原神 核心のストーリーの考察 及び世界観考察
まず、原神が異様なストーリーの形態をしているという前提がある。
原神はストーリーが色んな所に大量にある。
テイワット創造主、旧世界の龍王、禁忌の知識、人間を導く銀色の樹、寒天の釘、月の三姉妹、魔神戦争、カーンルイアの災害、降臨者、五大罪人、アビス、魔女会、神の目、神の心、ファトゥス、旅人、片割れ
多くの謎が書籍、世界任務、武器ストーリー、キャラクターストーリー等にも描かれる。
しかし、原神は現時点の五カ国目ナタにして、これらの謎を未だに拡げるばかりでどのようにして回収されるのかは皆目見当もつかない。
それに実のところ、これらの話は人伝で語られる事が多い。書籍だったり、ダインスレイヴの口頭…叙述トリックがいつでも可能な形で、これらが真実であるかどうかを判別し難い。
そしてストーリーにはテーマがあるものだが、これらの話はあまりにも散らかり過ぎている。
創造主の人間に対する神聖な計画…そのために力を奪われた龍王…人間のための楽園…アビスの誘惑…誘惑に対する罰則…法則に駆られた戦争…運命の織り直し…世界規模の意志…天上に支配された運命…各国各々の過去や特徴…
如何にしてこのストーリーを纏め上げるのか?この世界は何の法則で動き、何のためにあるのか?
これに加えて表舞台では、旅人がパイモンと共に七国を巡り、色んな経験をしていくストーリーがある。身近なキャラクター達と共に、楽しい時を過ごしたり、協力して困難に立ち向かったり…
この身近なストーリーを過ごす中で、上記の世界を舞台にした大掛かりなストーリーが語られる事は想像できない。世界をどうにでもできる存在がいれば個々の人々との交流は茶番になってしまう。
ホヨバースは、原神はもちろん他作品を見ても、いつも哲学的なテーマをストーリーに持たせている。それは前考察のグノーシスで語った。https://note.com/zuruzurus/n/n96e67762fb21
↑どうやって世界の法則に抗うか?
また、グノーシス主義がテーマであると明言されたのは原神に対してである。しかしその要素は一見では、神の心(Gnosis)、原神(Allogenes)、俗世の七執政(Archon)、等にしか見られない。
これらの情報が、一体どのようにしてホヨバースの哲学になるのか?むちゃくちゃな悪い奴を倒したらハッピーエンド、等の単純な話にはならないはずだ。
つまりこれ程の膨大な情報がありながらストーリーの構造自体、方針、作者の意向そのものが不可解な常軌を逸した作品になっているのが原神である。
しかし、原神四周年の半分以上の国を過ぎ、旅の終点にもう着いてしまう時点で、ようやくこの謎を解く鍵を手にしたと思われるのでこの記事を書く。そしてそれは原神のリリース直後、ver.1.0の時点であっても解明できて腑に落ちるものになるはずだ。
但し、苦痛で胸が詰まる思い…を感じるシナリオになる。
旅人とテイワットと原神の正体
原神のテーマは「狭い世界」である。
どういうことかというと、まず原神の舞台であるテイワットは閉じられた世界である。
空には偽りの星空があり、天幕、天蓋バリアが張られ、禁忌の知識の制度で外を知る事が阻まれ、世界樹によって記憶と歴史の改竄がされ、カーンルイアの様に人の発展が過ぎた国があれば滅ぼされる。
上位存在に支配されて、外と隔絶された世界。
スターレイル風に言うと「開拓」の精神が根絶されている。
このテーマは書籍「少女ヴィーラの憂鬱」を読むと解り易い。この書籍はver1.0の時点で手に入る。
【私は世界が退屈だと思ったことはない。ただ面白い物事はすべて遥か遠くにあるだけなの。】
【デルポイに住む少女ヴィーラはまたつぶやいた。】
【今さらの説明だが、小さな村デルポイはギリシャ神話の世界の中心。】
この本は奇妙で、ギリシャ神話だの世界の終わりと戦う戦乙女だのアンドロメダ座だのが登場し、ストーリー展開も魔神戦争や龍などテイワットの歴史事情を彷彿とさせるものが多い。
デルポイという単語は他の箇所でも登場する。
【かつて、この地はデルポイと呼ばれていた。その名の意味は蛇の地である。】(白夜国館蔵)
意味が変わってしまっている。デルポイはヴィーラの方が現実と同じで、実際にギリシャにある。
古代ギリシャにおいてその場所は、「世界のへそ」、世界の中心であると信じられていたとのこと。
これは謂わば、古代である故に知識が限られた狭い世界でのこと、人々が想像によってでしか宇宙を語れなかった神話時代の偏見である。
現代の私達は広い知識を持っているので、地球が丸くて世界の中心なんて無いこと、何なら地球は宇宙のごく一部である事を知っている。
この「狭い世界」という概念は、グノーシス主義に反している。グノーシス(神の霊知)は知識が重要で、宇宙の全てを知る精神こそ神であるからだ。
テイワットはグノーシスを得られない世界。もちろんそこに住む人々は「星と深淵を目指せ!」や必ず通るアンバーの伝説任務に登場する「風、勇気と翼」等、あらゆる所で知識を得て前に進もうとしている姿が描かれる。
【いや 大事なのは強き風ではなく勇気だ
それが君たちをこの世界で初めて飛ぶ鳥にした】
(空を飛ぶ鳥については崩壊3rdとスターレイルでもある)
崩壊に抗うには神の如き知識が必要だ それは人間であれば物語を引き継ぎいつか到達できる いつか狭い世界を飛び出し広い宇宙に踏み出せる
