チャンピオンベルト
朝から腰に違和感があって
時間がたつにつれ
体を曲げるだけでつらくなってきた
同僚にどんな風に痛いですかと聞かれ
こっちに傾くと痛くなくて
こっちに傾けるとイタタタッてなる感じ
ほら、こっちがイタタタッ
うーん
でも僕お医者さんじゃないから
症状聞いても分からないんですよね
なんですか聞いておいて
なんてやっていると
もう一人の同僚が冷静に
「痛みのある方向へ動かない方がいいですよ」と
教えてくれ
なるべく痛い方へは動かないよう過ごした
数日すれば治るかなと思っていたけれど
帰りの電車に乗り、揺れた瞬間
腰に走った痛みが強烈で
それはまるで不良の喧嘩で
腰にパンチをくらっているようで
電車が揺れるたびに
思わず「ウッ」とか「クッ」と声が漏れる
あまりに強い腰パンチに耐えきれず
近くの整骨院へ飛び込んだ
初めて会ったのに
電車の揺れに殺されるかと思ったと
涙ながらの訴えも
やさしく聞いてくれる先生
こっちに傾くと痛くなくて
こっちに傾けるとイタタタッてなるのも
うんうんって聞いてくれた
先生やさしい
なんだか少し痛みがひいてきた気がする
もはや治る気さえしてくる
結果、軽度のぎっくり腰!
そういえば昔、父が模様替えの最中
ぎっくり腰になった
どうやら大きなものをひとりで
移動させているときにグキッとやったらしい
長椅子に横たわったまま
1ミリも動けなくなり
掃除に使っていたであろうハタキを
指示棒のように持ち
「これはあっち、あれはこっち」と
指示されるがまま
母と私は父の出来なくなった
物の移動やら掃除の続きをした
なのでぎっくり腰と聞くと
あの時、痛くて辛いはずの父の顔
と同時に何故か少し嬉しそうに
ハタキを持っていた父を思い出す
今朝、同僚がコルセットを持ってきくれた
服の上から装着するも
「チャンピオンベルトじゃないんですから」と笑われた
逆につけていたらしい
なんでも昔バスケをやってた息子さんが
腰を痛めることも多く使っていたもので
どこぞの選手もつけているというかっこいいやつ
「ウエストが細くなった気がする」と
違う方面でも喜びの感じられるコルセットで
腰の復活とキュッとしたウエストを
一気に手に入れた気がして
なんだか嬉しい
そう考えると腰を痛めながらも
ハタキを持って嬉しそうにしていた
父の気持ちも少しわかる気がした
良くなるまでと貸してくれた
チャンピオンベルトと
治してくれるであろう
整体の先生との出会い
やさしい同僚や家族に囲まれて
なんだか元気になった
腰パンチに関係ないけれど
ひとつあったもやもやも
腰パンチと同時に
そんなことどうでもよくなって
どこかへ吹き飛んだ
結果、今は腰パンチをくらったら
心が元気になって強くなって
チャンピオンベルトをしているような
気持ちでいます