親とは難儀なものだなあと改めて思う。 子が問題を起こしたり、いじめたりいじめられたり、不登校になったり、話をしてくれなくなったり、すべて自らの育て方が間違っていたのでは思い始める。 そんな訳がないだろう、子は個だ。 自分自身では無い。 所謂、毒親のようなものでなければ、すべて自分が原因なんて彼らに対してあまりに失礼で傲慢だよ。 それでも理由を探さねば、痛みを和らげねば、解決の糸口をどこかに求める。分身のような子の痛みは自分の痛みでしかない。 この辛さは子が痛いからなのか、己
この歳にして初めて、妬ましいという感情を自分の中に感じ、驚きと虚しさ、何よりも惨めさを感じた。 良くも悪くも人に関心がないのか、誰かと比べてしか生じないそれを感じることなく生きてきた。 ーーー、今更。 嗚呼、情けないな。 やっぱりどうにも惨めだ。 うまくこれを言葉にできなくて胸が詰まったような感覚でいたせいで、当てつけのような、責任を相手に持たせるような言葉を零してしまったことをひどく後悔している。 そんなつもりじゃなかったのに、と。 自分の選択を誰かのせいにする
懐かしいなと振り返る事が出来るのは、それだけの期間を積み重ねて来たということ。 楽しかった事ばかりじゃなくて、辛かった事や苦しかった事も互いに共有をしてきて、一緒に泣いたり苦しんだりしてきた。 綺麗な部分だけじゃなく、人に見せないように努めてきたものを見せることは恐怖だ。どんな反応をされるだろうか、幻滅されるだろうか、引いてしまわないだろうか。そして、それをさらけ出した自分自身の惨めさに耐えられるだろうか。 努力してこなかった、その結果だと自己嫌悪にも陥るが今更だ。今を
しばらく離れていたので、お題を設定して書くことをリハビリしようと思います。暫くお付き合いください。 ----- 日常を大切に過ごすために酷使された手指は、季節柄ひどく乾燥していた。ゆっくりと両手で包み込めば、手の甲は粉を吹いて傷み、青白い指先は冷えていて幾つかのささくれも主張している。 つい放っておけなくて、甘いお菓子みたいな香りのボディクリームを手に取った。手のひらで少し温めてから自分の手指に伸ばして広げ、彼の手をゆっくりと包む。全体に馴染ませ、がさがさした手の甲にゆ
身を焦がすみたいな、堪えられず泣きたくなるくらい、走り出したくなるような、そんな内側から溢れ出るような熱量を、自分からも相手からも感じなくなった。 互いに安心できる今の関係は好ましいもののはずだ。じわりと気持ちが湧き出した時でも、必死に伝えなくても大丈夫。LINEを連投することも減った。 いっそ互いがいなくても生きていけるが、お互いがいたほうが豊かだと感じられることは幸せなことで「私には絶対にあなたがいてくれなきゃ」と、思うことはなくなった。 そのスタンスが健全と思って
本日はふたりで川越観光へ。 先に着いた私はのろのろと喫煙所へ向かう。陸の孤島みたいなロータリーに囲まれた場所で、彼を待ちながら煙草を二本吸った。 生憎の天気で、空は真っ白でぽつりぽつりと雨粒が落ちてくる。傘を取り出すか悩みながら、彼が着いたという連絡を見て改札へ向かった。 彼と合流して、再びの喫煙所。 雨が止むといいのだけれどと話すと「どうせ晴れるだろう」と笑う晴れ男の彼。 浴衣をレンタル出来るお店へ向かう道中も降る雨。止んでくれるだろうか。 お店へ着いたら、受付を済ませ
疲れているのだ。ただ、それだけだ。 彼にひとこと寂しいと言えないのも、 こっちを見て欲しい、私の話を聞いて欲しいと言えないのも。 数日、殻に篭っていたら、別に何も言わなくてもいいかと思うくらいにはなった。 彼が自分の時間を楽しんでいることが大事だ。自分が寂しかろうが黙っていればいい。彼が楽しそうなら、わざわざ私の話をしなくてもいい。 彼は自分で自分を癒す方法を持っている。それに水を差すような事はしたくない。 自分の時間を楽しめる、自らを癒せる、家族との時間を大事にす
彼と過ごす時間を重ねて、私自身の色々なものが変わったと思う。 精神的なもので言えば、大事にされているという実感から自尊心が育った。卑下される事に慣れきっていたけれど、それを否定出来るようになった。まだきっと下手だけれど、自分を大事にする事が出来る瞬間が増えた。 彼に私がしたい、してあげたいと思った事をすれば、それを受け入れてくれたり喜んでくれる。そんな彼にとっては当たり前の事も、私にとっては新鮮だった。これをしたら嫌われるのではないか。気持ちが重たいのではないか。彼に好かれ
