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【旅blog】屋久島トレッキング 3
8月15日_2日目
早朝4時起床。
テルさんは先に起きていて、登山の支度をしていた。私も小型のリュックにレインウェアやカロリーメイト、デジイチ等を詰め込み、トレッキングシューズを履いて紐をきつく絞める。
テルさんは2日かけて淀川登山口→宮之浦岳→山中泊→縄文杉→荒川登山口に下山する予定で、淀川登山口まではタクシーを利用するとのことだった。
私は日帰りで荒川登山口→縄文杉→荒川登山口へ下山の予定でバス停に向かう。
宿の玄関でテルさんが言う。
「昨日は美味しい酒が飲めたよ」
「こちらこそ、ご馳走様でした。」
実は夜ご飯おごってもらっていたんです。
「良い旅を。」
そう言ってふたりは連絡先を交換することもなく、太陽も昇っていない暗い町で分かれた。
バス停に向かう途中、お弁当屋に立ち寄り朝と昼の分のお弁当を受け取った。
バス停には誰もいなかった。
この島、本当に登山する人いるの?
というか、観光客いるの?
私は屋久島人気を心から疑った。
到着した路線バスに乗りこみ、登山バスの出発地である屋久杉自然館に向かう。
その間に何人か登山客が乗り込んできて私はほっとした。
5時半頃に屋久杉自然館に到着するとたくさんの人がいたのでさらに安心した。
しかし、みんなどこにいたのだ。。。
ここから専用バスに乗り換えるのだが、バス待ちの人が多くてすぐには順番が来ないだろうと思い、早速お弁当のひとつを食べることにした。
こういう場所で食べる飯は美味い。意外と早く順番が来て最後はかき込んで食べた。
6時15分頃に荒川登山口に到着。
周りではガイドさんの指示に従ってファミリーやカップルが準備運動をしていた。私は予算の問題からガイドを雇っていない為、一人で準備運動をした。
6時半、登山開始。
しばらくトロッコ道が続く。
かなり歩きづらいです。
横は崖です。
このトロッコ道は2時間半くらい続くので精神的にかなりキツイです。しかも縄文杉に向かうコースには"もののけ姫"に出てくるような苔で覆われた神秘的な森は存在しない。それは白谷雲水峡という観光地にあるのです。
橋があったり
下を眺めれば石が転がっている。
つまらん。なんてつまらんのだ。
気を紛らわすためにデジイチを構える。
やっと道に変化があったと思ったら急に険しい登りコースになります。
鬼のようなコース。。。
そう嘆いていると…
苔が少しある。
ちょっとだけワクワクしてきました。
何やらスポット的なものも近い様子。
そう、ウィルソン株です。
中に入る
ほこらがある。
上を見上げれば有名なハートが見えるのだが、有名すぎて馬鹿らしい、写真なんて撮るものかと思っていたが、皆が撮っているのを見ると…
撮ってしまいました。
ウィルソン株の写真を撮っていると一人で登っている女性が写真を撮ってくださいと話しかけてきた。快く承諾。株の前で女性の写真を撮り、私は先を急ぐことにした。
そろそろ登山開始から3時間が経過する。汗が滴り、体力的にもきつくなってきた頃に湧き水を発見した。湧き水を両手ですくい、顔に浴びせる。それだけで体力はかなり回復した。
すると後ろから先ほどの女性がやってきて言う。
「あ、湧き水ですか!」
「気持ち良いですよ」
私の水浴びを待ってから女性も水を浴びる。そして、こちらを振り返って一言。
「これ、飲めるんですかね?」
「いやぁ、わかんないっすねー」
私はちょっと疲れていた為、適当な返事をして、その場を立ち去った。こういうところで性格の悪さというものは出るのだ。
後ろから女性の声が聞こえる。
「この水って飲めるんですか?」
あとから来た誰かに聞いているようだ。
「飲めますよ。」
飲めるのか。くそう。飲んでおけば良かった。戻るのも恥ずかしくて私はそのまま進むことにした。
登山開始から4時間経過した午前10時半。ついにたどり着きました。
階段を上った
その先に屋久島最大の屋久杉、
縄文杉はあった。
おおー。
…でも、あれ?遠くない?
