たまにyesと答えてみよう。
夕食は鮭の蒸し焼きの予定だった。アルミホイルに玉ねぎをしいて鮭をおく。バターを乗せて蒸すこと15分。醤油をかけて食べるとめちゃめちゃ美味しい。私の好物。心はもう鮭の蒸し焼き。
仕事終わりに知り合いとエレベータで遭遇。職場の近くに可愛い八百屋があって品揃えがいいのよと教えてくれた。
そうなんですねー。帰りに寄ってみますね。そう答えた手前もあり行くことに。八百屋は若い店主がいて新鮮な野菜が並んでいた。わぉ。私好みのお店。ブロッコリーとマッシュルームも安いし、何より美味しそう。
今日の夕飯は予定変更。マッシュルームのアヒージョにしよう。
そしてふと思いついた。これから起こることをyesと答えるゲームをしよう。ひとり脳内ゲーム。教えてもらった八百屋が話の通り良かったので素直に「yes」と言うことでもっと楽しいことが起こるかもしれないと思ったのだ。
夕飯のメニューが鮭の蒸し焼きからアヒージョへ変わったように、そこからまた変化していく波に乗るのも楽しそう。まぁ、職場から家に帰る間のことだから、何も起こるわけないからゲームにもならないだろうけれど、ひとり脳内暇潰しゲームだ。
2駅ほど歩いて、家まで後3分ってときにLINEがきた。ムラセさんだ。「市ヶ谷にグラスオニオンの姉妹店があるからおいでよ。」グラスオニオンと言うのは私の大好きなBarで、昨日もそこで音楽を聴きながら飲んでいた。そしてムラセさんにもそこで会っている。
全部yesで受けていくゲームなんてどこへやらの私。
いやいやいや。もう、家の前で。是非、次回楽しみにしています!と丁重にお断りしたのだけど今日のムラセさんは珍しく引き下がらない。
「いつも行ってるBarの姉妹店だよ。きなよー。」
そして思い出した。yesゲームを。ルールからすると、これは行くしかないやつだ。よし、乗った。yes!では、行きます!
家を目の前に、ブロッコリーとマッシュルームを入れた買い物袋を下げたまま駅へ引き返し、市ヶ谷のBarへ。ムラセさんはマスターと談笑していた。
「姉妹店っていうのはウソなんだけどさ。グラスオニオンを慕っている方なんだよ。」とマスターを紹介してくれた。名前は樋口さん。
店内はお洒落で落ち着ける空間になっていた。漫画や小説もたくさん飾られているしお酒の種類もたくさん用意されていた。魅力的。
ビールを2杯ほど飲んだ後、この店に何か楽器はあるんですか?と聞くと「ギター。カホン。」そしてマスターが嬉しそうに「ハナブエ」と言った。
ハナブエ?ハナブエってなんだ?
これこれ。と嬉しそうに樋口さんが出してきたのは、どう見てもドアストッパーか箸置き。
写真はこちら。あ。持ち方が逆さま(汗
樋口さんは、おもむろにそれを鼻と口にあててヒューヒューと吹き始めた。鼻と口にあてて鼻息で吹くのだ。音階は口の開き具合で変えるそう。オカリナみたいな音なんだけれど、どう見てもその姿がいけてない。横から見ると、どんな美人もイケメンも、めちゃめちゃ不細工になるやつで。
吹いてみて。と言われ、不細工顔になりたくないので小さく抵抗はしたものの「やりません。」と言う勇気も無く吹いてみると、ピーピーと小さく音が鳴った。鼻のつまった時の寝息みたいなやつ。樋口さんは嬉しそうに「鳴ったね、鳴ったね!」と言ってくれたけれど何故かあまり嬉しくないのは気のせいだろうか。鼻息ピーピーから進歩しなくなったことと、吹いてる間ものすごく不細工な顔しているんだろうなと思うと耐えられなくなって交代することにした。
続いてムラセさんだ。最初は小さくピーピーしていたのに、少しするとコンドルは飛んで行くをピーピーやりだした。お洒落なBarのカウンターで、私はムラセさんの鼻のつまった寝息のようなコンドルは飛んで行くを聴いていた。
鼻笛を嬉しそうに吹く樋口さんもムラセさんもそして私も不細工顔でヒューヒュー吹いてはお互いに「横顔が不細工だよ。」と笑いあった。
※注意
鼻笛を吹くと不細工になるというのは、私たちが馴れていないせいでもあり、全員がそうなるとは限らないので悪しからず。
結果。終電近くまで飲んでいたのでブロッコリーは茹でて冷凍。マッシュルームは夜中にアヒージョをして食べたのだけれど。yesと答えることで世界が広がり楽しいことが起きることを知った。今日、私が出会ったのは鼻笛の世界だ。きっとNoと答えていたら鼻笛があることも知らないまま生きていたと思う。いや、これから鼻笛をすることは無いと思うけれど。ようは知らない世界を知れたことが嬉しいのだ。
全部yesと答えることでスゴいところへ着地することと、そんな日がたまにあるとありふれた日常がぐっと楽しくなることが証明された。
だからたまにはyesと答えてみよう。
■音楽と仲間と美味しいお酒。そして鼻笛。