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知らないクロノスタシス

Q.クロノスタシスって知ってる?

 ☑️ 知ってる
◻️やや知ってる
◻️どちらでもない
◻️あまり知らない
◻️知らない

 実際には短い瞬間の映像が、長く続いているように感じられる錯覚現象のこと。日本人の80%がこのワードをきのこ帝国から教えてもらったと言っても過言ではない(残り20%はBUMP OF CHICKEN)。それほど誰もが知っているメジャーな"現象"TOP3のひとつだ。ちなみに残り2つはシミュラクラ現象とドーナツ化現象。

 本来のクロノスタシスは、このように視覚による現象のことを指すが、これは視覚以外の感覚にもクロノスタシス的現象は発生すると思う。

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 たとえば、仕事での通話。

 得意先や顧客と一通り会話を終えたら通話を切るわけだが、オーソドックスなサラリーマンであれば、ここで不躾に通話をブツ切りするようなこと(通称"ガチャ切り")はしないであろう。どこで身に付けたのかはわからないが、通話が終わったあとのしばしの沈黙の先に、私たちはいい"塩梅"を探す。そのいい"塩梅"になったところでようやく通話終了ボタンを押す。このいい塩梅というのがまた難しい。

 気の抜けたキャッチボールが完全に止まって、通話が完全に切れるまでの実時間は、多分2秒もない。傍から見れば、ただ車が1台目の前を通り過ぎただけのような、そんな刹那。

 通話が切れて静寂が訪れたとき、「あれ…?こんなに短かったっけ…」と不安に駆られる。意図的に作り出した静寂の"間"が本当にいい塩梅になっていたのか、つい2秒前に過ぎ去った時の流れさえ確実に覚えていない。実際には3秒から4秒ほど、時間の熟成を待ったはずなのに、いざ出来上がってしまえばその程よい塩梅のことなんて忘れてしまう。

 人間の時間感覚なんて、所詮はそんな曖昧なもんなんだろう。長いようで短い、祭りのあとのような虚無感。当事者には決して気づくことのできない、ある種のトランス感覚。

 クロノスタシスって知ってる?知ってる、だってもう、気づけばこんな歳になっちゃってんだから。何故なのかは知らない。

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