鍋が嫌い
みなさん鍋はお好きですか。
ザ・冬の日本の代表料理とも言える鍋。私はこれがとても嫌いです。
味付けの問題ではありません。みんなが各々の箸でつつくのが汚くて嫌とかいう潔癖的な意味でもありません。
なんというか軽いトラウマみたいなもんです。少しずつ年月が積み重なって嫌いになった。食べられないわけじゃないけど、どんな鍋も好きじゃない。
うちは母子家庭です。母は仕事で、前は凝った料理も作っていたけれど 離婚して以降は短時間で作れて一気に大量にストックができるものばかりになりました。温めるだけで何日も食べられるような。カレーみたいな。それが冬は鍋でした。
深くて大きい中華鍋みたいなフライパンがうちの鍋容器です。具材を全部ぶち込んで煮えてれば完成。鍋奉行がみたらぶっ倒れそうなほどのテキトーさ、ごった煮状態の見た目。チゲと味噌と豆乳と味は違っても、それぞれの鍋での具材はあまり変わりません。こだわりゼロ。そしてとにかく大量。
当たり前ですけど、女二人、わりと食べる方でも初日に全部は無くなりません。半分ほど具材を減らして、次の日残りを食べる。ちょっと残った具と余った鍋の汁の中にご飯と卵をぶち込んで雑炊。これで3日は持つ。夜だけの話じゃありません。朝ごはんもこれ。朝と夜、同じ鍋の味を3日、4日食べ続ける。
何が辛いってそれをほとんど食べるのが私だったということ。母は朝ご飯を食べない派なので、夜しか食べません。日が経つにつれてクタクタのくちゃくちゃになった、ご飯がノリみたいになった雑炊を食べることに嫌気がさしていきました。鍋になると憂鬱でした。残すのは嫌だけれど、ご飯を「食べる」のではなく「片付ける作業」になっていくからです。
これを見ると、贅沢だとか、作ってもらえるだけマシとか、仕方ないとか、自分で作れとか色々言う人いると思います。私も大きくなってからは自分で作るようになりましたし、当たり前ですが鍋が悪いのではありません。母の気持ちも分かりますし、仕方がないことだったし、鍋を作る親の行動に文句を言ってるわけじゃないです。なんというか、精神的に嫌いってことが言いたかったんです。
離婚した私の父は好き嫌いがあまりない人でした。あっても出されたものは全部残さず食べる。親ながら人間的に好きになれない人でしたが、唯一、食を大事にするその姿勢は尊敬していました。魚も頭も皮も綺麗に食べて、お皿にはピッカピカの骨しか残らなかったのをよく覚えてます。
そんな父が大嫌いなもの。鯖缶です。食べられるけど、出来れば食べたくないし自分では絶対に食べないもの。
父は鯖は好きでよく食べていました。でも鯖缶が大嫌い。なぜかと言うと、私と同じ理由です。小さい頃それしか食べ続けられなかったから。食べ続けて嫌いになったのです。
父の母……つまり私の祖母ですが、料理が壊滅的に下手。料理自体得意じゃなくて家事も好きではなかったそうで、食卓には缶詰ばかり。毎日朝も夜も鯖缶を食べて段々と嫌いになったそう。同じです。
食に恵まれなかったからこそ好き嫌いなくなんでもありがたく食べられるようになった、けど鯖缶は大嫌いになった。なんか……かわいそうですが、面白いな、とも思います。
私は父のことが好きではありませんので、父に似ている部分があると言われると複雑な気持ちになるのですが、やはり親子だからなのか、嫌いな食べ物が嫌いな理由が同じ。なるほどなぁ。
そんなわけで私は鍋が嫌いです。
なぜこの話をしたかと言うと、今日はご飯が鍋だったからです。
もう昔のように大量なわけでも、無理して食べなくても済むのに、やっぱり嫌いです。
みなさんは、精神的に嫌いな食べ物、ありますか。
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