あらゆるものを手放し続けてきた。 本。 洋服。 CD。 雑貨。 写真を撮影して処分したものもあった。 手紙。 写真。 記念品。 徹底的に手放し続けた。 最終的に残るものは何なのかを考えながら。 そして、生活に必要なものだけが残った。 ベッド。 毎日必ず着る洋服。 必要最低限の食器。 シャンプーとリンスとボディーソープ。 タオル。 生活だ。 私の軸にあるものは生活なのだ。 そうやって今日も私は生活を続けている。
空から永遠に降ってくる概念。 私はその概念を記録し続けていた。 絶対に終わることのないその作業。 人生を概念の記録に費やしていた。 人間の一生はとても短い。 いつまで経っても終わらない概念の記録。 私は終わらせられる自信があった。 そして概念の記録は終わった。 それは世界を整理する作業だった。 単純に白黒付けられるものではなかった。 複雑なシステムみたいに。 それは私の心と似ていた。 いつまで経っても終わらないアイデンティティの整理みたいに。 それで
私は知っている。 この世界には全てが存在していないということを。 この世界には全てが存在しているということを。 それは矛盾することかもしれない。 だとしても。 私は知っている。 全てのことには意味があるということ。 全てのことには意味がないということ。 それを知っているのは、限られた人たちだけだ。 目の前の全てに対して感謝をすること。 目の前の全てを否定すること。 目の前の全てをただ客観的に眺めるということ。 私はただ、容れ物になる。 透明な世界の鏡