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宇宙の蝗害 解明編



原典のストーリー

ルアン・メェイの勧めもあって「繁殖」のタイズルスが諸宇宙の災厄として存在していた時期に模擬宇宙のスポットを当てる。(この後ルアンはこれを元に繁殖の使令のクローンを造る)

方針としては、まず当時に生きていた「運命の行人」の人生を反映させて運命の力を集める。そうすると星神が一瞥しに来るのでそこで星神の動きを観察しようということだ。

なので描かれるストーリーは「運命の行人」と「星神の動き」の二つになる。現在から何万年も前、しかも間隔が何百年とかのストーリー群がバラバラに入り雑じるので時系列や言葉の意味の把握が非常に難しくなっている。

でもヘルタ達は天才なのでタイズルスが生まれてから死ぬまでの歴史シミュレーションは成功し様々な事を明らかにしたのだ。

ヘルタ「つまり蟲星系が滅亡させられタイズルス生まれ貪慾ウロボロスと戦い宇宙3分の2滅亡し秩序エナ存護クリフォト開拓アキヴィリ均衡互愉悦アッハらの運命干渉そして途中貪慾消滅秩序消滅エナは調和シペになり最期にクリフォト怒りタイズルス殺されしかしスウォーム現在も絶えず繁殖タイズルス復活兆し」


「秩序」という悪魔

ver2.2に「秩序」の星神エナが調和の中から復活させられた(サンデーの傀儡として)。サンデーによるとエナは黄昏戦争(琥珀紀元前~と思われる)の後に宇宙に昼と夜、善と悪などを作ったという。

そんなエナは恐らく「均衡」の互と仲が良いと思われる。均衡も物を二つ均等にしたりの概念なので昼夜、善悪などと関係があるだろう、エナが作ったのを互が調整してたかもしれない。

なので天外聖歌隊の中では「均衡」への信仰が垣間見える。『天外聖歌隊-異象記   その1』にて「直角」の椅子に座って神を感じるのはそういうことだ。均衡においては「角度」の表現が多々される。※離れない※というトリックも陰陽対極図を模した均衡の力のものかもしれない。


そんな宇宙を永らく支配してきた「秩序」エナは、ある最悪な計画を行うに至る。
「繁殖の星神を誕生させ全宇宙を滅ぼしかける」というものだ。


「秩序」は正義のもとで行動するので「壊滅」の様に無為に宇宙を襲うことはあり得ない、では何故そうしたのか?

エナの支配欲は常に秩序の仇敵を目に据え潰しに掛かる。エナは『壊滅Ⅱ』でこう述べている。

「世界に混乱を呼ぶ者は存在してはならな い。貪欲な者は生きられない。狡猾で気まぐ れな混沌は宇宙の汚れた塵である」


世界に混乱を呼ぶ者は「愉悦」アッハである。この後実際に人を操って色々する。
貪欲な者はそのまま、「貪慾」ウロボロスである。

しかし宇宙の汚れた塵である狡猾で気まぐれな混沌とは誰なのか?この時期にいる宇宙の敵といえば「繁殖」である。
しかしこの表現は繁殖に合っているだろうか?特に「狡猾で気まぐれ」という部分は知恵ある存在ではないので合わない。

仮に「繁殖」以外に誰がいるかと考えると一つこの表現にピッタリと当てはまる者がいる。「神秘」ミュトゥスである。

人を騙す狡猾さ、夢見のような能力の気まぐれさ、虚構で混沌を作りだす宇宙の汚れた塵。


まず「神秘」はこの時代にいたのか?
ミュトゥスは「記憶」浮黎と対等の関係にあり、模擬宇宙図鑑ではヘルタが「記憶」から「神秘」が生まれたと語っている。
一周年記念イベントの開拓スゴロクの診断結果、サン-3000の紹介によると「大開拓時代」より前に浮黎の善見天の中でミュトゥスを見たという。