テイワットの僭主でも乗り越えられ 外の宇宙でも何とかやっていける
そのような事を今まではストーリーで語ってきた。
しかし、ここで一つ疑問を呈する。
「本当にそんなことが可能なのか?」
グノーシス主義の一番有名な部分だが、「物質世界は悪で精神世界が善」という話がある。
人間たちの精神は物質、肉体に囚われていてグノーシスを得ることが難しい。人は肉体的な欲望や生病老死に支配され、道を踏み外す。
神秘学的な人は色々と儀式を行い、肉体の束縛から離れようとする。
しかし我々一般人はそれは難しい、というより「そんなことは無理だ」と言い切る事がある。
科学が発展し、人の精神は脳の複雑な仕様から発生されてるものであったり、身体に依存しているものだと知られている。
グノーシス主義は「非存在」が重要で、存在するものは全て物質に影響され、不変の神の様な存在ではないというのがある。しかし結局は太陽と月を動かすのは引力で、光は電磁波で、等と「非存在」の存在が証明されつつある。ダークマター、ダークエネルギーなんかも分からないというだけで存在を認知できている。
つまり、肉体の超越は神話同様、荒唐無稽で不可能、それ自体が存在しない話と言える。
一応ホヨバースは、「人類目線」でグノーシスを語っている。人の精神は人類全体を指し、人の歴史の集約、それを現在に伝える「物語」から神の霊知に達すると。
しかし「個体」としては?人間は結局、自身の肉体の檻で自我に囚われ、人類など関係も無いといえる面がある。
個体は永遠にグノーシスを得られない。個体は永遠に「狭い世界」を出られないのだ。
個体を統合し、巨大な意識にするというのはアルハイゼンの伝説任務等、本作でも他作品でも色々やっている。
しかし諸々失敗している。原則が個体である以上、その無茶な方針はどこかで破綻する。
この事も「ヴィーラ」で語られている。
【人はいずれ自分の家庭を築く。遠方への憧れは永遠に叶わない】
【君のために宇宙で不思議なことを経験してきた】…(しかし)…【君がいなければ、僕は青春を過ごすことができない】
「狭い世界への束縛」、それが何を意味するのか?そのキーワードは、「異邦人」「故郷」にある。
人間は人間から生まれる。それは古代の人であっても分かりきった事実だ。
そしてこう言える。
「人間という個体は…人間から生まれてくる時点で、物質世界に囚われている」
人間は小さな赤ん坊として生まれ、周りの物質的環境を知覚し脳と精神を成長させていく。この過程の要因を一生引きずる事もある。
人間は「親、遺伝子」「生まれ故郷、場所」という過去からは永遠に逃れられない。過去を変える力があったとしても起源の法則レベルなので無理だ。
ではどうやって「抗う」のか?
「人間から生まれない、故郷も持たない人間」
を造り出す事だ。
テイワットは創造主がどうやったのか、「意志」の力が具現化している。意志はやはりグノーシス主義の通り「非存在」であり、神のものである。
意志の抽出なんかも缶詰知識や水仙十字が成功している。この「意志の力」から新たな人間を造ればいいのだ。あらゆる人間から意志を取り、故郷の記憶も無しに、宇宙のあらゆる記憶を持つ、流離いの人間を造ればいい。
それが…「旅人」である。
旅人は星海を旅し、現実に通ずる色んな知識を持っている。故郷の話は出た事が無く、テイワットも最初旅立とうとしていた。
誰の遺伝子も持たず、「非存在」から生まれた旅人は、宇宙のどの視点から見ても「異邦人」と呼ぶのに相応しい。全ての「存在」から見た「異邦人」である。
そしてグノーシスでいう神に最も近しい者…「降臨者」、「『神』の座に就く者」、「未来は全て汝の天地となる」、「汝は世界を有し、天地を抱く者のはずだった」
「世界へようこそ。」
「旅人」が造られる過程は大体見当がつく。
「神の目」を持つ者は、死後に天空の島に昇り「原神」となる。一度だけウェンティが口にした「原神」は、英語では「Allogenes」…グノーシス主義で扱われる「異邦人」の意味である。
普通に考えればテイワットに生まれ住んでいたのに、死後に「異邦人」になるというのは訳が分からない。しかしこう考えれば辻褄が合う。
「神の目を持つ人間は『異邦人』を造るための素材である」
神の目は願いの渇望が極致に達した者に与えられる。その意志の力は強いと言えるだろう。
ここで興味深い事に、実は神の目を持つ人間は“過去にはいない”。
原神はまるで本物の歴史のように緻密で膨大な歴史が各所にある。しかし神の目の描写は一切存在しない。
神の目の所有者は、強い意志と元素力を操る超常的な能力がある。このような英雄的な人物が歴史に描かれないのはあり得ないと言える。ゲーム的に見ても、神の目という根幹の世界観を蔑ろにするのはおかしい。
(唯一ドラゴンスパインにあるテキストで、エバハートを斬ったルースがいる。しかしドラゴンスパインは香菱の伝説任務でオラフという、数百年経っても生存できる前例がある。)
リサのキャラクターストーリーでは、神の目を持つ「代償」について述べられている。
この代償は、「旅人を造る素材となり、歴史から存在ごと抹消される」事ではないか?
消した後の歴史の穴はスメール魔神任務にあった通り、世界樹によって適当な形で埋められる。
消される理由はやはり、「そのような事実は人々にとって印象が悪いから」か、或いは「存在ごと消える事自体が代償である」とか?
