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春菊天そば

春菊天そば。四半世紀前、新橋サラリーマン時代、駅前のニュー新橋ビル1F丹波屋さんで食べたのが最初だったかと思います。その時は春菊が食べたくて注文したのでは無く、外食でいつも凡調な昼メシにお定まりのかき揚げ天そばから逸脱したかっただけだったかと思います。
子供自分それまで春菊と言えば「お浸し」、お醤油と鰹節で小鉢に鎮座する画しか思い浮かばず、もちろん子供が喜ぶおかずでは無くお酒を嗜む、御通しの様なイメージでした。
サラリーマンになってから初めて食べた春菊天そばは衣が薄くて濃い緑色、さくさく食べるというか、濃いめのおつゆに浸しながら蕎麦を纏わせて頂くという、ちょっとたぬき蕎麦を感じつつも似て非なる味わいでした。それが思いのほか印象に残っており、25年後の昨日夜、妻に詰め寄り食べる事が出来ました。

妻に、「なぁ、2、3日前からね、昔食べた春菊の天そばを急に思い出して、凄く食べたくなって近くで探したんだよ、検索で」

すると妻は呆気なく、
「明日作ってあげるよ。帰りにスーパー寄りたいと思っていたし、あるでしょう春菊くらい」

そう言って貰えたので、付き添って買い物へ出掛け、早速目当ての春菊を見つけると、しげしげと眺め、「昔は凄く苦かったのよ」と。
「そうなの」
「品種改良されたの」
と聞くと、
「さぁ」と。
「苦味は季節でも変わるのでは?」と、自分。

乾麺の山芋蕎麦を手に入れ、他の買い物も済ませて家路に向かいました。

土曜日の夕飯、妻は何も言わずに春菊を揚げてくれました。私も何も言わず、テレビを眺めながら大人しく出来上がるのを待ちます。

出来たてを天ぷら蕎麦で頂くのは、外では運に任せますが家では実現可能ですので、それなりに期待は高まります。

薄目の衣から濃い緑色が覗く春菊のかき揚げ。
「よし、流石だこれだこれだ」と、
思わず口にしてしまいました。
手前みそですがこの春菊天そばはイメージ通りでした。
自分はただ蕎麦を啜り、春菊のかき揚げを食べる。

正月も明け、懐かしくもほろ苦い、良い蕎麦を戴きました。

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