あらしの夜の大定番
昨日あたりから台風情報に釘付けである。
九月は台風の時期なのでそう驚くこともないが今回のは規模が大きそうなので正直ビビっている。
今これを書いているのは十七日の夕方であるがまだ風は強くなく雨も降っていない。
これから予報の通りに通過すると月曜日が山場になりそうだ。
とりあえず物干しざおを取り込んで、雨戸の点検をしたりと自分が今出来る対策を取った。
他には何と言っても停電対策をしておかなければならない。
先日の小型台風でも半日間停電したのでひどく不便だった。
今回の台風は桁が違うので日常生活に支障が出そうで慄いている。
充電式の懐中電灯と手回し充電の出来るランタンの動作チェックをした。
するとどちらもバッテリー切れでうんともすんとも言わなかったので慌ててコンセントに充電プラグを差し込んだ。
日頃の災害への準備が不十分だからやる事が沢山あってバタバタしてしまった。
とりあえず飲料水の確保と生活用の水を確保しなければならないと思ったが生活用の水は明日の夜に溜めることにした。
飲料水と一緒に非常食も準備しなければならない。
停電で電気が使えなくなったらレンジやトースターは機能しないので火を通さないで食べられるものを買いに行く必要があった。
そこでお昼ご飯を食べてからいそいそと近所のスーパーに食料品の確保に行った。
お店の入り口に非常用持ち出し袋や土のうや乾電池などが売っていて今が非常時だという事を感じさせた。
店内にも台風対策の特設コーナーが出来ており水や缶詰やガスボンベなどが並んでいた。
どれもこれも購入制限があり独り占めはできないようになっていた。
それでもよく売れるのか水は残り数本しか置いていなかった。
私も慌てて二リットルのペットボトルを二本カゴに入れた。
それからなるべく日持ちしそうな食品を物色した。
食パンはそのままでも食べられるので購入した。
生鮮食品は冷蔵庫が停電で使えなくなった時に保存に困るので本当に必要な今日と明日分だけ買った。
他には缶詰やインスタントラーメンを五日分くらい買い足した。
とりあえずこれでいいかなと思って会計しようとしたら私と同じようにまとめ買いをしようとする人が多くてレジが大行列だった。
長い待ち時間を経てようやく帰宅して手洗いとうがいをしてお茶を飲んで一息入れた。
とりあえず電気と水が来なくても数日は耐えられると思ったので少し気が楽になった。
根っからの食いしん坊なので食料が潤沢にあるという状況に心が安らぐ。
そんな事を考えながら今日の晩御飯を早めに作った。
こういった緊急事態の時のメニューはカレーで決まりである。
前にも書いた気がするが思えば幼い頃に台風が来ると母は必ずカレーを作った。
火を通せば保存がきくしお米はガスで炊いていたので停電も問題なかった。
父がびしょ濡れになって帰ってきて参った参ったと言いながら鼻をひくひくさせながら、おっ、今日はカレーかとどことなく嬉しそうだったのを思い出す。
そんな母の影響か私も台風が来るとカレーを作りがちである。
よく冷まして保存していれば三日位は余裕でもつし味も馴染んで美味しくなる。
普段何気なく作っているカレーだが、台風時に長持ちさせる傷まないコツがある。
なんでもカレーは冷める時に菌が繁殖して傷みやすいのだそうだ。
ではどうすればそれを防げるかというと、とろみが出る野菜を使わない事で冷めやすくすることだ。
なので台風の時のカレーはジャガイモ抜きである。
それどころか人参も省いてしまう。
入れる具材は玉ねぎと豚こま切れ肉の二つという超シンプルバージョンである。
作り方もお手軽でフライパンに油をしいてそこに薄切りの玉ねぎとこま切れ肉を入れて野菜炒めの要領で軽く焦げるくらいまで炒める。
お肉に火が通ったら水を指定の量注いで沸騰させる。
沸騰したらいったん火を止めて市販のカレールーをいつもの半分ほど割り入れる。
これだと薄味なので残りの味はカレー粉とケチャップ、ソースなどで補ってつける。
隠し味にほんの少しイチゴジャムを投入したら完成である。
仕込みから初めて完成まで二十分もかからないお手軽さも非常時にはありがたい。
出来上がったカレーはシャバシャバだが味わいはなかなか本格である。
チャツネ代わりにイチゴジャムを使うのはよくあると思うがこれは母譲りではなく私のオリジナルである。
仕込みに五日間、完成まで一週間というような途方もない手間をかけたカレーとはベクトルが違うがそれでもたまに食べると美味しいと感じる。
カレーの日のおかずは簡単にキャベツの浅漬けなんかで充分である。
ざく切りにしたキャベツを甘酢と塩昆布に漬けて半日もしたら食べ頃になる。
今日の晩御飯は台所で私を待っている。
後はお米が炊けるのを待つばかりだ。
明日の晩御飯もカレーで良いでしょ。
台風の進路にあたる方は十分お気を付けください。
私の町も被害が出ませんように。