いただきますとごちそうさまと
私は毎日台所に立って料理を作る。
朝ごはんは簡単にトーストとコーヒーと目玉焼きという喫茶店のモーニングのようなメニューが多い。
妻の分も作るのだが一人分作るのも二人分作るのも大して変わらないので全然手間ではない。
お昼はお弁当の事が多い。
基本的に前の日の残り物を入れる事が多いがお惣菜の力も遠慮なく頼らせていただいている。
用事を全て済ませて買い物をして家に帰って手洗いとうがいを念入りに済ませたら一日で一番楽しい時間に突入である。
それは晩御飯づくりで献立は前の日の番には大体決めてある。
まず何はともあれ手を付けるのはぬか床の手入れである。
今年の一月から始めたぬか漬け生活もどうにか半年を迎えた。
ぬか床は底が深いタッパーで管理しているのだが、毎日かき混ぜる。
その時のニッチニッチしたぬかの手ごたえが何とも言えない。
新しく野菜を漬ける時には漬かりやすいように半分に割ったり皮を剥いてみたりと試行錯誤が楽しい。
漬け始めた頃は無臭だったぬか床だが今ではちゃんとぬか味噌の匂いがするようになった。
一番よく漬けるのはキュウリだがこれはもうコツを完全掴んでいる。
二番手は人参だがこれは漬かりづらいので二日間漬けたりする。
変わり種としてはズッキーニでこれは最近美味しいよという話を聞いたので試してみたが程よく柔らかくて食感も良かった。
そんな感じでぬか床の手入れをしたらお次はメインの料理から作っていく。
お肉かお魚かと聞かれたら圧倒的にお肉が食卓に上る確率が高い。
お値段的な問題もあるが後の生ごみの処理の面倒さも含めて肉類に軍配が上がる。
特に鶏の胸肉にはお世話になっている。
お値段も安いしボリュームもあるので妻との二人暮らしにはちょうどいい。
調理法は焼いたり、茹でたり、煮たりと様々だが塩分と油は控えめにしている。
メイン料理の完成が見えてきたら他のおかずを作る。
私は副菜の鬼なので一度の食事でメインと副菜二品と汁物を基本にしている。
これは母の影響で実家では一汁三菜どころではなく一汁六菜位の料理が並んでいた。
母は台所に立っている時が一番楽しいらしく煮物など時間のかかる料理を朝から夕方までじっくり作るのが一番幸せと言っている。
私もその影響をもろに受けて願わくば台所で一日を過ごしたいと考える方である。
副菜づくりにもある程度ルールがあってメインが重い時は野菜を多用する。
簡単にできるサラダや和え物を作ることが多い。
それから卵の登板回数も多い。
煮物もたまには作るがあまり上手ではないので自信がない。
その代わりちょっとした手抜きアイデア料理は大好きでいかに工程を省いて面白いものを作るかに情熱を燃やす。
調味料の棚を見てから味付けを決める事も多く、塩コショウ味が気がついたらこってりしたオーロラソース味になったりすることもある。
またその閃きというか即興性が料理の醍醐味である。
そうやってメイン料理と副菜二品、ぬか漬け、汁物を拵えて晩御飯の完成である。
後片付けを楽にするために作りながら洗い物を済ませておくのも大切なルーティンだ。
ちょっとした決め事だが晩御飯にはあまりお米を食べる事が無い。
糖質を抑えるのが目的で週に二度くらいしか食べない。
それもお茶碗に軽くいっぱい120グラムが目安である。
それからこれが一番大切にしている習慣なのだが晩御飯はどんなことがあっても夫婦二人で食べる事にしている。
たまにどちらかの帰りが遅くなってもこれだけは守っている大切なルールだ。
時には些細な事でケンカをして気まずい事もあるがそれでも無言でもいいから一緒にご飯を食べる。
そのうちにポツリポツリと会話が始まりどちらともなく謝ってもとのほんわかとした空気に戻るとホッとする。
ご飯を食べるという行為は生きていくうえで欠かせない事であり、パートナーが美味しいと言ってご飯を食べてくれるのが何よりの癒しであり一日の疲れも吹き飛んでいく。
もし一人暮らしだったら適当なお惣菜やインスタント食品ばかり食べてお酒ばかり飲んでいたと思うと少々ゾッとする。
妻がいてくれて料理をするモチベーションが保たれている。
結婚して今年で十九年目、毎日私が拵える拙いご飯にナイスリアクションをしてくれる妻を心の底から愛おしいと思う。
なのでたまに彼女の大好物のハンバーグを作ると普段の三割増しでテンションが上がる。
ニッコニコしてハンバーグを頬張る彼女の口についているソースをぬぐったりしてちょっと甘いムードになったりならなかったり。
何はともあれ晩御飯は必ず夫婦で食べる、これが我が家の一番大切な習慣。
これからお互いがおじいさん、おばあさんになっても続いていくと良いな。
腰が曲がっても包丁は握り続けたいものじゃわい。