偽る。
人からどう見られるかを気にして、ひどく格好を付けたがった。役割に沿った見た目を、言動をするべきだと思って相当の無理もした。そうあるべきだと思う感覚が強すぎて、自分を見失っても、それを続けた。
しかし、何年も続けるうち、出来上がった関係は虚構でしかなかった。肚の中を曝け出せる相手がいないと気づく。
今更過ぎた。気づいた時には遅かった。
新しく関係を構築するのは得意じゃない。取り繕って、表面だけの付き合いをする事は得意な癖に。
もっと私のことを知って欲しいのに、知られたら幻滅されるのではという恐怖、結局、格好つけて親しくなり切れない。
そんな自分を見失ってしまった時期を何年過ごしたろう。好きなこと、好きなもの、いつまでも見つからない、思い出せもしない。自分が綺麗さっぱりなくなってしまった。
ようやく自分へ意識を向ける時間が出来ても、しばらくは茫然とするだけ。二年ほど経ってからだろうか、なんとなく好きなものを思い出しかけては忘れる事を繰り返しながら、少しだけ思い出せるようになった。
ああ、こんなものが好きだったのか、そうだった。と気づいてからも、役割を演じていた私は、表立って「わたしはこれがすき」と言えなかった。密かな恋心みたいに、こっそり胸の中に抱くだけ。
結局、自らを取り戻すのに10年近くかかった。自分を見つけたら、それを好いてくれる友人もほどなくして出来た。
今、こうやって好きなものを好きと言えることはなんと幸せなのか、と思う。
好きなものを好きと、好きな人に好き、と。
態度にも、声にも出して、これからを過ごして行こうじゃないか。
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古い下書きに加筆してupします。
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