「今」を生きよう!なんて馬鹿なこと言ってるんじゃないよ。
言葉は時に罪である。歌舞伎町のホストでも、作家でも、それは良く知っている。「自由」を求め続けたシンガーソングライターは「自由」を見つけたのだろうか?いや、「自由」なんて言葉だけで、実際中身は怪しいものだ。
「今」ほど怪しい言葉はない。プログラミングの世界では「今」はnow()と表現される。このnow()自体は命令のようなものだが、実行されると実行したその時の時分秒が打刻される。つまり「今」とは「その時の時分秒」なのだ。ということは、死ぬまで「今」の連続なわけだ。
今だけしんどいのよ。がんばりなさい。と受験生の母親が言ったとする。息子(娘)は「今」だけだと思ってがんばる。だが「今」とは「一生」なのだ。だから彼らは絶望する。だったら最初からそう言ってくれればいいのに、と。
多くの言葉や書物は営利目的であったり、権力者の道具であったりするから、それを食らって栄養にしようとする人たちはいずれ消化不良や自家中毒を起こすに決まっている。平野啓一郎氏は「文学は毒薬」であると言ったが、むしろ世に氾濫する文学未満の言葉こそ「麻薬」であり「毒薬」である。
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