「大開拓時代」がいつなのかは分からないので仮説だが、今から990紀も昔の「第一次繁栄」の始まり、「開拓」アキヴィリが宇宙の星々を繋げたであろう時かと思われる。サン-3000の時代は今の「星穹列車」は無く色んな列車が走っていたという。

宇宙の蝗害は1300紀の話である。大開拓時代が1000紀辺りなら既にミュトゥスはいることになる。


ではエナが「神秘」を消し去りたい、として何故「繁殖」で宇宙を滅ぼしかけることに?
それは「記憶」が関係してくる。

「神秘」は見破られる事によって神秘でなくなる、つまり死ぬのだ。ギャラガーもサンデーに見破られたことによってもう長くないと語っていた。

そして「記憶」は真実だけを映す。この「記憶」とは、人がものを忘却してから潜在意識の中に置いておく事を言うのだろう。『記憶Ⅱ』ではこう書かれている。


「経験を塵にして、組み合わせ、新たな命を与え、創造した別の境界のことを想像と呼ぶ。そして、塵そのものが消えていくことが記憶になるのだ。」


つまり人がものをはっきりと頭に残している時、それは「想像」によって別の形に変異し得る可能性があるのだ。そして想像とは「神秘」が与えた力、若しくは根源と言えるだろう。

人が完全に忘れ去ったと思っている時、「人の意志が介入しない」経験だけが記憶…=真実ということだ。

そしてその法則から、秩序のエナが考え出した最悪の計画が導き出せる…


「『繁殖』の災害によって宇宙を滅亡寸前にし、人々の『想像』が介入しない記憶を大量に作り出して『神秘』を完全に滅する」


結果として、「記憶」浮黎は出現した。「貪慾」と「繁殖」の戦いで宇宙の3分の2が滅ぼされ、大量に消滅した人々の記憶を浮黎が回収していた。

『聖歌隊-1』で秩序と終焉のすれ違いが起こる。これは「終焉」がエナの計画を読み取り、タイズルスの誕生と死を予言して後に厄災前衛が各所に触れ回るのに通じる。

『壊滅Ⅱ』でエナが支配する人々の国は誕生と滅亡を繰り返している。人類の秩序を保つのがこのループなのだ。繁殖による宇宙の滅亡もこの一環であり、秩序のための犠牲を省みる事はない。

繁殖の誕生は秩序のエナによって描かれた運命なのである。


行人たちの悪夢

ではどのようにして繁殖の星神が生まれるのか?星神達は運命の力を使って森羅万象を操る、そして人々は生涯弄ばれる。

「秩序」は階級的な支配の中に「王」になる者を選出する。王に選ばれた者は無自覚に幸運と成功をもたらされ、更に並び立つ相手を抹消する。天外聖歌隊の兄弟、そして『蟲星系-虐殺記』の指導者がその傾向を示している。(アベンチュリンにもその傾向が見られるが一旦置いておく)

また、逆に支配せずに無秩序の中に置いて孤独で原始的な生活に身を置かせることもできる。『砂の王-2』の大ラポール星のマンドラ島がそれだ。エナはここから「孤独と憎しみ」を持たせて「繁殖」の星神を昇華させようとしていた。

しかしある星神がエナの計画に火に油を注ぐ。
厄災前衛の知らせからか、計画を知った「愉悦」アッハはある有名な賞金稼ぎのリーダーの夢を操り大ラポール星のある蟲星系の虫を絶滅させるよう仕向ける。
更に当時、凡人になりすまし「星穹列車」のナビゲーターを勤めていたアッハは「秩序」の王に選ばれている者を列車で蟲星系に連れていき、イライディシーナ軍の指導者として蟲星系を支配させる。