何故なら旅人は降臨者であり、世界樹には記録されない者だからだ。「世界樹に記録されない異邦人になった」時に、その過去も記録から失せる…ということもあるだろうか。
つまり、幻想大陸テイワットは「旅人」を造るための世界…錬金術などで例えれば素材を入れるフラスコだ。
プレイアブルキャラクターは一部を例外に皆神の目を持っている。私達は彼らと一緒に様々な経験をしてきた。
彼らの存在も、皆が「原神」になってしまえば世界から消え失せ…そうして「原神」である旅人、プレイヤーである我々が造られる。
彼らを代償に、テイワット創始者による「神聖な計画」が進行し、グノーシス…宇宙に抗える力を得るのだ。
【勇敢な鳥は一生巣を築くことがなく、恋慕の風と共に生きていく。】
(楓原万葉の友人は神の目を持って亡くなったが天空の島云々の話は無い、いつどのようにして天に昇るかは不明。ゲートオブセレスティア?)
(ver1.1のイベント「帰らぬ熄星」のレーナルトは神の目の描写は無いものの神の目所有者辺りの特別な者が持つらしい命ノ星座があった)
シナリオ:風を捕まえる異邦人
この説の本番はここからである。
以上の考え方によって、原神のあらゆるストーリーが全く違った意味を見せてくるようになる。
話はカーンルイアから始められる。カーンルイアでは「深秘院」なる所が双子の到来を予測している(名刺:軌跡)。カーンルイアは『ペリンヘリ』『赤月のシルエット』等で見られるように、超常の力を我が物にしようとしている。
そこでキーとなるのはスメールで『散兵』によって語られた、「天空が召喚に応じた」という事実である。
カーンルイアが何らかの力を用いて、「召喚」を行い「天空」がそれに応じて、双子の片割れがカーンルイアに現れたということだ。
前述の通りテイワットは降臨者を造る容器である。カーンルイアの召喚に応じて「旅人」が造られ、或いは造られていた旅人がカーンルイアに降り立ったという訳だ。
この様子は実は容易に想像できる。我々はいつも「祈願」を行いキャラクターを召喚しているからだ。その様子とまったく同じと思って良いだろう。
そして旅人の「蛍」…「カーンルイアの姫」と呼ばれる者は、宮廷魔術師…現在の「道化」や「末光の剣」ダインスレイヴと共に時を過ごす事になる。
この時、降臨者としての能力は失っていたと思われる。恐らくこの以前に「天理の調停者」との戦いがあり、能力を奪われたのだろう。何かの天変地異(カーンルイアの滅亡かどうかは疑わしい)から逃げようとした所を、止められる。
コロタールは「しかし、あなたは…果たして我々に何をもたらしただろうか?」と蛍に述べる。召喚出来たものの、何の役にも立たなかったのだ。
(蛍が「世界樹に記録されている」という事実は、能力の封印とは関係ないと思われる。空も同様の状態にあるからだ。)
そして片割れ、「空」に転ずる。
空は星降りの崖で目覚める。パイモンを釣り上げ妹の蛍を探す旅に出る。
我々は空(選択によっては蛍、恐らく双方が入れ替わってもシナリオが成り立つ)
を主人公にテイワットを歩み始める。モンドから璃月、稲妻…と各地を旅していく。
各所で旅人は元素力を使えるようになる。これは当たり前である。双子は神の目の所有者の集合体であるからだ。
彼ら双子は、共に星海で旅した記憶を持つがこのテイワットで道を違えてしまったのだ。(星海の記憶は存在しない捏造のものだ。具体的な星の名前等、旅人との繋がりは表された事が無い。千の世界とか妄想するフィッシュルと殆ど同じである)
そしてカーンルイア側、蛍も旅をする事になる。
ナヒーダは「カーンルイアの災いの後、彼女はテイワット各国を巡る旅に出た。」と言う。
カーンルイアの滅亡に直面した蛍は、何を思っただろうか?
どのくらい滞在したか、何を経験したかは不明だが、国の滅亡は見るも無残で耐え難い苦痛だったと思われる。各地で聞ける、500年前の同時期に起こったアビスの災害も、国が滅亡までは至っていないものの悲惨である。
蛍の旅は地獄のような光景から始まったのだろう。そしてダインスレイヴをお供に空と同じく各地を行脚する。
蛍の頭には既に、「天理」や「七国」に対する不信、それ以上の負の感情があったと思われる。
空は対照的で、モンドをアビス教団、スネージナヤのファデュイから救うべく、西風騎士団や闇夜の英雄、風神と共に行動する。
そしてトワリンを救済し、見事ハッピーエンドを迎える。蛍を探す事も大事だが、目の前の困ってる人々を見捨てる事もできない。降臨者として能力を振るい、各地で英雄的な功績を納める。
この二人は、同じ場所を旅したが全く異なるものになっている。
何故そうなったのか?
これには前述の「故郷」という点が重要になる。
双子はやはり「異邦人」で、テイワットは故郷ではなく、多くの旅の中の一つと捉える。しかし、テイワットという「狭い世界」に閉じ込められ、長い時間を過ごすとその様子は変わってくる。
既に四年間、ナタまでの五カ国を過ごしている私達旅人は、テイワットはまるで関係が無い、自身の過去と繋がりが無い世界ではない。
我々はテイワットで多くの名前を貰ってきた。
旅の中で多くの物語、多くの人々の物語を経験してきた旅人は、もはやテイワットの「異邦人」とは言えなくなる。その世界の一部となる。
これがウェンティが最初に語った、「風を捕まえる異邦人」が行く「旅の意味」である。
「風」は前グノーシス考察の通り、「言葉」「物語」と捉えていい。物語を捕まえる、この大地の経験を手にするという事だ。
旅人…空の旅の意味はテイワットを自らの故郷と言えるような関係になる事を言う。
しかし蛍の場合は違う。
ここでウェンティが語る紀行PV『真珠の歌』の内容を思い出してほしい。
【しかし彼女は騙され、自身の高貴さを忘れてしまう。そして、自らを暗黒の国の王女だと思い込むようになった。】
蛍は目覚めて、カーンルイアで過ごした経験がある。それは良いものだっただろうか?
