いまいる場所から 2
12月は午後5時にもなると日が暮れかけて外は急に暗くなりはじめる。今日は冬日だ。寒い。
夜になくなりそうなら入れてきてね。
妻にそう言われてストーブの灯油タンクを確かめる。軽い。
渋々、ストーブから灯油タンクを右手で持ち上げてそのままリビングを出る。玄関でサンダルに履き替えて外へ出る。庭先から車庫へ。灯油は車庫の隅に保管されている。外は寒い。この冬一番の寒気らしい。
車庫の扉を開けてすぐ右手の柱の中ほどにある電灯のスイッチを入れる。天井の裸電球が灯る。入口すぐのところにブルーの灯油タンクが3つ並んでいる。入口に一番近いブルーの灯油タンクの横にいま持ってきたストーブの灯油タンクを置く。
給油用の軍手を右手だけはめて両方のタンクの蓋を開ける。電動式のポンプを両方のタンクのそれぞれの口に差し込みスイッチを入れる。電動式のポンプは静かに唸りながら給油をはじめる。
寒さに震えながら満タンになるのを待つ。しばらくしてポンプの唸り声は聞こえなくなる。自動停止。満タンの合図だ。
両方のタンクからポンプを抜いて元あった場所に戻す。タンクの蓋を確かめながら強めに閉める。右手から軍手をはずし元あった場所に置く。
満タンになった灯油タンクを右手で持ち上げもと来たところを逆方向に戻る。暖房のよく効いたリビングに入り妻の気配を横目で感じながらストーブに灯油タンクを収める。
スイッチを入れる。カチンという着火音の後にゴォーと唸る音がして灯油が燃えはじめる。通常運転に戻る。
>まるネコ堂言葉の表出2020冬合宿「いまいる場所から」より 658文字
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