そして非支配の無秩序で文明とは無縁だったはずの蟲星系は両者の衝突により激しい戦争の中で滅亡する。アッハは『愉悦Ⅰ』でこう述べている。

「わたしがすることはすべてエナのためだ!アッハは人を助け、他の神を助けることが好 きなんだ──」
「君は加わらないのか、偽のアキヴィリ?私 のアイデアを受け入れてくれてくれないの か?『星穹列車』と『タイズルス』について のアイデアを」


更に、星神、運命の衝突が続く。「秩序」は賞金稼ぎリーダーを操り、自ら死に行くように導いたか?『賞金稼ぎ-洗狩記   その1』でリーダーが「盛大な宴が始まる前に、欲望の制御に力を入れなければならない。誰もミスを犯さないように」と述べているのは秩序の影響ではないだろうか。「秩序」の正義が虫と人の区別のつかない戦乱を呼び寄せた自身の死を選ばせたのだ。そしてイライディシーナ軍側が勝利する。

イライディシーナ軍の指導者は「秩序」がもたらす豪運のせいで「虚無」の道に踏み出している自滅者である。豪運で何でも手に入るので自分の欲しいものが分からなくなっていたという。3日間しか記憶が続かず物事を忘れてしまう。


彼方では弔彾人のゴンドラが仮面の愚者に占拠される。愚者達は神の啓示を受け蝗害の災禍から「神を助ける!」と言うのだがこれは恐らく「神秘」側の秩序、及び繁殖への対処だろう。凡人が神を助けられるはずがないと、少しでも考えれば分かるので彼らは神秘お得意の記憶、精神操作を受けていたと思われる。
このゴンドラに多くの派閥が入り雑じり、そこには「存護」の建創者の妻も入る。更に旅の途中で記憶域に入り「虚無の影」の憶泡を貰う。記憶域と憶泡は神秘の十八番である。

そのゴンドラがやがてミュトゥスの目論見通り、「繁殖」タイズルスの死に繋がる事になる。


宇宙が愛に殉ずる時

「運命」は星神なら、他神のものであってもある程度その力を自由に操れるのではないか?と思う。例えばこの模擬宇宙で実装された「反響交錯」のようにだ。

カフカは仙舟の開拓クエストにて「タイズルスは不朽の運命を分裂させて生まれた」と述べている。
つまり、「秩序」エナは龍が消えた後の「不朽」の運命を操り、タイズルス作成の素材にしたのだ。不朽は輪廻転生など生命を操る力を持つ、それが転じて繁殖になった。

タイズルスは大ラポール星のマンドラ島にて生まれる予定だったのだろう。
マンドラ島では色のついた炎が孤独に耐えるため自身の繁殖をしていた。(この炎はエネルギー生命体の何かなのだろうか?)

しかしアッハの愉悦によって戦争が起こり、虫の大虐殺が行われ、最後の鞘翅目がタイズルスとなった。
必要以上の「孤独」「恨みと憎しみ」をもってしまったのだ。色のついた炎の名残がタイズルスの姿に少しだけ反映されている。(人間体の頭部)


かくして星神になったタイズルスには繁殖の際にある能力が備わった。「新種の配合」である。

タイズルスの虫は繁殖を行う時、全く別種の虫と組み合わされる。これによって新たな種の虫が大量に生まれてきていた。恐らく鞘翅として最後の1匹だった虫は「種が絶滅する事が無いよう」願ったのではないか。それが星神に昇華した時、能力の一つになった。「巡狩」の嵐にも見られるように。

更に、タイズルスは模擬宇宙図鑑によると、雄と雌どちらにも属さない性別だという。『砂の王-4』の通り蟲星系の古代にいた、何故か絶滅に向かったとされている複数の性別を持つ虫と同じである。タイズルスは種として古代の生物に遡る事もできたと思われる。
古代種が絶滅したのは恐らく「均衡」が性別が二つから逸れる事を許さなかったのではないか。

