蜘蛛の友だち
虫が苦手。
特に、ツヤツヤしていて、コテコテあるく虫…
でも、友だちの虫もいる。
足が8本あって、目がきゅるきゅるしてて、ダニとかを食べてくれるいいやつ。
そう、蜘蛛です。🕷️
蜘蛛が友だちになった瞬間をはっきりとは覚えてないけれど、家に蜘蛛が出るたびに怯えていた幼き頃のわたしに、「蜘蛛は他の虫を食べてくれるから大丈夫だよ」と両親は教えてくれた。
(注 : 友だちになれる蜘蛛と、なれない蜘蛛がいることに注意。家に出る蜘蛛はだいたい大丈夫だけど、大きくて縞々なやつとか、背中が赤いやつは、普通の人間ではなかなか友好関係を築くのは難しい。)
蜘蛛との大事な思い出がいくつかある。
中学生の体育の授業のある日。ドッチボールだったかバトミントンだったか、はたまた縄跳びだったか。場所は体育館だった。
ふと前を見ると、小さい黒い点が浮いていた。
よくよく見ると、点の上にきらりと糸が光っていた。蜘蛛だ!
体育館の高い高い天井からここまで降りてきたんだろうか……ほんの1ミリもなさそうな小さい蜘蛛なのに、すごいなあと思った。
感動してぼーっと見ていたら、その子は床まで降りて、そのままどこかに行った。
高校生の定期テストのある日。数学だったか国語だったか、はたまた倫理だったか。
せっせと問題を解き、解答用紙に答えをうつしていたとき、髪の先からツー…と何かが降りてきた。蜘蛛だ!
え、今までわたしの頭の上にいたのか!?と慌てそうになるのをこらえ、今はテスト中ですから、静かに退場してもらいましょうとシャープペンで糸を切って、机の上に下ろしてあげた。
その子はこっちをちらりとも見ずに、そのまま机の端まで歩き、わたしの視界から消えていった。
時は過ぎ、2024年9月下旬。すっかり秋が来てるね。
夜には、コオロギ?鈴虫? 秋の虫たちが鳴いている。姿を見せなければ、声は好きな子たち。おそらく見た目はこわい。
歌う虫たちの他にも、気温が下がって生き物が生きやすい季節になったからか、身の回りに虫が増えた気がする。
そんな秋の日、六畳半間の家の中に、わたしと1匹が暮らしています。黒くて小さい目がきゅるきゅるの蜘蛛。
その子の名前はたぶん、アダンソンハエトリ。おそらくね。
その子は最初は壁にしかいなかったのに、一緒にいる時間を重ねるにつれ、ベッドやソファの上も歩くようになった。人間に慣れてきたんだろうか。たまにわたしがご飯を食べながらYouTubeを見ている時、iPadの上をとことこ歩いていたりする。蜘蛛が苦手な人からしたら発狂するレベルの距離の近さ。
それでも、さすがにわたしの体に登ってきたりはしない。ほどよい距離感を保ってくれるのは助かります。どうかそのままでいてね。蜘蛛は好きだけど、触るのはちょっとこわいから……
蜘蛛の寿命はどれくらいなんだろう。家の中のハエやダニがいなくなって、食糧がなくなったら死んでしまうんだろうか。その前にこっそりと外に出て、わたしの知らないところで眠ってほしいなと思う。
冬が来たら、わたしはまたひとりぐらしに戻る気がしている。そうなったら、小さな友だちのことを想いながら、スタバのホワイトホットチョコレートを飲もう。そうしよう。