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わたしの本棚 3冊目

梅雨がやってきました
わたしは紫陽花が好きなので
毎梅雨の鬱屈さを
ほぼ紫陽花のおかげで
乗り越えています

本日も
なにがなんでも
共有したいと思う本を読んだため
noteを書くに至りました

わたしの本棚 3冊目はこの本です

高柳聡子『埃だらけのすももを売ればよい ロシア銀の時代の女性詩人たち』(書肆侃侃房、2024年)

表紙の手ざわりがとってもいい

この本は
1890年代から1920年代に
現在のロシアやウクライナを拠点として
詩作をしていた15名の女性たちについて
著者である高柳さんが
彼女たちの詩と生涯について
過去の歴史的背景や現在の情勢を絡めながら
丁寧に解説されている本です

詩の可能性について
書物の可能性について
そして人の可能性について
新たな捉え方を模索していくための手掛かりが
至るところに散りばめられている本です

人生の先輩方と〈森〉の中を
散策している心地でした

ひとりずつ様相の違う〈森〉に
連れて行ってもらいました

まえがき(6頁〜10頁)を読むと
著者である高柳さんに降り注いだ
偶然の重なりによって
この本が生まれたことがわかります
詩だけでなく彼女たちの生き方に寄り添い
どんな思いからその詩をつくったのかを
なんとか読み解こうと
心を砕いている高柳さんの文章を
読んでいけば読んでいくほど
「そうか、彼女たちは高柳さんに見つけてもらいたかったから、偶然は重なったんだ」と
ある種の必然性を感じた読者は
わたしだけではないはずです

アダーリスさん
モラフスカヤさん
アフマートワさん
ギッピウスさん
チェルビナさん
シカプスカヤさん
コプィローワさん
グローさん
ブロムレイさん
テフィさん
アデライーダさん
ガリーナさん
リジヤさん
パルノークさん
ツヴェターエワさん

生きていた時代も国もちがう彼女たちの
本来ならばことばにできないほどの
痛みや苦しみや歓びを
〈詩〉という方法に委ねてくれたことで
ほんの僅かでも知ることができたこと
降り注がれた偶然の重なりに
感謝します

さいごに
この本を読むときに聴いていた
2枚のアルバムをご紹介して終わります
読書のおともにおすすめです

・『Rachmaninov Songs』(Soprano:Julia Sitkovetsky,Piano:Roger Vingnoles)

この本の12人目に登場するガリーナさんの詩をラフマニノフが歌曲にしていて、このアルバムの16〜18曲目で聴くことができます

16曲目 「ここは素敵」Zdes' khorosho Op.21-7
17曲目 「なんという苦しさ」Kak mne bol'no Op.21-12
18曲目「私の窓辺に」U moego okna Op.26-10


・『歌曲全集〜チェリストと作曲家の邂逅 伊藤悠貴(チェロ)/雁部一浩(ピアノ)』(『Complete Lieder Album』Yuki Ito/Kazuhiro Gambe)

このアルバムは日本の詩人(室生犀星、石川啄木、八木重吉ら)からインスピレーションを受けて作曲されています
詩から広がる重厚な音の世界を味わえます



梅雨とはいいつつ
もう夏がきています
お身体ご自愛なさってください

まっすぐ立つ白い紫陽花
(2024年6月 水戸・保和苑にて)

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