その能力で種を遡り続けると、古代の果てまで届き最後には「牙と触角」を持つ「原初の卵」までに至った。

この原初の卵とは何なのか?それは──
「貪慾」の古獣、黄昏戦争から存在していたものである。


「貪慾」のウロボロスは『記憶Ⅰ』でこのように表現されている。「牙と触角を生やした首」。(英語ではtentacled-触手とantennae-触角で異なるものとして表記されている、しかし中国語では触角で統一)

更にアルジェンティの同行クエスト、「宇宙幻覚の夜」では巨大真蟄虫が登場する。呑み込まれた列車が脱出する時に見える口は、紀行PV「星空の寓話集」で見れる「貪慾」のものと一致している。

タイズルスの「運命の膨張」は生命の源にまで到達していた、しかしその卵も最期には潰される事になる。


タイズルスによる「宇宙の蝗害」が始まると、その「貪慾」との戦いが始まる。ウロボロスは虫の群れを呑み込み、タイズルスは虫を産み続ける。

「貪慾」の者達は謎に包まれている。古代アメーバ粘菌や淵獣、狂獣といった存在が貪慾の運命を歩み、ただ食べる事に執着している。

能力も食べる事に関するもので、それらに近づくと開拓者も魅了されたかのようになり食べられたくなる。

しかしそのウロボロスも蝗害の中、忽然と姿を消す事になる。「秩序」と共に。


一体何故だったのか?
『記憶Ⅱ』でウロボロスが現れた時、まるで意味の分からない事象が起こる。

食べる事とは全く無関係に思える。しかしそこで上記の「他の運命に干渉できる」という仮説から見てみると、ある程度通じる所がある。

「信徒の物語が流れ込む」──記憶の力
「聖なる光を放つ星の港」──開拓の駅と列車が、港と船に置き換わったもの
「病に倒れた狂獣が再び大地に現れる」──不朽の生命の力
「古国の聖殿」──古い星神のクリフォト関連か
「亡者の呟き」──虚無の自滅者
「足首と爪先で方向を描く」──均衡の角度
「合唱者、兄弟の桂冠」──秩序の者

多数の運命が入り雑じってると考えられる。では何故そんなことが起きたのか?


そこで、「貪慾」の運命は相手の意志、運命をも呑み込む事ができると考える。貪慾の意志が、虚数からなる運命の力をも全て欲さんとしたのだ。

『凶と虫-諸星消滅記   その2』で現れる淵獣は、食べる事に飽きて虚無の道を進むかのような、本来の能力まで薄れさせる程になっている。

つまり、最終的にその力を持つウロボロスになにが起こったのか?そこから導き出される答えは…


ウロボロスは虫の群れを呑み込み過ぎた。繁殖の運命に足を踏み入れ過ぎたのだ、「貪慾」の運命の星神から自身を外れさせる程に。

まるで自身の尾を呑み込む蛇のように、他の運命を呑んでるつもりが自分の運命を呑んでいたのだ。


かくして「貪慾」は「調和」の星神と化したということだ。

「繁殖」の虫からなのに、なぜ「調和」なのか?それはタイズルスの「2つ目の概念」が関係している。

『存護Ⅱ』ではタイズルスに2つ目の概念があることが明かされる。「繁殖」以外のもう一つのタイズルスの意志といったところか。


その謎を明かすキーワードは「虫粉の術」と「メルシエス」である。

メルシエスは大ラポール星のマンドラ島に住んでいた普通の母親。
彼女は虫の潮により家族、子供を失い正気を失ってしまう。(『砂の王-2』の隻腕の父とナイフで自害した娘だろうか?)

