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【旅blog】ベトナム統一鉄道の旅 5
ひと段落して、私は窓の外を眺めた。
陽は沈んでいた為、たまに民家の明かりがポツポツと通り過ぎて行くだけで、それ以外は真っ暗だった。
英語が堪能でないことからベトナム人ファミリーとの会話はすでに終わっており、暇を持て余した私は、ベトナムに来たら聴こうと思っていたLouis Armstrongの「What a wonderful world」を聴くことにした。
イヤホンから音楽を流して私は思う。あれ?この曲、今の状況に全く合わねぇぞ。ロビンウィリアムズ主演の映画「グッドモーニングベトナム」ではこれ以上ないくらいにマッチしていたのに。
寝台列車に揺られてこの音楽を聴くってのは、結構楽しみにしてたのにな。私の旅に合う音楽は一体何なんだろう?
そんなことを考えていると、次第に眠気に襲われて、私は眠り込んでいた。
♪♪♪
I see trees of green,
Red roses too.
I see them bloom,
For me and you.
And I think to myself,
What a wonderful world.
…………
■8月13日(4日目)
ガタンゴトン…ガタンゴトン…
目を覚ますと、いつの間にか同室のベトナム人ファミリーはベトナム人老夫婦に代わっていた。
※老夫婦を加工したら少しホラーになってしまったが、ご愛嬌
老夫婦は向かいのベッドの上下を使っていて、私のベッドの上段は空になっていた。
窓の外を見ると…
子供がいたり、
大人がいたり、
電車は山肌に沿って走っていた。
車内に視線を戻すと、老夫婦はりんごを剥いていて、私にもすすめてくれた。他にもジュースをくれたり
謎の実をくれたりした。
そしてたまに窓の外を指さして
何かを教えてくれる。
指の先に目をやるとベトナムと日本の友好が
デザインされた電車があった。
どうやら私の旅をした年は「ベトナムと日本の外交関係樹立40周年記念」の年であったようだ。
素晴らしい年にベトナムへ来たものだ、と窓の外から車内のおじいさんの方へ顔を戻すと、前歯の抜けた温かい笑顔で迎えてくれて私も自然と笑顔になった。
統一鉄道に乗るまでは、入国後の様々な体験で
ベトナム人を疑いの目で見ていたが、私はそれを恥じた。
”人は、信じることから始めるべきだ。”
その後も老夫婦は私に様々なことを
教えてくれたが、英語ではない為、
全く理解できなかった。
それでも、老夫婦は一生懸命私に伝えようとしてくれる。そうするうちに心は満たされていて何だかとても幸せな時を過ごした気がしたのだった。
英語が堪能じゃないからベトナム人ファミリーとの会話が途絶えてしまったなんて、ただの言い訳でしかないと思えた。
自分から積極的に関わろうとしてないだけだったのだ。言語が全てじゃない。
いつの間にか統一鉄道は山道から
小さな町に入っていた。
そう、この小さな町が古都フエだった。
そしてこの町に、あの男はいたんだ。
つづく…
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