しかいなかった。
彼の前では悲しさや苦しさを忘れて、誰にも見せたことのない顔をしている自分にも気がついた。

3月に入り春の訪れとともに彼は日に日に輝きを増していくようだった。彼をこんなに生き生きさせるものはなんだろう。持っている命を精一杯輝かせるかのように生きている彼に思わずみとれてしまう日が続いた。

何年も持ち続けてきた思いを抑えることができなくなってきた。眼すらあったこともないし、その前に恥ずかしすぎてあわせようとしたこともないし!
きっと私のことなんて知らないと思う。
そもそも、彼女がいるのか結婚しているのかも分からない。

だけどもう、勇気をもって話かけてもいいのではないだろうか。せめて挨拶だけでも。後のことはそれから考えればいい。

それでもし「変な人だな。」と思われたら仕方ない。しばらくは立ち直れないかもしれないけれど。もう見てるだけではいられない。限界。勇気をだして話しかけよう。

今日の朝、勇気を出して彼に近づいた。一歩二歩。いつも遠くから見ていた彼。少し驚いたようにこちらを見た。話しかけようとした。その瞬間、風が吹いて彼の綺麗なピンクの髪が揺れた。

貴方のこと、毎日見てます。
そしてこれからもずっと。

私の思いを優しく受け止めてくれた彼は
写真を撮っていいよと言ってくれました。

長い間、恋をしていた彼。
強くて頼りがいがあって優しくて私を癒してくれる。
そんな貴方に恋をしました。

私が恋した通勤途中にある桜。

思わずみとれてしまう桜は
毎日私を癒してくれる。

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