梅の名所、湯島天神で菅原道真公と語らう
日本の冬は受験シーズンです。大学のセンター試験があった翌日に学問の神様、菅原道真公を祀る湯島天神を訪れました。今年は暖冬といえど風は冷たく、春の気配を感じようと梅の名所でもあるこの場所に出かけることにしました。
鳥居をくぐると、友達と連れだって、または親と一緒の制服姿の女の子など平日にも関わらずお参りする人でにぎわっていました。梅はどこに、と心はせくけれど、いや私にはそれより先に大事な使命をはたさねばならないのでした。
本堂の前に立ってまずは軽く一礼。お賽銭を入れて、ガラガラと鈴の音を鳴らす。2礼、2拍したところで本題に入らせていただきましょうか。
(以下の会話 わ=わたし、す=菅原道真)
わ「菅原先生、うちの息子はまもなく16歳になりますが、ちいと成績が芳しくありません。今年は上向きになりますよう、何とぞなにとぞ、よろしくお願いします」
ドロローンという音と煙ともに菅原道真公の登場
す「どうもどうもー菅原です。いらっしゃーい。はいっ、お子さんのお名前と住所をどうぞ」
わ「きゃあ、菅原先生、学問の神というだけじゃなくて三大怨霊の一人だけあって登場の仕方が粋ですね!って感心してる場合じゃない。本日はどうぞよろしくお願いします。ドイツのミュンヘンに住んでる***です。本人は学校で直参できないので代理ということで母親の私が来ました」
す「ん、どれどれ、、、記録をみてみようか。あった!うわあああ、こりゃひどい。成績が、じゃなくってそもそも勉強してないじゃないの。どうしたのよ、これ」
わ「やっぱりバレましたか。め、面目ありません・・・。梅干しみたいに口を酸っぱくして言っているんですけど馬の耳に念仏、っていうか、のれんに腕押し、豆腐にくぎって感じです」
す「なんですとお。これだめよ、本人が努力しなかったら。いくらなんでも後押しできませんよ。努力してから出直してきなさい。私だって忙しいんだから、はいっ、次の方」
わ「いやいや、先生そこをなんとか。わざわざ1万2千キロも離れたドイツからやってきたんですから。親の意気込みをかってくださいよ」
す「いやムリだって。ドイツに住んでたら知ってるでしょ、西洋のことわざにあるじゃないの。『天はみずから助くる者を助くる』って」
わ「そうなんですけど、だから日本に来たんじゃないですか。日本だと『他力本願』とか『苦しいときの神頼み』って魅力的な言葉があるじゃないですか」
す「・・。(うわ、ここのウチ、親のスタンスからして間違っているよ)」
わ「もうちょっと言わせてもらえるとですね、キリスト教に菅原先生みたいな適当な担当者がみあたらないですもん。例えば児童、生徒の守護聖人にニコラウスっていう方がいらっしゃいますけど、12月6日にクルミ、みかん、チョコレートを配ってくださるのは有難いんです。けど成績の面倒はみないんですって。それにニコラウスさんは、旅人と海で働く人たちの守護聖人もやってて、ものすごーく忙しいんですよ。だからオフシーズンの一月〜二月ごろは長期休暇(ウアラウプ)に入っちゃって連絡とれないんです」
す「...。(この人、世に跋扈するというモンスターペアレントなる怪物親か?面倒くさいのが来ちゃったな。早く帰ってくれないかな)」
わ「ついでにドイツの生徒の学力についても言わせてくださいね。OECD加盟国で15歳〜16歳の学習到達度調査を比較するPISA、食べるピザじゃありませんよ、っていうテストがあるんですけど、2022年の調査だとコロナがあったにも関わらず日本は持ち直して、ドイツはといえば、あらら。。のがた落ち。いつもドイツではピザショックー、とかいって大騒ぎだけはするんですけど結局なーんにも変わらない。うちの子供が努力しないのは一番悪いんですけど、やっぱドイツの教育システムもおかしいのかもって。あとね、こういっちゃなんですけど、日本の学問の神様もよそに比べて国際的なレベルが相当高いんじゃないですか?」
す「...。(変な親だけど、最後の部分は気に入った!)」
す「お待ちなさい、神や聖人たるものに優劣なし!ですよ。。ま、わたしが日々研鑽しているからこそこうやって全国展開もできてるんですけどね。だてに学問の神様という看板はかかげておりません。
よし、じゃ***くんは例外的に本人の頑張りいかんでという条件付きでウエイティングリストにいれておきましょう。卒業までまだ時間あるでしょ。次はご本人ともお話ししましょう」
わ「わーい、ありがとうございます。わざわざ来た甲斐がありました」
す「いや、あんたは梅目当てで来たんでしょうが。バレバレなんだから。あとね、難しい案件だからお賽銭はずんでくれないとダメよ。でないと怨霊になって
ドイツまで追っかけるからね」
わ「了解です。菅原先生ありがとうございました」(2礼)
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ではお参りがすんだところで梅観賞といきましょう。
菅原道真がこよなく愛し、歌にも詠んだことで神紋にもなっている梅の花。
湯島天神に植えられている梅の木は約300本で8割が白梅だそう。
東京は、昨年より12日はやい1月9日に開花日宣言が出されたものの、湯島天神では大方のつぼみが開くのはもう少しといったところ。寒紅梅が1、2輪ちらほらっと開いていてあとは兆しが見えているくらい。それでも紅白がそろい踏みしたら盛の頃はさぞやきれいだろうなと想像できました。
振り返れば昨年は私も受験生の一人でしたー。だから受験生にのしかかるプレッシャーという苦しみはいまなお新しい。若いころに比べたら記憶力も落ちて、何かを覚えようとしても頭の中がコンクリートでできているんじゃないかと思うくらい跳ね返されて、変な不安がもたげてくる。。。なんてことの繰り返しでした。
でもそんな時であってさえも何よりも感じていたのは学ぶ楽しさや喜びでした。試験というものが前に立ちはだかる状況で必要な知識を得るべくひたすらがむしゃらにに挑んだ日々は、本当に充実した時間だったのです。
梅の花が見ごろを迎えるのは寒さが一番厳しくなる2月に入ってから。湯島天神で梅まつりが開かれているころは受験生にとってまさに正念場の時期です。
そして花の季節が梅から桜へと移り、「サクラ咲く」の報告が届くその日まで彼らに心からのエールを送ります。
フレーフレー、受験生!
そして受験生ではないけれど、うちの息子よ、頼むからもうちょっと勉強しろよ!
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