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I'm a factory man。

建築学科にいながらも建築家、デザイナーについてあんま知らない。

この展示はそんな焦りと羞恥心から半強制的に見た展示だった。作品とか名前は知っているけど一致しないし、語れるほど情報も持っていない。ましてはどの建築家、デザイナーが好き?って聞かれてあんまりすぐ答えられなかった。何も知らないんだなと無知の知を自覚し勉強という観点から展示を見に行ったが、どっぷりハマってしまって、図録まで予約してしまったほどだ。何がよくてそんなハマったかをしっかり言語化できるように自分の思考をまとめながら綴っていく。また、職業柄では致命傷なのでこういうnoteきっかけで派生していろんな建築家、デザイナーについてまとめていけたらいいなと思う。

プルーヴェは父が画家、彫刻家であり母がピアニストという芸術関係に囲まれた環境で生まれた。時代はアール・ヌーヴォーからコルビュジェやシャルロットペリアンなどが活躍するモダニズムへと変わる時期であった。プロダクトに合理性や生産性が求められている時代で工業生産の一任者である。

自身でも建築家でも技術者でもない、工人であると言っているように建築や椅子を構造から素材から考えていた。1番有名な椅子のスタンダードをはじめとして6×6のような簡易型のプレファブ工法の建築までを手がけている。

個人的な感想としていくつか書いていく。

プルーヴェはモダニズムの中で活躍して工業性や生産性を重視していて、自身でも「I'm not an architect; I'm not an engineer- I'm a factory man. 」と言うように合理性を突き詰めた構造家と語っているが、プルーヴェの作品にはどこか装飾感があるように見える。特にスタンダードチェアの脚部に顕著に見えるように感じる。

これはきっと彫刻家の父やピアニストの母といった芸術一家で生まれ育った特徴なのだろう。装飾はしていない、構造的に理にかなっている形だって言ってるのにカッコいい形を生み出せるところにかなりの憧れを持つ。


スタンダードチェア

一見普通の椅子で、小学校、中学校とかによくあるタイプの鉄製の脚部に木の座面と背もたれ。ただ明らかに違う後ろ足のデザインがかなり特徴的だ。通常なら一本の鉄パイプを折り曲げて三角を作り構造的に安定感を持たせるところ、スタンダードチェアは一枚の鉄板から展開図をかき折り曲げて三角のボリュームをそのままつけている。三角をフレーム的に捉えるのではなく三角のフレームをソリッドとして利用し、より構造的に安定感を持たせようとしている。しかもその形が感覚的に美しい形をしている。スタイリッシュなフォルムに見えない鉄板の折り曲げの継ぎ目、ボリューム感がありながら柔らかいエッジのカーブ。あと色使いも落ち着いたトーンで空間に馴染みやすい。

あと一番いいと思ったのは、プルーヴェ自身が椅子の前足を浮かせてゆらゆら動かすことが好きで後ろ足を強くしたというエピソード。わかるなーと思いながらそれが率直に形に表れているところが面白い。そんな作者のバックグラウンドが見えるとより好きになれる。

何か一つの操作で、構造的にもデザイン的にも、材料などの環境的な状況において全て合理的に解決できる。少ない操作で劇的に変わるという魅力をさらに感じた。

個人的に好きなのは2枚目の方。

脚部と座面との交点に円のボルトが埋め込まれているようにできている。おそらく何か理由とかがあってつけざるを得ない状況になっていたのだろうか。仕方なく出てきてしまう不都合なことをこうも楽しんで遊び心がある大胆さが特にかっこいいなと感じた。画像だと脚部が塗装されていなくて素材感があるのとちょっと錆があるのがかっこいい。いつか欲しい椅子です、、

家具もいいけど建築も。

「メトロポール」住宅

特に印象に残っているのは8x8の簡易型住宅。第二次世界大戦後のフランスの復興のため政府から依頼された簡易型の住宅の作品。戦後のため材料に限りがある中で依頼されたもの。4、5人で建築できるくらい簡易型の家。

メトロポール住宅といって解体・移設が可能な住宅。ポルティークと呼ばれう構造体が特徴的である。

そもそも日本の戦後復興はどのような依頼でどのように作られていったのだろうか。復興が早かったのは良いこととして、何か味気ない建築が多くつまらない印象を抱くが、、、。ただただ合理性を求めていったのだろうか。応急処置的にとりあえず建てていったのだろうか。

それに比べて、プルーヴェとジャンヌレの8x8の簡易型住宅はかっこいいと思えた。簡易的と言いながら壁面や冊子、色使いに遊び心を感じる。極限の状態でも何か楽しんで作っている様子が浮かび上がってくる。6x6に関しては確か楽しみすぎちゃって予算を大幅に超えてやり直しを食らったってキャプションに書いてあった気がする。そんなお茶目なところも素晴らしいなって思う。

内部も特徴的で家の内部にはほとんど柱がなく、ポルティーくと呼ばれる構造体があるのみ。どこか家具の造作を思わせるような造形をしている。家具も建築も作り方は同じだという確固たる意志を感じた。

この時代は戦後でモノ不足に悩まされ限られた材料で作っていくが、現代にも通づるところはあると思った。サステナブルが謳われる中で持続可能なモノ作りの考え方として石のように物理的な永遠ではなく、作って壊して出てきたものをまた別のものに利用してという考え方はプルーヴェの素材の探求から得た考え方を現代でも取り入れる必要があると感じた。

当時の戦後では危機的な状況かつ取り急ぎのなかで建築家、デザイナーが介入し、合理的かつ快適なモノづくりをしていかなくてはならなかった。そんな状況下で「仮設」という作られ方で美しさと合理性を合体できることは難しいのだと感じた。

この展示の意図としては、おそらくサステナブルとか持続可能が流行していく中でより過酷な状況下にあった建築家、デザイナーたちがどのような知恵と工夫、造形力を持って社会に影響を与えていたのかというメッセージだと思った。ボリュームが多く、かなり見応えのある展示でした。

そんなことを考えながらどっぷりはまれた展示で、これきっかけでいろんなものに興味を持てた。プルーヴェ自体色々な人、有名な人と関わっているからもっと調べていこうと思う。

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