「耕運機」の話や神への不信を聞くと悪いイメージが浮かぶカーンルイアだが、層岩巨淵での旅人の章、ハールヴダンや黒蛇騎士団の事などを思うと一概にそうとは言えない。
空がテイワットを長く過ごし、「故郷」だと思うように…蛍がカーンルイアを「故郷」の様に大事にしていたら?
その様子はハールヴダンと同じストーリー箇所で垣間見れる。蛍は「復興」と口にしている。
【「天理」への対抗に傾倒するあまり、「復興」という大事な使命を忘れかけていた。】
復興はその国への想いが無ければしないだろう。
また、カーンルイアは理念(七国の自由、契約…のような)としては「開拓」のようなもので、熱心で前向きに未来に進む人々の姿があったと思われる。
騙されたかどうかは不明だが、蛍はカーンルイアを「故郷」のように思っていても不思議ではない。
【ゆえに、インテイワットは「遊子」、つまり郷を離れて旅する者を象徴し、また「故郷の優しさ」という意味を持つ。】
【俺は殆どの記憶を失くした。だが、どうしても忘れられない事がある。彼女も…この花が好きだった】
「狭い世界」の「故郷」の違いが人の間にあると、往々にして争いの火種になる。空と蛍が現在分かり合えず、蛍は「空が現時点で理解する事は出来ないだろう」と突き放すのはそういうことだろう。
更に、故郷滅亡の地獄の光景を見た後、最も恐ろしい事実が蛍に突きつけられる。
魔神任務『カリベルト』、ダインスレイヴが「このことがすべての「始まり」と言っても過言ではないのかもしれない」と称する、旅中のスメールでのこと。
蛍はコロタール・アルベリヒと「予言者」ヴェズルフェルニルと出会う。
ヴェズルフェルニルは「自称、運命を覗く者」「時の終点で涙を雫す者」「超越者」である。テイワットの全てを知っていてもおかしくない。
旅人は地脈の乱れで記憶の中で出会った限りだが、ダインスレイヴは「そういったことはおそらく、やつを制限する要素にならないはずだ。」と述べる。
蛍に対しては、何か違った事を語ったかもしれない。
つまり、この時が「すべての始まり」であるなら、テイワットと自ら(異邦人)の真実を…世界と人々が自身の供物である事を知ったかもしれない。
驚愕、恐れ、拒絶、苦痛、絶望…
そんな風な事を感じたかもしれない。蛍にはもはや、天理に対しての憎悪、敵対心は隠せないものになる。テイワットの法則、カーンルイアの滅亡、全ての根源は天理にあるからだ。
「アビス教団の姫」になり、アビスの力を使ってでも天理を倒す。コロタールも含めて、ここからアビス教団の活動が始まったのだ。
『私たちはいずれ再会する』、蛍がアビス教団の姫として空と初めて再開する時、蛍はこう述べている。
【 俺と一緒に家に帰ろう!蛍!】
【家…】
【うん、もちろん、空がいる場所が「家」だよ。】
「本当の故郷」が存在しない彼ら二人の「家」と言えるものは、双子として生まれたお互いだけだ。
蛍はこうして、空と分かり合えなくなり、対立するようになった。
ダインスレイヴも、旅を共にした者でありながら「敵」と呼んでいる。
空はどうなるのだろうか?
蛍と違う旅を歩んできた空は、「旅の意味」が蛍とは全く異なる。
空がどのような選択をするのかは、同じ旅を経験してきた我々にも見つけ出せるだろう。
また、パイモンの存在が非常に奇妙なものである。
パイモンは「テイワット一のガイド」を自称し、ずっと旅人に着いてくる。パイモンの怪しさはよく言われている。名前…見た目…時間操作…
やはりパイモンは「天理の調停者」、「時の執政」に通じる存在と見ていいだろう。パイモンは上位存在からの何らかの接触である。
つまり、ここではパイモンは「旅人に旅の意味を理解させる」役割を持つとする。ガイドとして旅人を導き、明るく楽しく旅を過ごすための存在だ。実際パイモンは旅の中で何が起こっても最終的にはあっけらかんとし、最高の仲間を演じている。
ちなみにウェンティも「時と風」「千風」から時の執政と繋がりを持っているだろう。旅人が目覚めて最初に、モンドでこの二人と出会ったのは偶然では無いということだ。
カーンルイアが「姫を騙した」ように、テイワットは「王子を騙した」。
降臨者の力は野放しにできるものではない。そうして二人は対立することになる。
蛍は「旅の終点でまた会いましょう」と言う。終点は「始まり」が示唆する。始まりはその物の本質を持ち、本質は物の終わりを示す。
【この世に偶然などない、全ては遥か古に撒かれた種によるものだ。】
【だから──時間の最終的な答えは0だと。】
【互いに乖離し、集合し、平行する無数の光が「時間」という錯覚を生み出す。過去も未来もない、なぜなら、過去が未来だからだ】(書籍:時の旅人)
旅の始まりは双子が神に選ばれた生け贄を喰らった所しかない。蛍は空がこの事実を知った時、ようやく共に並び立ち天理討伐のために協力できると考えている。
しかし、「捕まえた風」が全く違う異邦人は容易に手を取り合える事は無いだろう。
凡人と降臨者
ここでは原神にあるあらゆる世界観と情報を繋げていく。
最初に言った通り、テイワット外の世界観は伝聞が多いがそれにも理由がある。旅人は現時点ではまだ「内の狭い世界」の情報の方が重要だからだ。「内」の物語を終え、旅の意味を知った時に「外」の情報も内との境界線がはっきりして新たな意味を持ち始める…
まず「異邦人」は降臨者として、他の降臨者も旅人と同じ造りの「異邦人」ではないか?
