しゃもじの代わりにカメラ片手に突撃!隣の晩ご飯、じゃなくってお庭(時々ベランダ)を拝見!!
第1回エッグ城
誰に頼まれたわけでも招いてもらったわけでもなくって勝手にお邪魔したのはバイエルン東部、チェコ国境をまたぐ国立公園バイエリッシャーワルトの玄関口デッゲンドルフ近くにあるエッグ城。
ここに来た理由?
そこに庭があったから、と女前にきっぱり言い切りたいけれどそんなカッコイイことがあるわけがない。
ことのはじめは「なぜドイツ人女性は大きな花柄模様の服を着たがるのだろう」という疑問から。こんなどうでもいいことを考えているうちにドイツ人ってシャクナゲ好きだけど、派手だからかしらんという風に飛躍していった。そしてシャクナゲを検索していたら「エッグ城にてシャクナゲの時期に4日間限定で庭園公開」という文言にたどり着いた次第。
限定モノに弱い私。されど同じバイエルン州内ではあっても近くの城ではない。地図だと駅から少し離れた山里っぽい。行くべきかどうか迷いながらも無料という殺し文句にトドメをさされて「ならば謹んで伺わせていきましょう」と気づいたら電車に乗っていた。
という訳で、ヨネスケ師匠を見習いまして、カメラを片手、折りたたみ自転車にまたがって突撃!隣のお庭拝見。
しょっぱなから立ちはだかる坂にめげそうになる
グーグルマップによるとエッグ城は駅から自転車で約30分とある。ま、大丈夫と楽観視しながら着いた町外れで目の前に立ちはだかったのは急勾配の坂道。ご丁寧に11%という標識まで立っている。
グーグルさん、緩やかな坂が何カ所かありますよって書いてあったけど、これ緩やかとは違いますやん、とグチが出る。「これからは吟味するという行為を学ぼう」と肝に銘じて自転車を押しながら坂をえっちらおっちら登り始めた。
続くよ続くよつづら坂。途中に出てくる地名はことごとく山をさすベルクがついている・・・・
エッグ城は中世の城塞
そもそもこの城の沿革を知っていればどんな所にあるかは容易に想像できたはずだった。(そして来るのを思いとどまったかもしれない)
エッグ城のホームページによると、この城が木製の城塞として作られたのが5世紀から10世紀の間のこと。
11世紀に入って石造りに変えられ、記録には『1103年、ティモ・デ・エック家の居城として壕に囲まれた水城であった』ことが残っているという。
要は戦いを前提として作られた中世の城塞。であるからには攻められにくいような山の中にあるのもさりなんということ。
汗をかきかき、漕ぎつかれては自転車を押し、という己との闘いを繰り返し、「次に買う自転車は電動アシスト付き・・・」とうわ言をつぶやいているうちにようやく中世っぽい館らしきものが見えてきた。
銅像が庭のチャームポイント
入り口前で出迎えてくれたのはシカの銅像。門をくぐって、グリム童話に出てきそうなこじんまりとした城に続くスロープをあがっていくと、お次はゴリラの銅像ときた。小さな子供を抱えたお父さんがゴリラに近づいて「ほらごらん、ママだよ」と子供をおちょくっている。
城に入る手前の橋の両側に鉄門があった。片側は城の持ち主しか入れない小さなお庭で美しいバラが咲き、リクライニングシートが置かれている。そして反対側の門が整備と安全管理の関係でシャクナゲの時期に限って特別に公開されるという広い庭園に続いていた。
鉄門のすぐ後ろに待ち受けていたのはこれまたシカとライオンの銅像。
ここに住んでいる方々はよっぽど動物好きなのかしらんと階段を下りていくと赤と紫、ピンクのシャクナゲがドドンと咲いていた。すでに散りかけている株もあるけれど、何十年ものであるだろう姿は迫力満点。訪れた人たちが花をバックに次ぐ次とポーズをとって記念撮影をしている。
広さは計8ヘクタールであまり作りこまれていない、森のような庭はあでやかなシャクナゲがいいアクセントになっている。庭に流れる小川につかっていたのはよく見たらワニさん(の銅像)。機嫌よくこっちに向かって歯をむき出している。