正気を失った彼女は、繁殖の虫を自分の子供だと思い込むようになり、育て続けたのである。それは彼女の最期まで続き、残された家の中には87着の服と7千足を越える靴が散らばっていた。虫は靴を履く知能すら無かったが。

虫粉の術は、虫の鱗粉を吸い込んだ者に幻覚を見せる力である。そのせいで虫を狩る賞金稼ぎ達は人が虫に見えるようになり、虫と人の区別がつかないまま殺し合う事になった。

現在──アルジェンティの同行クエスト『宇宙幻覚の夜』でも登場したが、その際は「個人の欲求」に基づいて、虫が相手の欲しいものに幻視する能力になった。


2つ目の概念、もちろん「繁殖」と相反、全く関係無いということは無いだろう。つまりこれらの現象も「繁殖」の一環にある。

タイズルスの生い立ち、精神を鑑みるとよく分かる。タイズルスは虐殺、絶滅、孤独、恨み、憎しみ…その中で星神に昇華した。

虫粉の術──それは、虫が自身の仲間を作るための術である。
人を虫に幻視させて虫が仲間であると錯覚させる魂胆。現在では進化して、より相手に寄り添う形になった。

メルシエスは虫を自身の子供と思い育てていた。家の外が滅茶苦茶になり、食料が尽きるまで虫を育て続けた。…最期まで、“虫がメルシエスを襲う事は無かった”。


タイズルスの2つ目の概念は「愛」である。もたらされた孤独と憎しみは、タイズルスを愛に飢えさせた。

タイズルスの人間体の頭部には色のついた炎がある。それは「ハート」の形、愛の象徴である。

「貪慾」ウロボロスが虫を呑み込んで「調和」に変容したのは、この「愛」の概念があったからだ。「調和」シペは、その愛から人々を繋ぎ、群星の母となる。

タイズルスの繁殖の「運命」は、「宇宙が愛に殉ずる時」なのである。


「調和」シペは「貪慾」の性質を残していると考えられる。其が其になった時、ある行動をとった。

「秩序」エナはウロボロスを敵としていた。また、「繁殖」はエナのせいで孤独にいた。

更に「秩序」の支配下にある人々は滅亡を繰り返している。サンデーはこう語る。
「あなたは『秩序』で民を定義したが、そのせいで、私たちは自分があなたの操り人形に過ぎないことを知ることになった!」

敵視、憎しみ、人々の秩序への不信、「調和」自身が望む人々の統合、そして残された「貪慾」の性質、こうして「秩序」エナは「調和」シペに呑み込まれ──宇宙から姿を消したのである。

「運命が近い星神同士は衝突し大きい方が小さい方を呑み込む」というのは定説のようになっているが、誤りではないだろうか?
ヘルタはそれに対して「終焉」と「壊滅」は?「存護」と「記憶」は?と疑問を持っている、という面もある。

実際にその事象が起きたのは、シペとエナの例のたった一つしかない。一つの運命が他の運命を包含する、これは「貪慾」にしか成せない技なのではないだろうか?


宇宙の古き二柱の星神が消えた後、タイズルスが死ぬ時がやってくる。「存護」クリフォトのハンマーに叩き潰されて息絶える。

イライディシーナ星域──蟲星系の虐殺の地が決着の場である。そこは「神秘」に導かれたゴンドラに乗った人々が到着したゴール地点でもある。

なぜクリフォトはハンマーを振るったのか?クリフォトは寡黙な性格で、普段は壁を作る事しかしない。例え「壊滅」や星核が宇宙を荒らし回ったとしてもだ。

クリフォトがタイズルスを潰す時、「怒りの嵐を巻き起こしている」とある。クリフォトは怒っているのだ。


その怒りの原因の一つは、ゴンドラの旅にあると推察できる。『建創者-修築記』のある建創者「ビッグフット」に関することだ。彼は巨人で、妻と共に存護の壁を作りながら暮らしていた。

しかし繁殖の虫が壁を突破した時、その妻は建創者から外れてゴンドラの「神を救う」旅に加わって、彼の元を去ってしまった。彼はその後、永遠に妻が去った哀しみに暮れながらただ帰りを待ち続ける事になった。

