二十日祭と水ギョーザ
昨日は叔父の法事で朝の八時前から出かけた。
神道なので十日ごとにお祭りという形で神主さんに祭詞をあげていただく。
平日はなかなか参加できないので日曜日の昨日は是が非でも参加したかった。
昨日は二十日祭となりその次は三十日祭、それから四十日祭、五十日祭で一区切りとなる。
祖母の時は日にちの都合がつかず五十日祭だけしか参加できなかったので少し悔いが残っていた。
とりあえず実家に歩いて行って父と母、兄と合流して叔父が住んでいた家に向かった。
叔父の家は住む人がいないので無人になっているのだが従妹が管理することになったようである。
移動の車中でもう二十日も経つんだねと話すと母が早いわよねぇとしみじみとした口調で答えてくれた。
母にしてみれば兄妹を亡くしたわけで私よりもずっとショックを受けているはずである。
しかしそんな悲しみの気配はあまり感じさせずいつもの母だった。
父は後部座席でコックリコックリと船を漕いでいた。
私は兄とアニメやゲームの話や子どもの頃の懐かしい思い出話でひとしきり盛りあがった。
やがてかつての叔父の家に行くと従妹がもう法要の準備をして待っていた。
少し前に会ったばかりなので久しぶりというわけでもなかったが葬儀直後のやつれた感じからはだいぶ元気を取り戻してきたようで冗談を言い合ってクスクスと笑いあった。
ほどなくして神主さんが来られたので二十日祭が執り行われた。
まずは祭詞を唱えて頂いてそれから玉串を奉納してつつがなく式は終了した。
ここ最近で祖母や叔父の葬儀などで神道に馴染んできたので段取りがもう大体分かってきたので戸惑うことなく振る舞う事が出来た。
こういう事に慣れるのはあんまりいい事じゃないよなとはチラリと思ったが身につけておいて無駄になる作法ではないので真剣にやった。
神主さんはお昼から用事があるらしく慌ただしく帰っていかれた。
集まった親戚でお茶を飲みながら世間話をちょっとして解散。
ちょうどお昼時だったので帰り道にお昼ご飯を食べていこうという話になった。
何が食べたいか?と父が聞いてきたので蕎麦がいいなと答えると、じゃああそこだなと言って母に道を教えていた。
ニ十分くらいしてお店に着いたのだが日曜日なので結構混んでいた。
それでも辛抱強く待ってすすった蕎麦は結構なお手前で大満足だった。
そのまま実家に戻る時に晩御飯を食べていかない?と母から誘われた。
うーん、じゃあ奥さんに聞いてみるねと連絡するとすぐにどうぞご自由に、私は一人時間を楽しむから~と返信があったのでじゃあご馳走になりますという事になった。
そうと決まれば再び何が食べたい?と父が聞いてくる。
そうだなぁ日ごろ食べないものがいいなと答えると、それじゃわからんと言われた。
なのでそうだ餃子がいいと答えた。
おっ、餃子か久しぶりに作るかと父が乗り気になった。
母はもっと良いものでもいいのよ言ったが私は実家の餃子の大ファンなのでそれより魅力的な選択肢はなかった。
早速スーパーに寄って小麦粉とひき肉とキャベツ、ニンニクなど材料を揃えた。
実家に戻ってお茶を飲んで一休みしてさっそく父が生地となる小麦粉をこね始めた。
これが結構な力仕事なので途中で代ろうか?と聞くと任せたと言われたのでうんしょうんしょと生地をこねた。
こね終えたら布巾を被せて生地を休ませる。
その間に母が餃子の餡を作るというのでそれも手伝わせてもらった。
キャベツをみじん切りにして塩を振ってしんなりさせる。
その間にニラを細かく刻む。
次にひき肉だけを白っぽくなるまで根気よくこねる。
キャベツをザッと洗って水気を徹底的に絞る。
これが味が締まるコツだと母が教えてくれたので秘伝盗んだりと味泥棒の気分になった。
ひき肉の入ったボウルにキャベツとニラを入れて醤油、塩コショウ、うま味調味料、ごま油を入れて味付け。
後はよく混ぜたら餃子の餡の完成。
まだ包み始めるには早い時間だったので父の畑で野菜を分けてもらったりしてゆっくりした。
しばらくしてテレビで笑点が始まる頃から餃子包み開始。
私は生地を細かく切って丸めるという子どもの頃からやってきた安定の役割を担った。
父は生地を丸く成形する役、母が餡を包む役と三人で分担してテンポよく包んでいく。
ちなみに兄はこういった共同作業には全く参加せずに食べる専門という特権階級である。
小さい頃はその謎の王子様ルールが気に入らなかったものだが今となってはまあどうでもいい。
昨日は餡を包む作業もやらせてもらった。
ひだを四個くらい作って包んでいく作業は不器用な私にはかなり難易度が高い。
それでも十個くらい作っていたら不細工ながらどうにか形になってきた。
食べる人数は四人なのでそんなに数は作らない。
七人家族だった昔は二百個は軽く作っていたが昨日は五十個くらいだった。
包み終えたら丁度晩御飯の時間になったので早速大鍋で茹でる。
父特製のラー油が効いた餃子のタレに出来立ての水餃子をつけて食べると泣けるほど美味い。
あれこれ手伝ったので一からの手作り餃子の苦労がよくわかってこりゃ大変だなぁと思った。
そんな事を考えながら冷えっ冷えのビールをゴブリと飲むと餃子との相性の良さに昇天しそうになった。
少し遠出したり気を遣ったりと慌ただしい一日だったがこの餃子で全てが洗い流された気がした。
五十個の餃子がみんなの胃袋に綺麗に収まってご馳走様。
帰り道は母に送ってもらって帰宅した。
妻は自分でペペロンチーノを作ってレモンサワーと一緒に食べたと言っていた。
さすがに疲れたのでお風呂はシャワーで済ませてバタンキュー。
昨日はあれこれと盛りだくさんの日曜日だった。
餃子作りは何とか伝承できそうである。
あの味を失うのはあまりにも惜しい。
他にも母に習いたい料理は山ほどあるのでマメに実家に顔を出したい。
台所で他愛もない話をしながら一緒に料理をするのはとっても幸せな時間だ。
ちょっときのう何食べた?の梶芽衣子さんの演じるお母さんと料理をするシロさんに似てないですか?
あのシーンたまらなく好きなんですよねぇ。