橋を渡ると今度は天使たち(の像)がたわむれる水場があった。好き嫌いは分かれるかもしれないけれど、あちこちに点在する銅像を見るのは楽しい。これがこの庭のチャームポイントなんだと思う。
城にまつわる数々の血なまぐさいエピソード
ぐるっと遊歩道に沿って庭を一周することにした。上り坂をあがっていくと歩道脇には年輪を重ねた大木の集団。1本大きなブナの幹がなぎ倒されて枝ごと隣の畑に横たわっていた。
枯れているようにもみえない巨木を倒したのは一体自然の力かそれとも別の力?そんな思いに駆られるのはこの中世の城が持つ血なまぐさい歴史を無視することはできないからかもしれない。
その一端を紹介すると、14世紀にここに居住していた騎士、第一代ペーター•エックはシュトラウビング公爵の代理で最高裁判官として死刑を執行。自分の息子を含めて183人を死刑したとか。
そのほか、城主を結婚式の夜に殺した花嫁が捕らえられたあげく打首にされ、城の中には夜な夜な首を手にした白い服の女の霊が出没するらしい。。。
この手の恐ろしいエピソードにはことかかない。肝試しにもってこいな場所、それがエッグ城だったりする。
この庭のハイライトはこれだ
そうこうしながら一周を終えようとした時、ついにこの庭のハイライトを見せていただいてしまった。
えっ、ものすごく希少かつ美しいシャクナゲ?
それとももしかして悪霊が!?
いやいや違いますよ。もっとインパクトのあるすごいもの。
じゃじゃじゃーん、これです。
シャクナゲをバックにおなかをベローンと出した布袋様(?)だった。
池の中で笑いながら寝そべっている。
中世の騎士が・・・処刑が・・・霊が。。とかなんて妄想中に現れた東洋の福の神。その締まりのなさよ。
ギャップにズルっときつつ大いに笑わせてもらった。笑う角には福来る。西洋の怨霊も無念の想いを忘れてお前なんだよう、と大爆笑しているに違いない。
城の当主に遭遇
さあて、城内の見学は次の機会にと帰り支度をした時にふと白いシャツに赤いベストを着た年配の男性が橋に佇んで見下ろしている姿が目に入った。チョッキはサテンのようなちょっと高級そうな生地で刺繍が入っている。
ここでは結婚式もあげられるようになっているのでそのゲストかしらん、と思ってあたりを見回すけれどもそれらしき人々はいない。映画のセットとしても使われるらしいのでエキストラか?と思ってもカメラもどこにも見当たらない。
男性の横を通り過ぎまがちらっと目をやると彼が葉巻をくゆらせていることに気づいた。
葉巻ぃ?何ですと!
酒たばこ系には疎い私でも葉巻が高級であることぐらいは知っている。昨今は健康ブームもあってたばこも下火の中、この男性、一体何者?と遠くから観察していると、行き交う人とやりとりしながら、最後にスタコラと城の中に消えていった。
男性の正体。それは正真正銘のエッグ城主様でした。
後で調べてみたら、このご当主はミュンヘンにあるコンゴ共和国の名誉総領事をつとめていたり、東洋のアンティークを輸入販売されているようで、城の中にも東洋コレクションを展示した一室がある模様。
シャクナゲは当主の父の代に植えられたものだそうだが、シャクナゲも多くはヒマラヤが自生地だから東洋の布袋様とシャクナゲが妙にマッチしていたのも道理だ。ご当主が東洋と所縁があると分かるとなにかすべてがしっくりくる。
それにしても城の主を生で見るなんて機会はなかなかないじゃないですか。パリッと上下を決めて葉巻をぷかり、と少女マンガに出てきそうな格好を拝むことができたのが何とも幸い。Tシャツにステテコ姿とかだったら夢が崩れてしまうところだった。しゃもじ、じゃなくってカメラを担いで来たかいがあったなあ。
ご当主、いいお庭を見せてもらってありがとうございました!
今回のおやつ
山をおりたところのデッゲンドルフ市中心部にあるカフェ「ボンジョルノ」で買ったザクロとアンズ入りのヨーグルトアイス
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