いまいる場所から 1
家は東西に走る道に面している。道幅は車1台通れるぐらい。対向はできない。昔の旧街道だ。
東西に走る道に交差してまっすぐ南へ延びる一本道がある。ちょうど家を出たところで東西に走る道と南へ延びる一本道が交差している。家の前がT字路の突き当たりだ。
まっすぐ南へ延びる一本道は行き止まりでその先には東西に線路が走っている。線路を渡る踏切はなくその手前で道は行き止まりとなる。
南へ延びる一本道の東側には四軒の家が並んで建っている。いわばこの一本道はその四軒の家への進入路としてつけられたものだ。道の西側に家はなく田園が広がっている。田園の先に見えるのは一本道の行き止まりにあった線路だ。西に向かって走っている。
一本道の東側に並ぶ家の、奥から二軒目の家が11月末頃解体され撤去された。いまは更地になっている。
解体はある日突然はじまった。その家が解体されることは解体業者の重機が家の壁をぶち破る音で気づいた。それは日頃めったに聞かない大きな音だった。
何ごとかとびっくりして家の塀越しに大きな音のする方を覗いたら解体用の重機が大きなアームを空高く突き上げてから二階建ての家の壁を目掛けてその先端を突き刺していた。とても器用に何度も何度もアームを振り下ろしているところが見えた。
重機のまわりには3台のトラックがアームに摘ままれ出てくる廃棄物を荷台を空けて待ち構えていた。
解体される家とは町内会が違った。家の前を東西に走る道が境になっていた。そんなこともあって日頃から近所付き合いはなかった。もっともその家は数年前から空き家になっているらしかった。
解体作業はちょうど三日で終わった。すっかりきれいに更地になった土地は三日前まであった建物が突然なくなったことでそこに現れたもので。いつもとはちがう景色にはじめは驚いたがそれもそのうち慣れてきていまは当たり前になりはじめている。
>まるネコ堂言葉の表出2020冬合宿「いまいる場所から」より 813文字
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