二重の風景
写真を撮る。
街のスナップだったり、公園だったり、旅先の風景だったりする。
シャッターを切る私の脳裏に、もうひとつ別の風景が横切る。
そのことには写真を撮り始めて間もなく気が付いた。
新宿の地下道に座り込みカメラを握りしめていたとき、
立ち上がり雑踏に身を任せていたとき、
私は勝浦の海を見ていた。
それはほとんどの場合が記憶の風景だ。
私にとってのリアル、ドキュメントとは、
記憶や、心身に滓のように浮き沈みする経験の断片も含んだもので、
写真に写った風景にはそれらがすべて含まれている。
そんなことを再認識しながら、次の作品について考えている。