滴る8月のこと 【詩】
8月
透明な果汁
手首に滴る
赤いシロップ
スプーンから滴る
ひと夏の遊び
髪先に滴る
夏の匂い
背中を滴る
アルコール消毒液
靴先に滴る
新しい生活様式
汗
プール
かき氷
桃
8月
いつもより目に入る自分の手指と
いつもより目に入らないあなたの顔
入道雲を見上げるのなんて忘れて
半年も経ったのでこの生活にも慣れました
けれども
マスク越しに夏を吸っても味気ない
マスク越しに口づけしても味気ない
夏が滴る8月に
心から何かが滴りおちては消えてゆく
マスクを顔に付けるような手軽さで
アルコールで指を消毒するような流れ作業で
空を忘れるような無意識に
夏が滴る8月に
心から何かが滴りおちては消えてゆく
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ぼくらは昔、言葉を持たぬ生き物だった。
ぼくらは昔、幸福だった。
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