第一降臨者は天理、テイワット創造主のパネースとされる。第二は恐らくパネースと戦った「第二の玉座」龍王ニーベルンゲン。
ここで注目したいのが「アビス」である。ニーベルンゲンはパネースに一度敗北した後、アビスの力を持ち帰って再戦を始める。その様子は『白夜国館蔵』と草龍アペプの言葉から読み取れる。
【天上から第二の王座が訪れ、創造の始まりを彷彿させる大戦が起ころうとしていた。】
【「龍王」が世界の外から手に入れた漆黒の力は我らを導き、外来者が定義した秩序に抗う手段になると。】
アビスとは一体何なのだろうか?「深淵」「虚界」にあるとされ、禁忌の知識であり、旅人や寒空の釘で浄化でき、元素力で対抗する、人々と世界を侵すもの。
まだ不明な部分は多いが、アビスは「テイワットシステムそのものの代償」であると推測する。
テイワットは幻想大陸で、意志の力を具現化している。その裏で、「負の感情」の様なものも具現化されて、廃棄物のように有害な意志が積もっていく。アビスが負の感情とリンクしているのはトワリンなどに見られる。
【…あれは自然に生まれた憎しみなんかじゃないんだ。腐食された後の産物だよ。】
ナタの最新魔神任務で「グーシィ・トース」なるものが現れた。これはクトゥルフ神話の「ヨグ・ソトース」と関わってると考えられ、ヨグ・ソトースは「空虚」、「非存在」であるという。
「虚界」の名称からも、人の精神であるアビスは「異邦人」のように「非存在」のものと考えられる。元素力は光で例えられるが(名刺:虹色など)、そちらが光ならアビスはその影、「負の降臨者」といえる。
つまりアビスを纏ったニーベルンゲンは降臨者にカウントされる。「龍」は並外れた適応力を持っている。(白夜国館蔵:四巻アビサルヴィシャップの実験記録)
この力があればアビスの力を手に入れる事も可能かもしれない。ましてや龍王である。
そしてアビスといえば、原神にとって大きな存在、「黄金レインドット」である。
レインドットは錬金術を扱い、錬金術は生物を生み出す事ができるという。それは「黒土の術」「白亜」「黄金」「赤化」の段階に分けられる。この段階は実際の錬金術でも扱われる。(アルベドは黄金を最高段階と言うが、実際の錬金術は赤化が最高で完全な存在を指す。それは水仙十字でも語られた。)
レインドットは数多くの生物をテイワットに出現させた。「溶脱層」の獣域ハウンド、「腐蝕層」ドゥリン、または巨獣エリナス。どれもテイワットにとんでもない破壊をもたらした大災害である。
また、これらの生物はアビスとも称される。
そこで、錬金術の詳細は未だ不明だがこう捉えられるのではないか?
「黒土の術」はアビス、「虚界」の力から生物を造り出す術であると。
ドゥリン、エリナスはどちらも元々は黒い、暗い宇宙にいたという。(腐蝕の剣)
その場所が「虚界」であり、「非存在」の宇宙だったのではないか。
(グノーシスでは非存在が精神、神…そして宇宙そのもの)
ドゥリンとエリナスは後で後悔したものの、どちらも破壊行為を楽しんでいた。それもそのはずで、アビスは「負の意志」から生まれた物であり、破壊こそが自身を肯定するものだからだ。人が呼吸をするように破壊を本能的に行う。
そして「黒土が白亜を産む」という一文。
これはアビスからアルベドのような人間を造り出す事を指す。
実際でも言われる通り、「錬金術」は金を造り出す事を目的とした技術である。石ころなんかから金を。
この事から、原神における「錬金術」は「アビスという廃棄物から価値のある物を造り出す」術と推測できる。
それが成功し、成果物が獣域ハウンドやドゥリンやエリナス、そしてアルベドである。
「白亜の申し子」アルベドは人間である。黒土の物達と違い破壊本能は無く、神の目を貰えるほど立派な人間である。つまり「白亜」に到達すればテイワットの人間となる。白亜は人間を指す。
【白亜は無垢なる土であり、原始の人々の材料である】
「白亜は無垢なる土」…根本の、宇宙が定めた元々の人間だ。
原始の人々は旅人…異邦人である。「原始」は宇宙の起源、法則を定める者、神…を指す。
レインドットの「原初の人間計画」は、アビスを用いて「黒土」の生物…段階をどんどんと上げていき、「白亜」を材料に、「黄金」を材料に、
「赤化」…感情の精錬、精神…異邦人、降臨者を造り出す事を表している。
アビスから降臨者を造れたなら願ったり叶ったりである。神の目なんかの制度を作らなくてもいい。生ゴミから美味しい食べ物を造り出す、正に「錬金術」と称するに相応しいことだ。
また、この術は生物が関わっている事から「生の執政」の力が関係していると推測できる。生の執政は特に情報は無く、そもそも「生の執政」なる存在がいるかどうかも明確になっていない。
執政、「四つの影」の概念は白夜国館蔵や最新のナタ魔神任務で登場している。
第一降臨者パネースはテイワット創造に関わる謎の者。パネースより以前がどうだったか、パネースがどのようにして生まれたかは謎に包まれている。
第二降臨者ニーベルンゲン。テイワットの元々の主で、元素七龍の王。ニーベルンゲンがアビスの力…アペプ曰く「世界の滅亡」、禁忌の知識の力を使ってパネースと壮絶な戦いを繰り広げ、世界がめちゃくちゃになる。
この戦いでパネースは深手を負ったと思われる。それはヌヴィレットのキャラクターストーリーに描いてある。
復讐の大戦、僭主がそれである。
ここで更なる謎が表される。「神の心を作ったもう一人の後継者」だ。
まず、「原初より生まれた欠片」は「魔神」達であると推測できる。
互いに併呑しあった、とは「魔神戦争」を指す。
魔神は各々、不思議な名前を持つ。
「渦の魔神オセル」「竈の魔神マルコシアス」「塩の魔神ヘウリア」…
竜巻、海祇、砂、花、音楽
自由、契約、永遠、知恵、正義、戦争…
この並びの法則は分からないが、これはパネースが持つ「知識」及び「意志」、「概念」なんかがバラバラに分けられたものと考えられる。
前述の通りパネースも降臨者であり異邦人であり神であり宇宙である。
