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「吉良吉影」という男 - 『ジョジョの奇妙な冒険』番外編

プライベートで練習してるコピバンに『ジョジョの奇妙な冒険』好きが多くおりまして、集まるたびにジョジョトークが開催されています。その場では1部か2部かが人気高いため声を潜めているのですが、自分はもう圧倒的に4が好きでして、さらにその中でもグンバツに好きなキャラが存在します。そう、吉良吉影という男です。
(といっても彼自身ジョジョの中でも屈指の人気を誇りおそらくラスボスの中ではDIOに次ぐ人気と知名度?くらいだと思うので別にもったいぶる必要も何もないのですが)

初めて読んだ時の衝撃、そこから年齢を重ねるごとに彼の魅力、そして週刊少年ジャンプでこの屈指のヴィランを生み出した荒木飛呂彦の天才っぷりへの尊敬は増すばかりです。もう我慢ならんので、noteに番外編として書き殴ります。

①:世界征服も強さも望まないラスボス


「激しい「喜び」はいらない…そのかわり深い「絶望」もない…「植物の心」のような人生を…そんな「平穏な生活」こそわたしの目標だったのに…。」

不老不死を望む宇宙の帝王フリーザ、政府転覆を目論む志々雄真実、強さを求めた戸愚呂弟。ジャンプのヴィランは明確で強大な野心をもち、弱きものを蹂躙する、というのがほぼ鉄則です。もしくはトラウマを抱えて、そのために悪に走ったとかそういう類。

が、この吉良吉影。引用したセリフの通りまったくもってそんなもの望んでません。ただただストレスのない生活を望んでいる、後述の異常性癖以外はいたって普通の男です。あろうことか会社員として毎日しっかり仕事にも通っており、大会や表彰はあえて3-4位に収めるなど、目立たないために心血を注いでいます。(あのドクロのネクタイは十分目立ってんじゃねえかとか突っ込んではいけない) なお、実は幼少のころに母親から過干渉的な虐待を受けておりそれが異常性癖の引き金になったという裏設定はあるようです。

これは衝撃でしたね。第4部自体が今までとは雰囲気が変わり、一つの狭い町と短い期間を舞台としていたのですが、それの集大成ともいえる「どこにでもいそうな平凡で、でも明らかにブッ狂ってる男」がラスボスというクールさに、本当にこの作品にのめりこみました。そしてのめりこむ理由はまだまだ続きます。

②:静かに狂っている異常性癖の数々


私は人をこ〇さずにはいられないという「サガ」を背負ってはいるが、「幸福に生きてみせるぞ…」

彼が第4部のラスボスにして屈指のヴィランである理由。それは彼の「殺人衝動」という異常性癖によるものです。しかもただ殺すのではなく、犠牲者の手をガールフレンドとして持ち歩く。そしてその殺人衝動が抑えられなくなるのは爪の伸び具合で判断される。(切った爪はすべて瓶詰にして保管している)手フェチになったきっかけは幼少のころにモナ・リザの絵画の手をみて勃起したことから。とまあこれでもかというくらいのド変態っぷり。これを描いているときの荒木氏、絶対何かのゾーンに入ってたというか楽しくてたまらなかったと思う。こんなキャラ出来たら。

殺人衝動はさることながら、他にも彼の異常性癖は随所に現れてまして。すぐに倒せるはずだった康一の靴下がちゃんとはけてないことが気になって直したり、毎日の型にはまったようなルーチンの生活っぷり、などなど、異常なまでの完璧主義が特徴的です。荒木飛呂彦氏、古今東西のシリアルキラーを研究していたらしく、それらから特徴を積み重ねていったようですね。これまた余談ですが、漫画家でシリアルキラーに造詣が深く自身のキャラ(当たり前ですが大概はヴィラン)に取り入れている人は多いのですが、氏のそれは群を抜いていると断言できます。それらの解像度の高さが吉良吉影という魅力的なヴィランを生み、かつ本当にそこら辺にいるかもしれないという背筋の冷たさを生んだんでしょう。

③:作中最強候補スタンドの一つ。キラー・クイーン。


「「勝ち負け」にこだわったり頭を抱えるような「トラブル」とか、夜も眠れないといった「敵」を作らない。
…というのが私の社会に対する信条であり、それが自分の幸福だということを知っている。
もっとも戦ったとしても私は誰にも負けんがね。」

