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歯痛とぐんじの酢漬け

 昨日のお昼にコンビニのおにぎりをモシャモシャと頬張っていると口の中でガリッと硬いものが当たった。

 何となくどういう事が想像がついたのでおにぎりを飲み込まずに口の中に手を入れて異物を取り出した。

 果たしてそれは歯の詰め物だった。

 大きさは一センチくらい、ううんどこの歯のものだと思いながらとりあえずお茶をゴクリと飲んだらピシッと鋭い痛みが走った。

 舌で刺激があった部分を探ってみるとポッコリ穴があいていた。

 場所は左の前歯の犬歯の隣の歯でいつ治療したのか記憶に無い場所だった。

 アチャー参ったなぁと思いつつ、とりあえず右の歯でおにぎりを慎重に噛んで食べた。

 どうにも歯がスースーするし、ちょっと痛いのでこれは歯医者案件だなと思って診察が開始になる二時まで待つ事にした。

 なるべく鼻呼吸をすることで痛みを軽減してごまかしごまかし用事を済ませていった。

 それから三時前に時間が空いたので行きつけの歯医者に電話をした。

 ここの歯医者は腕はいいのだが受付のおばちゃんが非常に勢いのある人で人の話をあまり聞いてくれない。

 インターネットでの受け付けはしていないので、この歯医者の予約を取るにはこのおばちゃんの関門を突破するしかない。

 ああ、ちょっと気が重いなと思いながら電話をかけた。

 数コールかかって電話に出たのは何と若い女性の声だった。

 あれ、間違ったかなと思ったが向こうが名乗った歯医者の名前は合っていた。

 あ~おばちゃん辞めたのかなとなぜだか一瞬物足りない気持ちになりながらも、初めて話す女性の方に自分の現状を伝えた。

 痛みますか?と聞かれたので多少とちょっと見栄を張ってしまった。

 治療をお願いしたいのですが予約はいつ取れますか?と尋ねると非情に言いにくそうに今は予約で一杯でして最短で来週の水曜日になりますと途方もない先の事を言われた。

 う~ん、この痛みと一週間付き合うのはしんどいなぁと思ったが近所の歯医者に浮気するのも何だか悪いので相手の条件を飲んだ。

 受付のお姉さんもホッとしたようででは来週お待ちしておりますと言って予約は完了。

 しんしんと染みる歯を抱えながらの試練の一週間となりそうだ。

 せめてもの救いは右の歯は無事なのでそちらで噛めば少しはましだという事だ。

 歯の詰め物って意外な所で取れるものである。

 子どもの頃はキャラメルやミルキーに銀歯を持っていかれたものだが、今回はおにぎりである。

 歯のメンテナンスを徹底的にするお年頃なんだろうなと思いつつ水を飲むとズキンと痛みが走るのであった。

 はあ、一週間は長いなぁ…。

 そんな私の昨日の晩御飯がこちら。

 昨日は母から晩御飯を作ったから取りに来んさいという、ありがたい連絡を貰っていたので帰り道に実家に立ち寄った。

 母が台所で待ってて出来立てを揚げるからと言って油と格闘していた。

 その間父となんでもない話をしながら待っているとハイお待ちどう、すぐに持って帰って奥さんと食べんさいと言われた。

 揚げていたのはメンチカツで衣の角がカリカリでいかにも美味そうである。

 他にもいくつかおかずを分けてもらってお礼を言って帰宅。

 帰ってから妻に歯の話をするとそれはお気の毒と軽くあしらわれた。

 とりあえずおかずが温かいうちに食べたかったのですぐに晩御飯。

 献立はメンチカツとひじきの煮物、オニオンサラダと地元の小魚ぐんじの酢漬けという豪華版。

 ここはビールでしょと思ったが歯に染みるので止めておいた。

 いただきますをして食べ始める。

 まずはメンチカツからソースをかけて右の奥歯で噛みしめる。

 ジュンと肉の脂が染み出してきてジューシーで香ばしい。

 揚げ立てなのでまだ十分に温かくかなり美味しい。

 妻もさすがお義母さんと言ってパクパクと食べていた。

 私も二個目を食べようと思ったがどうにも歯の痛みが地味~に気になって食事に集中できない。

 困ったなと思いながらもひじきの煮物を食べる。

 普段あまり自分では作らないのでこういった力のある地味な総菜が嬉しい。

 サラダにはマヨネーズとポン酢をかけてモシャモシャ。

 それから楽しみにしていたぐんじの酢漬けに箸をつける。

 ぐんじは地元でも雑魚扱いの大きさ三センチくらいの小魚である。

 しかもそのサイズでウロコがびっしりついている。

 食べる時には頭を落としてワタを出してウロコを取らなければならない。

 下ごしらえが済むと魚体は半分くらいの小ささになってしまう。

 それを素揚げして玉ねぎや人参を刻んで入れた甘酢にジュッと漬けて一晩おけばとても素敵なおかずになる。

 ぐんじも酢漬けにするので骨まで柔らかくなって食べやすい。

 かなり手間がかかるローカルな料理だがジャンルとしては豆アジの南蛮漬けが近いかもしれない。

 これがまた日本酒にピッタリなのだが昨日は無念の我慢。

 久しぶりに母の手料理を食べたがまだまだ敵わないなという味だった。

 惜しむらくは歯の痛みを気にして思いっきり食べられなかった事。

 とはいえとっても美味しく頂きました。

 お母さんご馳走様でした。

 歯医者まであと一週間、先は長いなぁ…。

 ついつい舌で患部を触ってイテテとやっちゃうのは何ででしょうね?

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