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ずらして、ひねって、妄想するDESIGN #14 「アナロジー2」(概要編)

 新たなアイデアを生み出すための「ずらして、ひねって、妄想する」事例を紹介します。

 今回、紹介します事例は、ディダクション・インダクション・アブダクションに関して、「発電デブリ」「仮想旅行ができる地図」「折る刃式カッターナイフ」の事例により説明します。

【ディダクション・インダクション・アブダクションの概要】

 類似するものを妄想したとき、自身が保有する学習や経験による知識に基づき、ディダクション(演繹法)・インダクション(帰納法)・アブダクション(仮説推論)の推論を活用していたのではないかと考えます。

 ディダクション(演繹法)とは、特定の二つの事象を掛け合わすことにより、一つの推論を導き出す方法です。一般的には、「A=B」「B=C」、よって「A=C」という推論を導き出す方法です。

 インダクション(帰納法)とは、複数の事象から共通点を見つけ出し、一つの推論を導き出す方法です。一般的には、「Aは正しい」「Bは正しい」「Cは正しい」、よって「共通する●●は正しい」という推論を導き出す方法です。

 アブダクション(仮説推論)とは、特定の事象に対して法則を当てはめることにより、異なる仮説を導き出す方法です。一般的には、「Aは□□できない」に対して「Bが■■できるのであれば、Aは□□できないのは当然である。」となり、「Aには■■ができないはずである」という仮説を導き出す方法です。(解決策としては「Aは■■を活用することにより、□□を解決することができる」)

 今回は、「発電デブリ」「仮想旅行ができる地図」「折る刃式カッターナイフ」の事例によりディダクション・インダクション・アブダクションの思考の内容・構造化した内容について説明します。

 なお、説明しているインダクション(帰納法)・ディダクション(演繹法)・アブダクション(仮説推論)は、個人の解釈により説明したものです。

【ディダクションを活用した推論(「発電アプリ」)】

(思考の内容)
 人工衛星自体の強度以外に関しても調べていると、人工衛星において太陽光発電をするという計画を知りました。

 人工衛星における太陽光発電から新たなアイデアが出ないか検討している中で、デブリが人工衛星に衝突した際、振動が発生しますので、その振動を活かせないかと思い付きました。

 振動について検討していたとき、振動により発電できるのではないかということを思いつきましたので、発電と振動の関係性をさらに調べました。

(構造化)
太陽による光を活用し発電する
     ↓
衝突により振動する ※ディダクション1
     ↓                               振動により発電する ※ディダクション2
     ↓                               衝突により発電する ※ディダクション3
     ↓
衝突による振動を活用し発電する

【インダクションを活用した推論(「仮想旅行ができる地図」)】

(思考の内容)
 自宅において、仮想旅行の体験をしたい場合、「観光地のビデオによる映像」「VRによるリアルな体験ができる映像」「オンライ旅行によるガイドが撮影した映像」などがあります。

 これらの映像は、過去に撮影した映像である場合や大人数で観る場合など、今の季節を感じることができない場合やみんなが同じ映像しか観ることができない場合があります。

 一方で、「仮想旅行ができる地図」に関しては、現在の季節を体感しつつ、まだ知られていないディープな場所やインスタ映えする場所を見ることができるなど、自分だけの場所を見つけることができます。

(構造化)
ビデオによる映像は場所が決まっている ※インダクション1
VRによる映像は場所が決まっている ※インダクション2
オンライン旅行は場所が決まっている ※インダクション3
     ↓
大人数が観る映像は他人と同じ体験しかできない

【アブダクションを活用した推論(「折る刃式カッターナイフ)】

(思考の内容)
 ナイフの切れ味が悪くなったので、ナイフを研いて切れ味をよくする必要がありますが、ナイフを砥石で研ぐのは面倒であると思いました。

 そのとき、昔は皮を切るときにガラスの破片を使い、皮を切っていることを思い出しました。そして、ガラスの切れ味が悪くなったとき、ガラスを割って切れ味をよくしていたことを思い出しました。