『ジョジョの奇妙な冒険』3部以降を象徴するようになった超能力:スタンド。その最強議論はまあ夜を徹してしてしまうほど楽しいものなのですが、その中でも常に上位に食い込むのがこの吉良吉影のスタンド、キラー・クイーンです。「ゴールドエクスペリエンス・レクイエム」とか「爪(タスク)Act 4」のようなチート系抜いたら今でも最強なんじゃないか?と自分は信じてます。

まず何よりこのスタンド、成長するんですよね。ジョジョ第4部というのは本当に変わった作風で、主人公であるはずの東方仗助のスタンドはずっと変わらないのに、再度主人公の広瀬康一とラスボスの吉良吉影のスタンドは作中を通して進化し続けていく。具体的にどんな進化をたどるかというと、

通常 キラー・クイーン:爆発能力
キラー・クイーン+第2の爆弾 シアーハートアタック:爆発能力+遠隔攻撃
キラー・クイーン+第3の爆弾 バイツァ・ダスト(負けて死ね):爆発能力+時間操作

と、ただのキラー・クイーン第1の爆弾だけでも強力なのですが、回を追うごとに新たな能力に目覚め、最終決戦ではジョジョラスボスの王道たる時間操作能力に加え、さらに厄介な「猫草」まで味方に引き入れて単身主人公パーティー相手に立ちはだかります。そしてもう、いちいち敵スタンドの造形も名称も能力も全部格好いい。超クール。無理。ちなみに余談ですが自QUEENでは"Another one Bite the Dust" が一番好きです。

④:単身戦い続ける強さ&容赦なしに増える犠牲


「追いつめられた時」こそ・・冷静に物事に対処し『チャンス』をものにするのだ・・・この吉良吉影 いつだってそうやって来たのだ・・・今まで乗り越えられなかった物事(トラブル)など・・一度だってないのだ!

週刊少年ジャンプの敵キャラ大多数に言えることに、「カリスマ的な資質で仲間や部下を従えている」「ボスと戦う前にまず幹部戦を行う必要がある」というのがあります。が、この吉良吉影、前述のとおりなんの野望もなければ基本的にだれも信用していないので、仲間といえる存在がいません。(なんかピンクフロイドの某曲みたいな名前をした変なオヤジがまとわりついてますが)

主人公グループは空条承太郎や岸部露伴といった強キャラがわらわらいるのに対して、吉良吉影は単身で戦い続け、しかも重ちーや辻彩といったネームドキャラを次々に〇害し続け、康一を〇害一歩手前まで追い詰めいたぶり、全くの別人になってまで逃走を続け、最後の最後まで最強のヴィランとして君臨します。しかも前述のとおりに能力は強化を続けながら。なんだこいつ怖すぎんだろ。

『るろうに剣心』で和月が「雪白縁は本当は単身剣心を追い詰めるターミネーターのようなキャラにしたかったが、志々雄の劣化版になっちまった」と嘆いていましたが、まさにこの吉良吉影がそれだったのではないでしょうか。といっても吉良は追いかけてくるではなく逃げ続ける、なのですけど。


まだまだ吉良吉影の魅力は書き足りないのですが、これ本当に終わらないのでこの辺りで終わらせます。最後に一つ、そんな吉良ですが、最期のシーンも週刊少年ジャンプラスボスのやられ様史上1.2 を争うクールさです。第4部は荒木氏自体が気に入っている、と言っていた通り全編にわたってS.キングのようなモダンホラー味が漂っているのですが、特にこの吉良吉影にまつわる一連のシークエンスは素晴らしい。(つか普通にちょっと怖い

にしても中二病こじらせてた頃は(つかこいつらのせいで中二病になったともいえる)、いや殺人衝動という性癖を持ってたらそれもうどうしようもないのでは、吉良に問題があるのではなくそれの矯正の手段のない社会に問題があるのでは云々とか何とか考えてましたが、家庭が出来、子供を持つ身になると、いやそんな性癖知らんがな頼むから世に出てこないでくれとしか思わなくなりますね。

仗助 「おめーが「重ちー」を殺したから 追ってんだろーが このボケッ!」
億泰「殺人が趣味のブタ野郎が てめーの都合だけしゃべくってんじゃねぇーぞ このタコがッ!」

その通りである。


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