アメリカン・ミュージック・ヒストリー第10章(1990年代全般・・・その3)
(3)カントリー&ブルーグラス新世代
90年代に入ると、カントリー音楽界の最大のスター、ガース・ブルックスが全国メディアの注目を集めました。アメリカ国内だけで1億枚以上を売り上げたアーティストは、過去に4組(エルヴィス・プレスリー、ビートルズ、レッド・ツェッペリン、イーグルス)しかいませんが、この4組に比べれば、世界的にはそれほど有名ではなく、アメリカならではのこととは言え、カントリー歌手が、5組目の1億枚越えアーティストとして君臨したのは驚きでした。
又、奥さんのトリーシャ・イヤウッドも70年代のリンダ・ロンシュタットを彷彿とさせるサウンドと抜群の歌唱力で大成功しました。個人的にも、「SONGBOOK」と言うアルバムをきっかけにして、かなり聴きました。この人の歌声は、本当に心が癒されます。
他、男性では、80年代から引続きジョージ・ストレイト、クリント・ブラック、トラヴィス・トラット、アラン・ジャクソン等‥
女性陣では、アメリカ世帯3世帯に1世帯はCDを持っているといわれたシャナイア・トゥエイン。特にサードアルバムの「Come On Over」は、全世界で4000万枚以上の売り上げを記録しました。又、13歳でシングル「ブルー」を発表し、14才の時のカントリーの名曲カバーアルバムで天才ぶりを発揮したリアン・ライムス、そして、フィドル・バンジョー等の楽器も熟し、グラミーにも輝いた3人組ディキシー・チックスは、カントリーのみならず、すべてのジャンルの女性グループの中で最高の売り上げを枚数を記録するほど成功をおさめています。
ブルーグラス界出身のアリソン・クラウスは、ブルーグラスの枠組みを飛び越え、ソロやバンドとしてもヴォーカル&フィドラーとしてブレイクした「ユニオン・ステーション」と共に、名盤を続出し、現在では女性歌手のグラミー賞受賞回数NO1と言う快挙を成し遂げていています。このことは、男性社会だったブルーグラス界に女性アーティストが、どんどん進出するようになった先駆けとしても重要な役割を果たしました。
因みに、1989年からグラミー賞の部門賞に「最優秀ブルーグラス・アルバム賞」(最初の3年間は、ベスト・ブルーグラス・レコーディング賞)が設けられました。
90年代ブルーグラスを牽引したのは、アリソン・クラウス(ユニオン・ステーション)や、同じく女性では、バンジョープレイヤーのアリソン・ブラウン、本格的に成功を収めるのは2000年以降ですが「ブルーグラスの女王」と呼ばれているロンダ・ヴィンセントも頭角を現してきます。
そして、80年代にカントリーに転出して大成功を収めたリッキー・スキャッグスも自らのバンド、「ケンタッキー・サンダー」を率いてブルーグラスに戻ってきて大活躍。他にもナッシュビル・ブルーグラス・バンドや、ロンサム・リヴァー・バンド等。
超ベテラン組では、ビル・モンローは、1996年に亡くなったもののラルフ・スタンレーやアール・スクラッグス、オズボーン・ブラザース、ジム&ジェッシーは、健在。
70年代、80年代に引続き活躍のニュー・グラス・リヴァイヴァル、JD・クロウ&ニューサウス、トニー・ライス、ジェリー・ダグラス、ベラ・フレック、セルダム・シーン、デヴィッド・グリスマン、デル・マクーリー・バンド、ピーター・ローワン、ディラーズ、ホット・ライズ等も元気でした。
* 女性カントリー系新世代
今まで触れたアーティストの他にも、新世代としての90年代カントリー系(広義の意味で)アーティストについて、(ちょっとしたマイブームとなっているので)もう少し紹介していきたいと思います。
まず、王道カントリー系のパティ・ラブレス。80年代後半以降から活躍していますが、2000年以降は、ブルーグラス系アルバムの「マウンテン・ソウル」「マウンテン・ソウル2」を発表し、最優秀ブルーグラス・アルバム賞にも輝きました。
フォーク系カントリーでNO.1アルバムにもなった、メアリー・チェイピン・カーペンター。NO1.以降はフォーク要素が強くなっているようですが。
渋いところでは、シンガー・ソング・ライター系の、キム・リッチー。1枚目をタワレコで試聴して気に入り、2枚目も愛聴盤となっています。3枚目からはイギリス色が強くなりましたが、最近では、又アメリカーナに回帰してきた感があります。