これがニーベルンゲンとの戦いで身体が引き裂かれるが如くテイワットに散り散りになってしまったのだ。
そこから魔神戦争が始まり、あらゆる魔神は敗北して死亡。現在の七国の魔神が勝者で、神の心、天空の神座、人間を統治する権利を得る。
そして七神に与えられた「神の心」は英語でGnosis。神の目の上位の器官、天空の島との共鳴、強い元素力を持つ。
そしてフォンテーヌ魔神任務のスカークとの会話で明かされた事だが、神の心は「第三降臨者の遺骨」である。
この時ヌヴィレットとパイモンによってまるで旅人の片割れの遺骨であるかのような会話がされるが、旅人は双方ナヒーダの言う「第四降臨者」で構わないと思う。第四として同時に生まれたからこそ双子である。空/蛍の選択によっても矛盾が無い。
「Gnosis」と呼ばれるのも合っている。降臨者はグノーシスだからだ。遺骨になってもそうなのだろう。
この第三降臨者がパネースの「もう一人の後継者」なのではないか?と推測できる。
つまり、第三降臨者は自らを犠牲にして神の心を造ったのだ。
ここで述べたいのが、「神の心」は「神の目」の上位器官であることだ。(ウェンティ談)
神の心と神の目は物として似通っているということだ。これは「神の目」制度が始まったのが神の心と同じく、魔神戦争辺りからである事を意味しているのではないか?
そしてこれは、「第一~第三降臨者」までは「神の目の所有者から造られたものでは無い」事を指す。
これが何を意味するのか?
注意して頂きたいのが、ここからは非常に飛躍した推測を展開する。第三降臨者の情報は他に一切無く、後から何が来てもおかしくないからだ。
テイワットの旧支配者の水の龍王の後継者、ヌヴィレットが言うには、現在の世界は良いものではないという。ヌヴィレットのキャラクターボイスから確認できる。
【君は天地の外の者だ。この倒錯した世界に対する私の審判は、君が見届けるといい。「天父が統べるべきだった国は、今や雉が王座に就いている。すでに錯乱と逸脱に蝕まれし時代──我は天地を正すために生まれた」】
【最近、ある劇を観た──亡くなった婦人がそのカリスマ性と悪意ある采配を持ってして、まるで振り払うことができない亡霊のように、自分が去った後の豪邸を今なお覆っている──というものだ。役者は申し分なく、ストーリーも非の打ち所がない。そして、この世界の現状について、考えさせられるものであった。】
とにかく「天理」に値する統治者がもの凄く悪くて、そのせいで世界が悪くなってるという。
(ついでだがヌヴィレットについてのボイスでこういうのもある。)
【何?最古の七神でさえ、偽のガラス玉を付けて俗世を歩んでいる者たちがいると…? くくっ…いや失礼、少々取り乱した。あまりにも滑稽だったものでな。】
(これは前述から考えればよく分かる。七神はパネースから派生したもので、神の一部である。なのに「神の素材」のフリをするのは滑稽である。)
世界の統治者は恐らく、というより現状ではパネースの他にはいない。パネースとその「後継者」がそうだろう。
パネースと後継者は言われる程悪いのか?
確かにテイワットの現状は悲惨さがある。
アビスが漏れ出た所には「寒空の釘」を落として封印、しかしその地は環境が荒れ果て誰も住めなくなる。
アビス対抗に「禁忌の知識」制度導入、アビスを取り入れる者は世界から排他され、苦しみを受け滅ぼされる。しかしアビスを望まぬ者もその苦を受ける事になった。
創世時代から考えれば、龍の力強奪、天蓋バリアや世界樹による外からの隔絶。この説で言う神の目システムは言わずもがな。
更に言えば、上記のキャラクターストーリーには「人々もこの七つの考えしか持つことができなかった」とある。
七つの考えは七国の理念だろう。自由、契約、永遠、知恵、正義、戦争…(恐らく、愛)
これらの考えは実は魔神任務を経て否定されることになる。
「神に命じられた自由は不自由」
「契約を終わりにする契約」
「永遠は須臾の輝きによる」
「知恵は禁忌の知識に至ってはいけない」
「正義は有罪の審判からも生まれいづる」
パラドックスのような感じで否定され、七国は新たな道を歩み始める事になる。
「国の理念」にするには浅く、間違っている命題であるということだ。七神の上位神が設定したであるにも関わらず。
なぜこんな惨状になってしまったのか?
パネースら降臨者はグノーシスの完全な神であり、全てを知る宇宙そのものであるはずだ。何が、どこで間違っていたのか?
ここで…「選民思想」、「優生思想」という考え方が現れる。
選民思想、優生思想は、「神に選ばれし者」「種として優秀な者」がいて、その者以外は劣等存在であるという考え方である。この思想は危険で、実際にこれを基に恐ろしい事が為される事もあった。
実はカーンルイアにはその兆候が見られる。
コロタールも「神から不死の呪いを受けたのは、「罪深い者」とされた血筋のもっとも純粋なカーンルイア人のみ…」と語っている。カリベルトは異国の民との間に生まれた子なのでヒルチャール化した。
明確に言われるのはここのみだが、他にもカーンルイアで扱われる言葉がドイツのものであったり、カーンルイアの人物が「アンフォルタス、アルベリヒ」「レインドット(ラインの乙女)」「クリングソル」等リヒャルト・ワーグナーの歌劇からとられている事がある。(モンドにもパルジファルや何ならワーグナーがいる)
そして「神の目」システムは正にそのものである。稲妻の魔神任務に起こった「目狩り令」では神の目を持つものへの凡人の嘆きが語られる。
【神の目を持つ者はそれほど数が多くありません。それどころか嫉妬を招くほどです。】
【はぁ、僕にも神の目があればどんなによかったことか。】
【やっぱり僕は…神の眼差しを受けられなかったんだね…】
【この世界には、「神の目」を持つ者と、「神の目」を持たない者がいる。では、神にとって、どちらの方が重要だと思う?】
なぜそのシステムを取ったのか?
