
【旅blog】ベトナム統一鉄道の旅 4
◾️8月12日(3日目)
朝8時頃に目覚める。今夜ついに私は寝台列車で北上を始めるのだ、そう考えると服を着替えながらとてもワクワクした。
電車は夕方の18時に出発する。
午前中は、昨夜社長から朝食のお誘いがあった為、社長の泊まっているホテルへ向かった。
ホテルに到着するとさすが社長、そこはホーチミンの中でも高級なホテルだった。
ボーイも私の宿泊するホテルとは違う。エントランスの椅子に座って雑談をしながら暇を持て余しているということはなく、背筋を正して受付と正面口に1人ずつ立っていた。
社長がエントランスから出てきて言う。
「おはよう。行こうか。」
昨夜ナンパして焦っていた男が、
格好をつけていて少しだけ腹が立った。
私はそんな気持ちを抑え、
社長とフォーを食べることにした。
社長は自分の昔話を聞かせてくれたが、あまり楽しくなかった。
そして、社長は私にいろいろと質問をした。
どんな仕事をしているか。
どうしてベトナムに来たのか。
将来どうなりたいのか。
私がその年に転職をしたことを告げると、
社長は言う。
「君には軸がない。一生転職を繰り返すぞ。」
正直ムカついてしまった。
なぜベトナムに来てまで
諭されなければならないのか。
若気の至りなのか、私は帰国後に約束していた別荘でのバカンスをお断りして、社長とは別れた。
心をすぐに閉ざしてしまうのは
私の悪い癖だなと今でも思います。
ちなみにベトナムから帰国して、飛行機で出会った女性に借金を返す為に新宿で会ったのだが、その時に聞いた話がある。
午前中に私と別れた後に社長は女性に連絡し、「帰国後のバカンスがなくなった。代わりと言っちゃなんだけど、ホーチミン付近にオススメのリゾート地があるから明日2人で行かないか?」と誘ったというのだ。
翌日、女性は疑うこともなく社長とリゾート地へ出掛け、そこで襲われそうになった。
漫画であれば、私はヒーローとしてその場に登場し、悪役の社長を成敗するというベタなシナリオを書くだろう。
そして女性と私は結ばれてハッピーエンドとなるのだ。
しかし、現実はそうもいかない。なぜなら、その頃、私はベトナム統一鉄道に揺られ北上しているのだから。
■■■■■■■■■
話は社長と別れた直後に戻る。
電車の出発時刻までは、ご存知の通りお金もない為、ひたすらあてもなくホーチミンの街を歩いた気がする。
観光地という観光地は巡ってしまった為、もうこの街には何もない。そして、何も起こらない。気持ちはすでに次の町フエに向かっていたのです。
何事においてもそうなのだが、興味を失った瞬間、そこからの広がりはないと思う。
”興味がある”からこそ、面白いことが起きるのだ。
やっと寝台列車の出発時刻になり、
私はサイゴン駅に辿り着いた。
駅には当たり前だが、ベトナム人ばかり。
ホームへ出ると青い列車、ベトナム統一鉄道が既にスタンバイしていた。
乗車すると、通路の片側に部屋があり、
もう片方は一面窓になっていた。
部屋に入ると、正面は窓になっており、
両側に2段ベッドのある4人部屋だった。
私のベッドは部屋に入って右側の下段。私以外のベッドはベトナム人の家族で埋まっていた。
お母さんが私の上。
お父さんがもう片方のベッドの上。
その下は10代くらいの娘。
お母さんの体が大きく上の段に登りづらそうだったので場所を代わりますか?と聞いたが、頑張って登るとのことであった。
娘は私に興味を持ったようで
笑顔で話し掛けてくれた。
「Where are you from?」
「From JAPAN. Are you student??」
「Yes, I'm university student.」
「What's your major?」
「Business administration.」
こんな教科書のような会話がしばらく続いて、話題に困ってきた頃に私は日本から持ってきた「ハイチュウ」を配った。
家族みんなが笑顔で受け取ってくれる。
そうするうちに、ゆっくりと窓の外の景色は動きだしていた。
ついに私は北上するのだ。
つづく
#エッセイ #ブログ #旅ブログ #旅 #旅行 #ひとり旅 #一人旅 #アラサー #寝台列車 #ベトナム #ホーチミン #フエ #ハノイ
いいなと思ったら応援しよう!
