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氷が残っている
目標の電車が過ぎ去ったあとにホームに辿り着いた。青い椅子が5脚、横並びになっていた。両端の椅子にはすでに先客がいたので、その間、3番目に座る。
どっと汗は出ず、じんわりと全身が汗ばんでいく。風通しが良いとはいえ、長袖の服を選んでしまったことを後悔した。
鞄から麦茶の入ったボトルを取り出すと、まだ複数の氷が形を保ったまま、上の方でひしめき合いながら、ぷかぷかと浮かんでいるのが見えた。
ボトルに麦茶を入れてくれたのは彼だった。いつもわたしが入れると大抵駅に着く頃にはほとんどの氷が溶けているどころか、跡形もないことが多い。
このときになって初めて、自分が少なめに氷を入れていたことに気づいた。もっと入れれば良いのか。これからの時期、重大なことに気づけた。
この日の朝、彼とケンカをした。発端のできごとから互いに頭を下げるまで、おそらく15分にも満たなかったと思う。それでもその間の空気はとてもぎこちなく、重かった。
きっかけは側から見れば些細なことだったけれど、自分は、彼なら何を言っても許され、受け止めてくれるという強力な思い込みと甘えがあったことに気づき、内心かなり凹んだ。
麦茶を飲むと、瞬間的に喉から体が冷えていく。互いに頭を下げなければ、こうしてホームで氷が残ったままの麦茶はきっと飲めなかった。
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