神の心を作った時、ニーベルンゲンとの大戦を終えた後、「第四降臨者」旅人を、なぜ神の目の所有者から造る必要があったのか?
答えは
「凡人を素材にしていては、それらから造られた降臨者は同じように凡人のようになるだけ」
だからだ。
第一降臨者パネースが人間を創造し育てる様は例の「白夜国館蔵」に描いてある。パネースは人間をとても大事にしながら育てている。
この様子は聖遺物の「祭りの冠」シリーズにもある。
天理によって整備された甘美な時代を過ごした人間からは、凡人しか生まれない。「神の目」は人生の分岐点、願いの極致に至ったときに現れるとされ、真逆のものと分かる。
つまり、その時代から生まれた降臨者、第三降臨者…「後継者」は、凡人の神であり、世界を統治することもできないボンクラである。
神の使者であり人を導く「仙霊」はナタ最新魔神任務で「夜神」が登場した。その配下である大霊を含めて、その様子は盲目的に人を愛するものと見える。
また、パネースの一部である魔神は各々「人間を必ず愛する」事が法則、呪いのようにあると見える。
少し離れるが、天空の眷属であるとされた「花神ナブ・マリカッタ」の眷属、「ジンニー」は言葉を交わしたのは大体リルパァールだが異常な性格をしている。
ファトゥス「少女」は「書籍:酔っぱらいの逸話」から仙霊であると推測できるが、初対面の者の歌を「聞き苦しいです」とバッサリ返したり、他の執行官から不思議な人物であると評価されている。
これらの変な偏った性格は、凡人の素材から生まれた、偏った神によって造られた使者だからではないだろうか。
しかし凡人は凡人で、自分が優秀でないことを理解できる。
だから第三降臨者は自分を砕き、神の心にして七国を補助する道具として七神に任せ、神の目システムで新たに「優秀な神」を造ろうとした。
その結果、「第四降臨者」旅人が生まれた。
神の目を持つ人々は、例外無く非の打ち所もないようなキャラクターばかりであることを我々は知っている。
それを素材に生まれた旅人は彼らに並ぶ高潔さを持つ。危険に遭っても各国を救い、ファトゥスやアビス教団との複雑な関係も公平に見ることができ…旅の中でその感性は更に磨かれていく。
狭い心、狭い世界の神は結局の所、偏見と無知にまみれたグノーシスとは程遠い神だったのだ。
【どれほど離れれば、それは遠方となる?俺の庭は宇宙と同じくらい広い】
【遠方の定義は心とともに変わる】
【俺の心は宇宙よりちょっとばかし広いぞ】
【──君、そんなにたくさんの星を持っているのに、なんで僕の光まで奪うんだよ?】
カーンルイアには移民が多いと思われる。天理への不信から人間だけの国に流れてくる人がいる。
【どこかで人々が神のいない国を造っているのを耳にした。もしかしたら、彼らには世界に抗う力があるのだろう】(ドラゴンスパインの任務アイテム)
神よりも人間自身の方が優秀である。そんな風にしてカーンルイアは存在している。
神はその身分に合わない凡人…僭越者であったが、カーンルイア人は神をも超越できると考える僭越な者であった。
また、カーンルイアには神が存在しないと言われていたがそれは少し違うと思う。
カーンルイアでは特殊な力が重宝されている。
錬金術は地下に生物がいないため生物を造り出すために用いられる。
「ペリンヘリ」では双界の炎なる儀式のような何かを行い、アルレッキーノの謎の炎の力を造り出そうとしていた。
前述した通り、錬金術は「生の執政」が関わると推測した。
そしてこの「双界の炎」は「空の執政」が関わっているのではないかと推測する。
「四つの影」及び「執政」は明かされたものでは「時」と「死」がある。なので聖遺物の「生・死・時・空」がテイワットにおける原則のルールとしてあると思っていいだろう。
執政の事と「空の執政」の事はまた長くなるしややこしいので最後に置いておく。
つまり、カーンルイアには七神より上位の「四つの執政」が力を貸していたのではないか?と推測する。
この者達は「影」とされ、表舞台に現れることを良しとしない。それは最新ストーリーでも「死の執政」ロノヴァが自ら語っていた。
なぜ「影」とされ、それに徹するかは不明であるが…
なので、「神が存在しない」というのは影として人間の王を裏から支配していたという事ではないか。
カーンルイアには超越者とされた「五大罪人」がいる。
「黄金」レインドット
「賢者」フロプタチュール
「予言者」ヴェズルフェルニル
「極悪騎」スルトロッチ
「月の狩人」レリル
この五人は全く詳細が無いが、執政の力があったなら超越者になることは出来そうだ。
更に、カーンルイアを滅ぼしたものも執政であると推測できる。
「カーンルイアは神によって滅ぼされた国、そしてそれが… アビス教団が七神の国を滅ぼしたいと思っている理由だ。」とダインスレイヴは語る。
カーンルイアの災害では、アビスの魔物が他国にも溢れ、純粋なカーンルイア人は不死の呪いをかけられ、異国の者はヒルチャールに変えられた。
これらは全て七神を越えた力である。
アビスの魔物は「生の執政」
不死の呪いは「死の執政」
ヒルチャール化は「空の執政」
と推測できる。
マハールッカデヴァータの言葉では、草神以外の七神が全員カーンルイアへ召集されたとある。
しかし執政達は影に努めるため、その召集は濡れ衣を着せるためにあったのではないか?
