アメリカン・ミュージック・ヒストリー第8章(1970年代全般・・・その9)
(11)アウトロウ・カントリー&ポップ・カントリー
60年代のナッシュビル・サウンド中心のカントリーと距離を置き、テキサスを中心にしてホンキートンク・カントリー、フォーク、ブルース、R&B、スワンプ・ロック等のルーツ系音楽を取り入れ、骨太なメッセージ性を持ったアウトロウ・カントリー(レッドネック・カントリー)が、注目されました。
具体的にざっと名前を挙げてみると、ウイリー・ネルソン、ウェイロン・ジェニングス、ジョン・プライン、タウンズ・ヴァン・ザント、ビリー・ジョー・シェーバー、ハンク・ウィリアムス・ジュニア、ジェリー・ジェフ・ウォーカー、クリス・クリストファーソン、ガイ・クラーク、マイケル・マーフィー、そしてジョニー・キャッシュ。女性では、ジェッシ・コルダー、タニア・タッカー、ロザンヌ・キャッシュ等により広がっていきました。
1976年のウェイロン・ジェニングスと妻のジェッシ・コルダー、ウイリー・ネルソン等のアルバム「アウトロウズ」がカントリーで初めて100万枚を超える大ヒットとなったことで、アナザーカントリーとしての地位を確立していきました。
一方、カントリーフレイバー溢れるポップ・カントリーも人気となり、グレン・キャンベル、リンダ・ロンシュタット、ジョン・デンヴァー、カナダからアン・マレー、イギリスからは、オリヴィア・ニュートン・ジョン等がヒットを続出しました。
(12)ニュー・グラス&ニュー・トラディッション
ブルーグラス・ミュージックは、1950年前半にビル・モンロー、フラット&スクラッグス、スタンレー・ブラザース、ダン&リーノウ、オズボーン・ブラザース、ジム&ジェッシー等の第1世代により最初の黄金期を迎えましたが、ロカビリーブームになると陰りが見えてきました。
しかしながら60年代に入るとフォーク・リバイバルブーム等で認められ
再ブレイクし、学生や若者による都会型のブルーグラス・バンド(シティ・グラスやモダン・ブルーグラス)が出現してきます。
東海岸からは、グリーン・ブライヤー・ボーイズ、チャールズ・リヴァー・ヴァレー・ボーイズ、カントリー・ジェントルメン、西海岸からは、ディラーズ、ケンタッキー・カーネルズ、ヒルメンといったグループが活躍しました。
そして70年代になると、ブルーグラスも多様化し、伝統的でソリッドなブルーグラスにロック世代が、ジャズやロックの要素を取り入れたニュー・グラスや第1世代のトラッドなブルーグラスを継承しながらも第2世代と言われた若い感性を生かした、ニュー・トラディッションと呼ばれたブルーグラス等も登場してきます。
JDクロウ&ニューサウス、ブーン・クリーク、ニューグラス・リヴァイヴァル、カントリー・ガゼット、セルダム・シーン、スペクトラム、カントリー・ストア、デヴィッド・グリスマン、トニー・ライスといった名バンドが一時代を築き、加えてよりロック寄りのオールド・イン・ザ・ウェイ、ミュール・スキナーといったセッションアルバムも人気を呼びました。
とは言え、70年代は、第1世代のビル・モンロー、ラルフ・スタンレー、レスター・フラット、そして息子たちと果敢にニュー・グラスに挑戦したアール・スクラッグス・レヴューやオズボーン・ブラザース等もカントリー・ロックを意識した好アルバムを発表する等、精力的に活動していましたし、又、カントリー・ジェントルメンやディラーズもまだまだ元気だったので、50年代、60年代、70年代とそれぞれのブルーグラスが楽しめる素晴らしい時代だったと言えると思います。