これ以上近くまで行けない。
10mくらい離れた高台の上からしか眺めることができず、縄文杉の周りに木が生い茂っていることから全体像がつかめない。私はこの為に往復10時間と言われる登山をしていたのか。
私は少しガッカリしていた。そんなガッカリしている私の後ろから聞き覚えのある声がした。
「あっ、私のカメラマーン!」
先ほどの女性だ。
この明るい声に私は救われた気がした。ガッカリしていた気持ちも吹き飛びこう言った。
「はいはい、カメラ貸して下さい。撮りますよー♪」
カシャ。
それからしばらく縄文杉を眺めていると女性が他の観光客から写真撮影のお願いをされているのが見えた。女性と目が合うとこちらに寄ってきて言う。
「彼の方がセンスいいから撮ってもらうといいですよ!」
「お、おい!」
そんなこんなで翻弄されつつ私は縄文杉を後にすることにした。
少し開けたスペースで他の登山客に紛れて昼のお弁当を食べていると先ほどの女性が下山していくのが見えた。
活発な女性だ。そう思いながらおにぎりを頬張るのでした。
帰り道はつらかった。疲れからなのか暑さからなのか少し頭痛がしていた。上りの時に見つけた湧き水スポットに着くと早速頭に水を浴びて痛みを和らげるよう努める。
持参していたポカリスエットも底がついていた為、「飲めますよ」の言葉を信じて湧き水をくむことにした。
記録に残すため、撮影はやめなかった。
湧き水をくむと乾いていた喉を潤すために勢いよく胃にそそぎこむ。これが間違いだった。下山を続けているとどうも腹部に違和感を感じるのだ。もしかして湧き水があたったのか、いや、冷たい水を急に飲んだからなのか。
お腹が痛い。頭も痛い。
登山道に誰もいないのを確認してから
「あああああぁぁぁあぁあぁ!」
と叫んだ。確認してしまうところが情けない。
トロッコ道は悪夢だった。いつまで続くのだ。ふらつきながら下山を続ける。
なんだよ、これ。こんなん旅じゃない。これまでベトナム、八重山諸島、台湾と旅をしたはずなのに今回はなんだ、ただの一人登山じゃないか。夏休みに何でこんなつらい思いをしているんだ。
知らない土地をあてもなくふらついて、メシ食って、クソをしてダラダラと過ごすのが私の好きな旅なのだ。屋久島を選んだのは間違いだったのか。
いろんな思いが脳裏をよぎる。
意識もうろうとして荒川登山口に着いた時はほっとした。そして、その場に倒れこんだ。本来10時間のところを休憩をせずに登った為、8時間でゴールした。無理したのがよくなかった。
時刻は14時半。
頭痛と腹痛を抱え、16時頃に私は宿に戻った。
身体が熱い。
死ぬ。。。
1階でペットボトルの水を3本買い、ベッドに倒れ込み、首の下と両脇の下に冷たいペットボトルを設置した。
熱い熱い熱い。
痛い痛い痛い。
意識は遠のき、いつの間にか眠っていた。
…………………………
「ただいまー。」
何やら声が聞こえた気がする。
ベッドから起き上がると今朝分かれたはずのテルさんがいた。
腹痛はおさまっており、少しの頭痛を抱えながら聞く。
「え?縦走するんじゃなかったの?」
「いやぁ、1日で縦走できてしまって、またここに来ればあなたがいると思いましたので戻ってきました。」
なんという体力。
「体調悪いんですか?」
「頭が痛くて…」
私は寝汗でびしょびしょになっていることに気付きシャワーを浴びることにした。
「夕飯は食べましたか?」
テルさんが私に聞く。
「あまり食欲がないです。」
「残念。」
しかし、せっかくの旅、私はテルさんとともに食事に行くことにした。
また川沿いまで歩き、今度は"やしま"の対岸にある"散歩亭"にした。
この頃には頭痛もひき、体調は回復していた。
散歩亭は初日に車に乗せて屋久どんに連れて行ってくれたオーナーの店だ。店に入るとオーナーがいたので挨拶とお礼をした。
「あっ、あの時の君か。昨日と雰囲気が全然違うな。」
初日はハット帽にサングラスをはめていたが、今は寝起きのぼさぼさ頭に青白い顔。そりゃそうか。
2階席を薦められ、階段を上ると女性2人組がテーブルに座っていて、片方が私に会釈をした。なぜかわからないが私も会釈をして隣のテーブル席についた。
テルさんが私に聞く。
「明日はどこへ行くんですか?」
「白谷雲水峡ですね。」
するとテルさんはは2日間で予定していた宮之浦岳と縄文杉の縦走が1日で終わり、時間が空いてしまった為、ついていってもよいかと尋ねてくる。私には断る理由もなく、翌日は一緒に行動することに決めた。
そして、会釈の女性と何度か目が合った為、話しかけることにした。旅先では積極的になるクソ野郎の習性です。
「お疲れ様です。今日は何処へ行かれたんですか?」
「お疲れ様です。縄文杉みてきました。」
「大変だったでしょう。」
「はい、友達なんてもうぐったりですから」
片方の子はテーブルに顔を突っ伏していた。
「いつ屋久島に着いたんですか?」
「昨日です。」
「一緒ですね。」
「え!?地元の人じゃないんですか?あはは」
体調の悪い風貌がとても観光客に見えなかったのか、ずっと地元の人だと思われていたようだ。
その後、テルさんと二人の帰り道、川に架かる橋でおばあさんとおじいさんが4人で談笑していた。おばあさんは笑顔で私たちに「こんばんは」と言う。
私たちは「こんばんは」と返し、気持ちの良い屋久島の夜風を感じながら宿へと戻っていった。
つづく…
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