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半径3メートルの世界を、やさしい言葉で書きたいのかもしれない。

「書類の文章とずいぶん印象が違いますね~」

私の履歴書と課題作文を眺めながら、誰かが言った。不意に思い出した就職活動中のワンシーンだ。印刷会社、介護施設の会社、スーパーマーケットの会社、刷毛の会社……おぼろげな記憶を辿り、面接を受けたいくつかの会社を思い浮かべてみる。けど、どこの会社で、何回目の面接で、どんな面接官に言われたかは覚えていない。スーパーマーケットはちがうと思う。

「文章だけだと、堅い、ちょっと怖い感じの方かなって思っていました。お話すると、結構明るいっていうか」

ニュアンスは少し違うかもしれないけれど、そんなことを言われた。文章と、話したときの私にギャップを感じたという。今思い返してみると、それ本人に言っちゃう? とも思うし、じわじわとショックにおそわれる。遅効性の毒のようだった。

堅くて、ちょっと怖いと感じさせる文章。多分当時の課題作文は、「だ・である調」で、簡潔に短く言い切る文章スタイル(今とあまり変わっていない気も……)で書いたと思う。イメージとしては論文調というか。もちろん書いた題材の影響もあるだろうし、そのスタイルが悪いなんて思わない。けど「これを書いたのはどんな人だろう」と読んだ人が考えたときに、そんなふうに思わせてしまうのは、いやだなあ。特にこのnoteは、「私」を出さずにはいられないから、気をつけたいことだ。

目指すなら、やさしい文章を書きたい。「やさしい」とは、「優しい」であり「易しい」でもある。やさしい言葉、文章とは、きっと誠実さや真摯さを孕んだもので、それをかたち作るために、丁寧さやわかりやすさが必要になるんだと思う。

やさしい言葉、文章を書く人で思い浮かぶ人が何人かいる。そして私はその全員にもれなく、つよく焦がれている。そういうことじゃないかと思う、私が目指したいものは。

そして、やさしい言葉で、なにを届けるのか。ふと、『女の園の星』や『カラオケ行こ!』などで知られる漫画家・和山やま先生のインタビュー記事を思い出した。現在連載中のコメディ漫画『女の園の星』を描くうえで、どう世界観を構築したのかなど、先生のスタンスや作品づくりにスポットを当てている記事だ。改めて読んで、ハッと思い出したのは以下の部分。

和山 「半径5メートル以内のことは描くな」というアドバイスを別の担当編集さんから受けたこともあり、「もうちょっと自分のスケールを広げなきゃ」ともがいていた時期もあったんですけど、全然描けなかったんです。そんな時、バカリズムさんの『架空OL日記』というドラマを見て、主人公の半径3メートル以内の日常を面白く切り取っているのがすごく刺さりました。

半径3メートル以内の日常。ギャグ、コメディを描く上で、先生はこんなふうに答えているけれど、私はギャグやコメディを書くことは多分ない。書くとしたら、やさしい文章で、半径3メートルの日常を書くことを目指したい。これは物理的な距離じゃなくて、心の距離のことなんだと思う。「こんなことがあったよ」「こんなふうに思ったよ」。そんなふうに語りかけたい。

少なくともこのnoteはそんな場所であっても良いかなあ、なんてことを、じわじわじわ考えた。

ここ(note)は、自分のために書くと決めてはじめた。けど。私の半径3メートルの世界を、やさしく言葉にして届ける。それができるようになったら、たぶんめちゃくちゃ楽しくて、最高なことなんじゃないかな。

(書いていたら、なんだか小さな所信表明みたいになった)

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のん
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