次いで、なぜ滅ぼされたのか、それは分からない。「驕り」「傲慢」等とされるばかりである。
だがカーンルイアには一つ転機があった。
赤月→黒日への王朝の変化である。
書籍「ペリンヘリ」や武器「赤月のシルエット」を見る限りでは、「赤月王朝」が錬金術や双界の炎を用いた神秘的な技術を重宝していた。
しかし「黒日王朝」になるとそれらは衰退し、機械がメインになる。恐らく遺跡巨像やファラクケルトの園にあったアゾス物質はこの時に造られたのだろう。
なぜそう変貌したのか?レインドットやアルレッキーノを見る限りでは機械よりも赤月の神秘的技術の方が人智を超越していて、何でも出来そうである。
また飛躍した推測だが、これには降臨者の「旅人」が関係しているのではないか。旅人は「カーンルイアの姫/王子」と称されるが、降臨者を召喚するなどは完全に神秘的な技術である。それを語る「深秘院」も名前だけで神秘的である。
だから旅人は赤月の時代に到来したと考えられる。
そして旅人は、片割れの七国の方では、上記の通り「その国の理念を改革する」様な事を大成する。
召喚された旅人は、モンドや璃月を導いたようにカーンルイアを導いたのではないか?
「神が存在しない国」から「本当に神が存在しない国」に変えたのだ。
七国の人々が神を再認識したように、執政の力を追い出し、人間の力…機械技術だけを扱う方針に変えたのだ。
もしかしたらそれが俗に言う「天の怒り」を招き、カーンルイア滅亡の引き金になったかもしれない。
「夜神」は死の執政ロノヴァが天理の機嫌を損ねて自暴自棄になったと言う。上位存在がそんな風な性格なのはあまり考えたくない事だ。
超長くなってしまったので最後にする。
カーンルイア人はテイワットで唯一、人種を表す身体的特徴がある。(一応ムラタ人というのもいる)
カーンルイア人の目はひし形をしている。
これは書籍「小さな魔女と消えない炎」のニフィリム人に相当するのではないだろうか。
ニフィリム人は神と人の混血であるとされる。この事はよく分からないが、実際カーンルイア人の純血というのはどういう純血、先祖、末裔なのかよく分からない。
ニフィリム人の事は二巻で、恐らくモナの師匠バーベロスが書いている。この本は魔女会の人物達が自身に関連する事を書いているのだが、バーベロスは超凄い占星術師である。そして「赤月のシルエット」には星象学者たちが全ての運命の根源を見たとある。バーベロスはこの時カーンルイアにいたのではないかとも推測できる。
「ニフィリム人」…「神と人の混血」がカーンルイア人にも当てはまれば、また色々な話が広がりそうである。
終
核心の謎を洗いざらい解き明かしたかのように思えるが全くそうではない。
特に重大な部分が残っている。
「天理の調停者」である。
天理の調停者は原神を始めてすぐさま登場し、双子を離ればなれにするという最も肝心な部分を担っている。
パイモンと似ているという事から「時の執政」関連が窺える。
また、赤い箱のような技を使ってくるが、これは「時」の力で空間を圧し止めているのではないだろうか。
(時間と空間については以前の記事、量子力学考察参照)
「時の執政」は影の中で最初に明かされた、またはパイモンやウェンティ、モンドとの関係が怪しい事から四つの影の中でも特に重要な人物だと思われる。
【風が物語の種を運び、時間がそれを芽生えさせる。】
【風が新たな物語を運び、時間はそれを神話にする。】
更にこのオープニングではこう台詞がある。
【余所者 お前たちの旅はここまでだ
この「天理」の調停者が ここで「人の子」の驕りに終焉を】
この以前に、双子が「天変地異」を経験してテイワットを逃げ出そうとしたこと、それらも全く脈絡が分からない。
いつの話なのか?なぜ旅人を封印したのか?「天理の調停者」という名前が表す意味は?
また、天理の調停者のキャラクター造形は崩壊3rdの主人公キアナを思わせるものがある。
ではウェンティ、「セシリアの花」、時の執政の力を使ったとされる「雷電眞」…これらにどんな物語があるのだろうか?
(※但し、「生」と「死」は表裏一体のようなものであり、「時」と「空」もそうであるなら時の執政パイモンとの見た目が似てるのは少し意味が違い、「空の執政」である可能性もある?「空」はまた推測だが時と密接な関係にある。
更に「空」のものと推測した“赤い色”をした力もヒルチャール等魔物の消滅時、アルレッキーノの炎と月…調停者の力と共通している。)
(最後に置くTwitter補足を参照して頂きたい)
(追記:この辺も分かってきたので後々また記事にします)
↓その続き
https://note.com/zuruzurus/n/ne4422a5bd7be
ここで記事を終了する。まさに核心の話だったため、原神という作品相応に長く複雑なものになってしまった。
そしてやはり全体的に人間と宇宙の業の深さを味わわせるストーリーになってしまった。しかし実際には旅人とテイワットの仲間達が何とかしてくれると願って…
今回はこのとんでもないストーリーの一端を垣間見れたのではないでしょうか。
これはver5.1の時点で書いたもので、恐らくもう少しで旅の終点が見えてくる事でしょう。終点に辿り着く前に、自分でこれを導けた事を嬉しく思います。
終 ;-)
(Twitter補足)
画像:いとでンe- さん(ナルツィッセンクロイツと草龍アペプ)
https://youtube.com/@itoden?si=TEXbEjePkO1x6l81
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