クリフォトがかような怒りを見せるのは、自分の身内が被害に遭った時ではないだろうか?自分が「存護」している者達だ。

クリフォトは自身の信者に誠実と言える。スターピースカンパニーは存護を建前に支配を広げるが、カンパニー内部にはしっかりと「存護」の使令──クリフォトに力を与えて貰った者がいる。

また、「秩序」はクリフォトの友達だったと言える。『存護Ⅰ』にてクリフォトとエナが交流する所が見れる。エナはこう語る。

「汝は我が招待に応じた…クリフォト。煽動 者は規範も法もなく、その行動は許されるも のではない」
「移り変わる意志を御するがよい──琥珀の 王、汝は元より重責にふさわしくない」

クリフォトは煽動者、つまりアッハを何とかするのを頼まれる。
エナは身内贔屓で臆病なクリフォトの性格を知っているので重責に相応しくないとした。「貪慾」や「神秘」という難敵の相手より、好き勝手遊んでるちょっと邪魔な奴を相手しといてくれというわけだろう。

クリフォトは友達にも誠実でその招待に応じる。しかしエナはシペに呑み込まれ、消えてしまう。

建創者「ビッグフット」の哀しみ、友人エナの消失…クリフォトは禍の原因と言えるタイズルスに、ついにハンマーを振るう怒りに至った。

『存護Ⅱ』でクリフォトの「怒りの嵐」にはパズルのピース、巨大な彫像が見れる。パズルピースはシペ…元秩序のエナを表し、彫像は『建創者-3』の通り老い衰えたビッグフットである。


つまり神秘はクリフォトのタイズルス討伐によって、目下の目的、蝗害による宇宙滅亡の阻止──「神秘」の消滅の危機を脱する事に成功した。

また、ビッグフットの傍には「開拓」がいた。「開拓」という名詞で呼ばれているのでアキヴィリ本人ではないか?

アキヴィリは人間に近しい星神とされている。ビッグフットの哀しみを受け、また旅立つ「開拓」はどうしたのだろうか。人間として、他人の哀しみを理解できそうなアキヴィリは、ビッグフットの為にクリフォトに力添えをしたかもしれない。

ついでにタイズルスの死の場には「愉悦」の笑い声と「調和」の横一列のハーモニーが聞こえる(エナは縦である)。アッハは高みの見物、シペは「繁殖」が元かもしれないが蝗害を起こすタイズルスは既に「調和」の邪魔者であるのでその死を止めることはない。

更に、ゴンドラで来た人々は『蟲星系-6』で、それらの星神の音が複合されたものを聞いて、途中で貰ってきた「虚無の影」が入った憶泡を打ち鳴らした。すると虚無の影が憶泡から湧き出てくる。
『ゴンドラ-神を助ける!   その6』も含めた通り、この地にまだ居たイライディシーナ軍の指導者である「自滅者」は、虚無の中に失った自分を見つけて入り込んでしまう。黄泉の落ちた色の部分もこの中にあるのだろうか。

そして「均衡」の仲裁官が動き出す。虚無の影は「全世界の裏側」であり、恐らく「表側」である現実に現れる事を、均衡のために許さなかった。そうして虚無の影は消え去る。


「存護」「開拓」「愉悦」「調和」「虚無」「均衡」…
これだけの星神と運命がその瞬間、その場にありながら、タイズルスは誰にも救われる事無く叩き潰され滅んだ。孤独から生まれた者が孤独の中で死んでいった。


残された謎

これで色々な謎が明らかになった。

とはいえ、現時点にある情報の中からストーリーを読むなら、というもので先のバージョンで何が起こるかは分からない…新出の概念や方向性は必ず出てくる。

特に「貪慾」関連の事は絶対に誤謬がある。

また、終局にて、常に「均衡」の現象が「愉悦」と「調和」の徴候の中にあるとルアン・メェイが語るがよく分からない。
だが不思議な点が一つある。『愉悦Ⅱ』ではアッハとシペが同時に登場するが、シペは「アキヴィリが死んだと思っていた」と言う。アキヴィリはこの時期には普通に生きているはずである。

あとルアンは度々「均衡」に対して其の決定に間違いはありませんとか言う。信者なのか?