好きすぎて別れたいと思ったのは初めてだ。 彼のことよりも自分の気持ちを優先したくなって、彼の望まない言葉を浴びせて困らせて、最終的には傷つけてしまいそうで。 付き合う前、自制のために刺した釘を自ら引き抜くなんて格好悪いことするくらいなら、ちゃんとけじめをつけなきゃ、って思う。 思うのに、な。 彼には、きちんと隣に座っている人。自分がそこには座ることがないのは、当たり前のことだ。それでいい。 いま彼が大事にしているものに比べたら、私なんてお遊びでしかないし、むしろお遊
何度も何度も「可愛い」と声に出されて、恥ずかしくて顔を逸らす。こんなに丁寧に、優しく触れられたことがなくて、気持ちよさと心地良さで頭の中が混乱する。 下着を脱がされてからは、これまでずっと「やだ」「だめ」しか言えなかったのに「もっと、もっとして」とおねだりしてしまう。彼が様子を見ながら触れてくれるのが気持ち良いのに焦れったくて、外側や入り口だけじゃ足りなくなる。「指、中に挿れてほしい」なんて言葉、思い返せばひどく恥ずかしくなる。 挿れられた彼の指は、私の中の気持ち良い場所
こんな事を考えていたが、本心はそうじゃない。自分がそうやって堕ちたかっただけだ。堕とされたかったのだ。 己がされたいと思っている事を、相手に自己投影して満足しようとした。もちろん独占もしたいが、私は独占されたいのだ。分かりやすく所有される事が好きだ。モノ扱いされるのも、正直嫌いじゃない。むしろして欲しい。「俺の」「俺だけの」って言われたい。それで所有欲を満たしてくれたらいい。 関係を維持するなら、関係はフェアであれと思う。しかし、自分でフェアじゃない場所に引きずり込んでお
人からどう見られるかを気にして、ひどく格好を付けたがった。役割に沿った見た目を、言動をするべきだと思って相当の無理もした。そうあるべきだと思う感覚が強すぎて、自分を見失っても、それを続けた。 しかし、何年も続けるうち、出来上がった関係は虚構でしかなかった。肚の中を曝け出せる相手がいないと気づく。 今更過ぎた。気づいた時には遅かった。 新しく関係を構築するのは得意じゃない。取り繕って、表面だけの付き合いをする事は得意な癖に。 もっと私のことを知って欲しいのに、知られたら
「可愛い」と何度も言われて照れくさくて、顔を背ける。きっと、芯が疼いてることにも気づかれているのだろう。軽いタッチで撫でられているだけなのに、ひたすら甘い声を漏らす自分が恥ずかしくて仕方ない。必死に「だめ」なんて言うけれど、こんなの「もっと」の間違いだ。左右の耳にキスされながら「右の方が弱いね?」なんて観察されて、冷静を保てないのは自分だけだと気づかされる。 さっきまで二人で眺めていたテレビは、いつの間にかバラエティー番組からニュース番組に切り替わっていた。不意にそれに気付
ここまで大事な存在になるとは思っていなかった。互いのよき理解者として仲良くして、たまに遊んで、笑っていられたらいいと思っていた。 でも真っ直ぐ愛情表現をしてくれるところとか、思考回路がそっくりなところとか、実は同じものが好きだったこととか、こんなこと他の誰もやってないだろうと思うような少し馬鹿げて惨めなことをしていたところだったりとか、こんなに一緒で共感出来たり共鳴出来る相手だったのだと知れば知るほどに愛しくなった。 私の環境が変わることで、フェアだったものが崩れてしまう
まったく可能性がないとは思っていなかったけれど、自分から誘うとは思っていなかった。 ここから歩いて一番近いホテルまで、道中コンビニに寄りつつ並んで歩く。ここまで来ても、手すら握れないのに。 「眠かったら昼寝すればいいし」「ふたりでゆっくり気兼ねなく話したいから」なんて揃って言い訳みたいな言葉を並べながら部屋へ入る。 ソファに座った時、つい奥に座ってしまい彼の左隣に座った。彼は相手に右隣にいて欲しいと話していたから移動しようかと話すも「大丈夫」と言われ、そのまま左隣のまま
食事しようと決めていた店に行くと、既に盛況。予約している人たちから順に呼ばれて店内に吸い込まれて行く。予約はしていなかったから、彼が待ち順のボードに名前を書いてくれた。暫し、二人で並んで呼ばれるまで待つことにする。 待っている間になにを話したかは、あまり細かく覚えていない。とはいえ退屈した記憶はなくて、和やかに待ち時間を過ごした。 既に賑やかな店内へ案内され、四人掛けテーブルに着く。向かい合わせとも隣ともつかない位置、彼の顔がよく見える。 ふと周りに目をやると若い従業員