叔父から妻へ
先日インターネットの通販で買った長袖Tシャツがサイズが大きすぎてダボダボでおかしかったので、私よりも一回り体格のいい兄にあげようと思って実家に行ってきた。
妻と一緒に出掛けたのだが兄は夜勤で出かけるところだった。
私には着られないからあげるというと、おおすまんなと言って慌ただしく出勤していった。
母がコーヒーを淹れてくれたのでそれを飲みながらあれこれ話していると今年亡くなった叔父の遺品整理をしているらしく、大量の服があって片付けても片付けてもきりがないと言っていた。
ちょうど昨日も片付けに行ったらしく多くの衣類を持って帰っていた。
母がそうだアンタ着てみない?と言われたので試しにトレーナーにそでを通してみたが丈が短くてつんつるてんだった。
そこで試しに妻が着てみるとこれがちょうどいいサイズでぴったりだった。
あらまあ、いいじゃないと母が言ってついでにズボンがたくさんあるからそれも履いてみる?と聞いてきた。
妻もうん、試してみたいとノリノリで答えていた。
そして履いてみたズボンは丈こそ少し長いもののウエストや太ももはジャストサイズでとてもよく似合っていた。
わぁ、ええじゃんと母が感想を述べる。
妻も鏡を見ながらくるくる回って、どうしようぴったりだと言っていた。
それからあれこれと試し履きをして結局七本のズボンが気に入ったみたいだった。
母は家の者でサイズが合う人がいないからよかったらみんな持って帰ってというと妻は本当にいいの!?と大喜びだった。
妻は以前洋服のお直し屋さんに長年勤めていたので裾上げはお手の物である。
叔父はブランド志向だったので頂いた服はほとんどが高級品で普段ユニクロ愛好者の妻からしたら思わぬ贈り物だった。
ここで一言添えておきたいのは妻は決しておデブちゃんではなく叔父が男性にしては小柄でスリムだったという事である。
試しに私も叔父のズボンを履いてみたらふくらはぎの時点でピッチピチに引っかかってとてもじゃないが無理だった。
母は着る人がいなかったら全て知り合いの古着屋さんに持ち込もうと思っていたらしく妻が着てくれるという事を大変喜んでいた。
妻も叔父のことが大好きで馬が合っていたので私が大切に着ますからねと服の山に話しかけていた。
今回頂いた服以外にも叔父の家のクローゼットにはまだまだ多くの衣類が眠っているらしく今度整理するときは手伝うことにした。
叔父はとにかくファッションにはうるさい人だったので男性にしてはかなりの衣装持ちだった。
今度片付けるときも大仕事になりそうな予感がする。
何にせよモノを受け継ぐという事は良いことだと思う。
そんなファッションショーをしていたら夜になったのでついでに実家で晩御飯をご馳走になる流れになった。
昨日の献立はグラタンがメイン。
私はあまりグラタンにグッと来ないのだが妻は好物である。
作り方もあやふやだったので母が作るのを見ていると具材となる鶏肉と玉ねぎを炒めて塩コショウで下味をつけている。
そこに小麦粉を振り入れてバターをたっぷり入れる。
バターが溶けたら牛乳を少しづつ加えてとろみが出るまで火を通したらホワイトソースの完成。
次にマカロニを茹でて指定の時間より一分早めにザルにあける。
そのマカロニをホワイトソースに加えて耐熱皿に平らに盛り付ける。
後は上にチーズをたっぷり載せて予熱したオーブンで10分焼けば出来上がりである。
どう?簡単でしょと母が言うので確かにと答えた。
グラタンを仕込んでいる合間に副菜で切り干し大根の煮物と赤魚のネギソースを作った。
切り干し大根の煮物は母がある程度作っていたので最後の味見だけ私がやった。
赤魚のネギソースは、赤魚を一口サイズに切り分けて小麦粉をつけてちょっと多めの油で揚げ焼きにする。
揚げている間にソースづくり。
ネギをたっぷりみじん切りにして醤油、酢、ごま油、うま味調味料と合わせてタレを作る。
赤魚が揚がったら熱いうちにネギソースを絡めて出来上がり。
後は母がキュウリの塩もみを作って晩御飯の完成。
いただきますをして食べ始める。
昨日は車で来ていたので残念ながらお酒は我慢。
まずは熱々のうちにグラタンを食べる。
こってりとしたチーズの下に優しい味のマカロニグラタンが嬉しい。
子どもの頃はそんなに好物でもなかったが、昨日のグラタンはおいしいなと感じた。
次は私が作った赤魚のネギソースをいただく。
赤魚は骨がしっかりとってあるので調理しやすい魚である。
甘酸っぱいネギソースがよく絡んでなかなかいいお味だった。
油淋鶏の魚バージョンといえば味がイメージしやすいだろうか。
合間に切り干し大根ももぐもぐ。
こういった渋いお惣菜を作らせたら母の腕前には全然かなわない。
これがキャリアの差だなとしみじみ思いながらパクリ。
どのおかずもおいしくいただいてご馳走様。
後片付けをワッセワッセとみんなでやってお茶をいただいて一服してから帰宅。
家に帰ってからも妻のファッションショーは続いた。
私の持って行った安物Tシャツがブランド品に化けたわらしべ長者のような夜だった。
叔父さん、服は大切に着させていただきますと妻が言っていますんで喜んでくれますか?
気前のいい人だったからオッケーですよね。