 これを、ナイフに応用できないか考えましたが、ナイフを折る(割る)こと自体困難であり、また、ナイフを折ることができた場合であっても、きれいに折ることはできないと考えました。

 そのとき、板チョコレートはきれいに割ることができることを思い付きました。板チョコレートには、きれいに割るための割れ目がありますので、ナイフにも折れ目(折れ目)を入れることにより、きれいに折ることができるのではないかと考えました。

(構造化)
ガラスで皮を切るので、ガラスの切れ味をよくしたい
     ↓
ガラスがきれいに割れない ※アブダクション1 (事象)
     ↓                               板チョコは割れ目が入っているのできれいに割れる ※アブダクション2  (法則)
     ↓                               ガラスがきれいに割れないのは、割れ目が入っていないからである ※アブダクション3 (仮説)
     ↓                               ガラスに割れ目を入れるときれいに割れる (解決策)             (ナイフに折れ目を入れるときれいに折れる)

【アブダクションを活用した解決策のプロセス】

1.インサイトを抽出します。
「ガラスがきれいに割れない」
2.インサイトと同類のインサイトの事例を抽出します。
「チョコがきれいに割れない」
3.抽出した事例におけるインサイトの解決策を抽出します。
「板チョコはきれいに割れる」
4.解決策を抽象化します。
「割れ目」
5.当初のインサイトに抽象化した解決策を当てはめます。
「ガラスに割れ目を入れるときれいに割れる」               (ナイフに折れ目を入れるときれいに折れる)

【ディダクション・インダクション・アブダクションの関係性】

 ディダクション・インダクション・アブダクションの関係性とは、はじめにアブダクションにより仮説を導出し、ディダクションによりその仮説を具体化し論理的に説明します。そして、インダクションにより論理的に説明した仮説を検証します。その結果、仮説が強化され論理性が高まります。

  今回は、ディダクションによりその仮説を具体化し論理的に説明し、インダクションにより論理的に説明した仮説を検証します。そして、アブダクションにおいて、検証した仮説を法則として活用し、新たな解決策を導出します。

【ディダクション・インダクション・アブダクションの関係図】

①ディダクション
1.板チョコには割れ目がある
     ↓
2.割れ目があるときれいに割れる
     ↓
3.板チョコはきれいに割れる
     ↓

②インダクション
1.板チョコは割れ目があるのできれいに割れる
2.トイレットペーパーは切れ目が入っているのできれいに切れる
3.錠剤のパッケージには切れ目が入っているのできれいにちぎれる
     ↓
 (※)割れ目があるときれいに割れる (法則)

③アブダクション
 ナイフを研ぐのが面倒である
     ↓
 ガラスは簡単に割って切ることができる
     ↓
1.ガラスの切れ味をよくしたいが、ガラスはきれいに割れない (事象)
     ↓
2.(※)板チョコは割れ目が入っているのできれいに割れる (法則)
     ↓
3.ガラスがきれいに割れないのは、割れ目が入っていないからである (仮説)
     ↓
 ナイフに折れ目を入れるときれいに折れる (解決策)
     ↓
 折ることができるカッターナイフ(折る刃式カッターナイフ)

【まとめ】

 「発電デブリ」「仮想旅行ができる地図」「折る刃式カッターナイフ」の事例によりディダクション・インダクション・アブダクションについて説明しました。

 「発電デブリ」の事例では、類似する「太陽による光を活用した発電」と「衝突による振動を活用した発電」は、「衝突」「振動」「発電」の関係性において、ディダクションを活用しています。

 「仮想旅行ができる地図」の事例では、「ビデオによる映像は場所が決まっている」「VRによる映像は場所が決まっている」「オンライン旅行は場所が決まっている」から、「大人数が観る映像は他人と同じ体験しかできない」において、インダクションを活用しています。

 「折る刃式カッターナイフ」の事例では、「ガラスはきれいに割れない」と「ガラスに割れ目を入れきれいに割れる」は、「板チョコは割れ目が入っているのできれいに割れる」との関係性において、アブダクションを活用しています。

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