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【中学入試国語】読解力の鍛え方①文脈を追えるようになる方法

僕たちはなぜ文章が「読める」のか

突然ですが、次の文章を読んでみてください。


珍しく朝早くに目が覚めた。3月3日はひな祭りである。アメリカの荒野ではコンドルが空を舞っている。目に映る庭の柿はそろそろ食べごろだ。

みなさんはこの文章の意味が分かりますか?
恐らくほとんどの人が何のことか分からないはずです。
それもそのはずで、これは僕があえて文同士が繋がらないように書いた文章です。
「目が覚めたこと」「3月3日がひな祭りであること」「荒野に舞うコンドル」「庭の柿」にはそれぞれ関連性はありません。
したがって当然そこには「伝えたい意味」など存在しないわけです。

しかし皆さんは上の例文を見た時、思わず「何のことだろう?」と考えてしまいませんでしたか?
手紙でも教科書でも契約書でもいいですが、通常文章が示される場合、そこには必ず意味が存在しています。
私たちは無意識のうちにその意味を読み取ることによって、それを書いた人の意図を汲み取ろうとするわけです。

文章を読むのに必要なコンテクストとは何か?

専門的に言えば語弊があるかもしれませんが、ざっくりというとこの「どういう繋がりがあるのだろう?」と考えた部分のことをコンテクストと言います。
例えば次の3つの文を読んでみてください。

ルフィはシャンクスに助けられた。
シャンクスは海賊である。
ルフィは海賊を目指している。

この3つの文を読んだ時、頭の中に「ルフィは自分を助けてくれたシャンクスに憧れて海賊を目指した」というストーリーが思い浮かびませんでしたか?
実は上の例には「憧れて」という事は書かれていません。
しかし、「助けてもらった→その人の職業→自分も目指す」という流れを見た時に、頭の中で無意識に妥当な理由を考えているわけです。
その結果出てくるのが「憧れ」という言葉。
「憧れ」という言葉があることで、3つの別々の文にはひとつの流れが生まれます。
この流れこそがコンテクストというわけです。
文章を読む時、それが論説系の文章であっても、物語系の文章であっても、このコンテクストを捉えることが非常に重要になってきます。

コンテクストを自覚する


僕たちは日頃、日常会話やマンガやアニメ、YouTubeの動画に至るまで、当たり前のようにこのコンテクストを読み取りながら生活をしています。
というかそれができなければ社会生活は成立しません。
逆に言えばあまりに当たり前に行ってしまっているために、改めて文章に向き合ってコンテクストを理解しようとすると身構えてしまう。
これが文章を読んだ時に意味が理解できないということの原因です。
こうした状態からコンテクストを理解できるようになるには、まずは短文から、「それが意図するものは何か?」ということに自覚的になる練習をする事が重要です。

例えば次の文章は何の場面を表しているかを考えてみてください。

夕方になった。そろそろ夫と息子が帰ってくる頃だ。私は人参と玉ねぎとじゃがいもと牛肉を切って鍋に入れた。そこに水を入れてひと煮立ちさせる。具材に火が通ったら茶色いルーを投入する。鍋からはスパイスのいい香りがしてきた。私は火を止めてご飯をよそい、それをご飯にかけていく。最後のお皿の盛り付けが終わった時、玄関から「ただいま」の声が聞こえた。

どうでしょうか?
これは何の場面かと聞かれたら、恐らく「母が夕食にカレーの準備をする場面」ということが捉えられると思います。
この例文には「母」という言葉も「カレー」という言葉も出てきていませんが、そのような場面が浮かぶ。
そこには、それぞれの文を生合成を保って繋げられるためには、「母」と「カレー」という言葉が妥当であるという認識をしているわけです。
そしてこれが国語で役に立つコンテクストを読む力です。

国語が苦手な子は、こうしたコンテクストを意図的に言葉にする事に慣れていない事が少なくありません。
そのため僕の(特に低学年の)授業では、この例文のように「それはどんな場面?」或いは「これを通して何を言いたいのだろう?」ということを言葉にするパターンプラクティスを導入しているのですが、これを行うことによって、子どもたちの中に、文章に向き合う際、「まずその文は何について言おうとしているのか?」という部分に意識を向ける習慣が養えます。
これが早い段階に身についていると、抽象度が上がる5年生や6年生の授業が非常に楽になってきます。

コンテクストを追う力の身につけ方

さて、ではどうしたらこうしたコンテクストを読む力を身につけることができるのでしょうか。
小学3〜4年生くらいを想定して家庭でもできる簡単なエクササイズに落とし込むとすれば、僕は2つの文を用意して、その間を繋がる練習が効果的であるように思います。
例えば次のような題材です。

①扇風機が回っている。
( )
②赤ちゃんが泣き出した。

①と②が繋がるように間の( )に入るストーリーを作りましょう。

①と②は別に何でもいい(ふたつが近いほど取り組みやすく遠いほど難しくはなります)のですが、コンテクストの意識練習として重要なのはその後で、ポイントはお子さんが( )を埋めた後に、その( )に埋めた言葉を選んだ理由を聞いてあげることにあります。
おそらくその子なりに、2つの文章を繋げるのに妥当な内容を考えたはずです。
そして恐らく本人なりにそれはあるのだけど、(特に国語が苦手な子ほど)上手く言語化はできていない。
だからこそ「なぜその言葉を( )に入れたの?」と聞いてあげることによって、その繋がりを言語化してあげる事ができます。
そして、その言語化してあげたものこそが、コンテクストを捉える力の第一歩なわけです。

こうした遊びのようなトレーニングを行う事で、コンテクストを意識する力が身に付きます。
もし、小学3年生〜4年生くらいで、文章が読めないなあと思うお子さんをお持ちの方がいらっしゃったら、試してみてください。
(というか、需要がありそうなら僕が授業で使っているプリントを編集していずれnoteにまとめたいと思います。)

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