他にも不可解な点がある。


■『砂の王-1』と『巡狩Ⅰ』で突然現れる美しい画廊。青い肌の歴史学者のところらしいが全く分からない。

■「貪慾」の儀式。ナイフとフォークとマッチで行うらしいがどういうことか全く分からない。神秘か?『凶と虫-4』で虚構歴史学者も登場するし…

■小籠包。『天才クラブ-通常実験』で二度も登場するが意味が分からない。

■運命スロット。
『記憶Ⅱ』では「壊滅・精神自壊、嗜血な生贄、戦争崇拝、肉体帝候、焦土征服」
『壊滅Ⅰ』「巡狩・疾速、復讐の誓い、制暴、制約、決断」
『虚無』「豊穣・憎悪、慈愛、灌漑、帰心、善行」

■ヘルタが『壊滅Ⅰ』で「ナヌークは最も若い星神」と語る。最も若そうなのは「巡狩」嵐で、恐らく5000年前、65~20紀前からのもの。しかし一周年スゴロクにてナビゲーターシケンは「第二次繁栄」の終わり頃まで勤め、アキヴィリの殞落とナヌークの誕生を見たという。第二次繁栄は1500紀~くらいのことなので一致しない。神秘か?

■『豊穣Ⅱ』『天外聖歌隊3』にてエナが消えた時にその信者が「開拓」に助けを求め、「均衡」が太陽を返した。この太陽はタイトル通り、「豊穣」の薬師に繋がるのだろうか?スクリューガムは豊穣に「繁殖」が関わってると言う。死んだタイズルスの運命の「不朽」由来の部分、生命を司る能力が薬師にはあるだろう。

『記憶Ⅱ』

相変わらず読めない「記憶」の言葉。英語から、単語を切り離すとこうなる。
「歌声/対抗/饕餮/消滅/交錯/悲しみの言葉/心から/捕らえ/砂の王/記憶/海面裏/子孫/呑み込み/戦い/伶人/虚空/反転/往日の面影/執筆」

なんたなく分かる部分はあるが、やはり何を示してるか分からない。
更に謎なのはこの後に続いてヘルタが「この記憶はこの時期のものじゃない」と言う。「砂の王」や「饕餮(恐らく貪慾)」とあるのにこの時期じゃないのはわけが分からない。ヘルタも神秘か?神秘色強めのポルカ・カカムと共通の話題あるらしいし…

■後々への繋がり。
タイズルスの子孫が未だ繁殖し続け、仙舟の本『覗密集』では星神本人の残った肉体は動いているとある。「運命」は星神が消えた後も残り続けるというのは「開拓」の星軌などで分かっている。タイズルスはヘルタの言う通り復活するのだろうか?もしそうならピノコニーの「秩序」のように…「豊穣」、若しくはこの考察記事が合ってるなら、「調和」から現れるのだろうか。


……………

以上で完結です。

既存のイメージとかけ離れていくので妄想と根拠の境界が曖昧になる恐怖を感じたが、ここまで置いていた宇宙の蝗害を読めて良かった。

世界観の根幹である星神の設定がめちゃくちゃになってるので受け入れ難いというのもある。これが当てはまっていたら黄金と機械とかをまた読み返すはめになる…

次回バージョンの2.3では、模擬宇宙にまた大型アップデートがあると予告されている。こういうストーリーがまたあるかもしれない。しかもヘルタが「五人目の天才」を誘う気でいる。一体どんなやつが来るのか…


ver2.3、及び崩壊スターレイルの全ての続編を楽しみにしましょう。


崩壊:スターレイル「宇宙が愛に殉ずる時」


~Twitter補足~(8/13 追加)

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