観客ゼロのはずなのに…
我が家には何かがいる…。
週末に妻が泊りがけで遊びに行って私一人で留守番だった。
束の間の一人暮らしに妙な方向にテンションが上がったのはnoteに書いた通りだが、昨日の晩御飯を作っている時に異変は起きた。
時刻は夜の七時くらい外は当然真っ暗である。
台所に立ってお気に入りの音楽を大音量で流しながら一緒に大声で歌ってご飯を作っていた。
歌が佳境に入り盛り上がるサビの部分で私の熱唱にも力が入る。
ちなみに歌っていたのは太田裕美さんの名曲「木綿のハンカチーフ」である。
私はこの歌がとにかく好きで若い頃からカラオケの十八番だ。
ただ都会の絵の具にぃ~染まらないで帰ってぇ~と歌い込んでいるとふいに二階の床をドンドンと踏み鳴らす音がした。
まるで私の歌声がうるさいと言わんばかりの抗議ではっきりと耳に聞こえた。
当たり前だが家にいるのは私一人である。
一瞬で楽しい華やいだ気持ちから、うへぇ誰かいるの…とおっかない気分に叩き落される。
正体を確かめに二階に上がる度胸は私にはない。
なのでさらに歌に力を入れると今度は廊下から足音が聞こえる。
しかもだんだんとこちらに音が近づいてくるではないか。
ああ、ヤバいかもと思って一階の居間や、お風呂場、私の部屋などあらゆるところの照明を点けて回った。
それで少しは気分が落ち着いたので晩御飯づくりを再開した。
あまり気分はよくないが二曲目に選んだのは最近のお気に入り大泉洋さんの「あの空に立つ塔のように」である。
紅白歌合戦で披露して話題になった曲で歌うのになかなかテクニックが必要な難易度の高さを誇る。
特に短いメロディの中に多くの言葉が詰め込まれた早口になる部分は何度歌っても舌がもつれそうになる。
とはいえカラオケに行ったら歌いたい曲として現時点では第一位である。
昨日もその早口言葉をモゴモゴ歌っているとやっぱり二階から抗議の物音がゴンゴンと聞こえてきた。
ううん、この曲もお気に召しませんかと思いつつ三曲目はテンションをぶち上げて恐怖に打ち勝てるように串田アキラさんの宇宙刑事ギャバンをチョイス。
スマートフォンから曲を流して一緒に歌い始めた。
この曲は勢いがあってとても元気が出る。
歌いだしの男なんだろうぅという部分に勇気づけられて夢中になってお玉をマイク代わりにして踊りながら歌い狂った。
すると物音の主は呆れたのかスンと静かになった。
それで安心してご飯づくりをすることが出来た。
私の住んでいる家は中古住宅で前の住人の方は高齢の男性だったそうである。
最晩年までこの家で暮らされていたそうでもしかしたらこの家で最期を迎えられたのかもしれない。
実は謎のラップ音はこれまでにも何度か聞いているし誰もいないはずなのに視線を感じる事はよくある。
昨夜は私の一人カラオケ大会のあまりの音痴ぶりにうるさい!と思って抗議してきたのかもと思うと背筋がゾクッとする。
ご飯を食べてから妻を迎えに行って帰宅してからはその謎の気配はピタリと感じなくなった。
ああ、妻と二人暮らしでよかったぁと心の底から思ったが私よりも怪談に弱い妻には心臓に悪いのでこの話は心の奥底にしまい込むことにした。
なんてちょっとしたホラー話?でした。
そんな怪奇現象と戦いつつ作った晩御飯がこちら。
昨日も一人だったので簡単なご飯。
地元の有名ラーメン店が作っているお土産ラーメンを茹でた。
具もチャーシューとメンマがついていてすぐに本格ラーメンが楽しめる。
これだけだと栄養が偏るので鮭の骨の缶詰をあけて千切りのキャベツと和えた。
味付けはゆず果汁とオリーブオイル。
もう一品ほしかったので最近よく作る出汁巻き卵を作った。
お迎えがあるのでお酒は無しの晩御飯。
いただきますをして鮭キャベツを食べる。
ゆずの果汁が爽やかで缶詰自体の甘じょっぱい味付けとよく合う。
下拵えで軽く塩をしたのでキャベツがしんなりとして食べやすかった。
お次は伸びないうちにラーメンを頂く。
まずはスープから豚骨百パーセントの濃厚な味わい。
強烈な豚骨の香りと旨味が濃くて一口飲むと次の一口が欲しくなる。
麺は中細ストレート。
固めに茹でるのが私の好み。
ズバッと啜るとスープがとてもよく絡んでくる。
小麦の味わいがふんだんにしてリッチな味。
メンマを齧って一休みして一気呵成に食べ進める。
途中でチャーシューも食べるとこれがまた本格な出来で脂身が美味い。
ものの三分でスープまで完食。
もちろんお店で食べるのが一番だがお土産ラーメンもなかなかの実力である。
デザート代わりに出汁巻き卵をポクポクと食べてご馳走様。
お酒を飲まない一人飯は味気ないなと改めて思った。
今日は妻と乾杯するんだ。
ビール買って来ようっと。
晩御飯も少し凝ったものを作ろうかな。
あれ、何だか楽しくなってきたぞ。
おばけなんてないさ、おばけなんてうそさっ。