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あげ子とあげ子の猫の話
ある日突然家の中に入って来た猫がこたつの中で子猫を産んだ、という経験を持つひとはあまりいないと思う。
「こたつの中で産むみたい!!」
出産はあげ子により実況中継され、わたしたちねこ友達は固唾を飲んでそれを見守った。
そしてその豪快な性格の三毛猫はすーちゃんママ、産まれた2匹の子猫はチビビと茶ッピーと名付けられ、そのままあげ子と一緒に暮らすことになった。
すーちゃん一家はあげ子に懐いたり懐かなかったり触らせなかったりしながら18年暮らして、一昨年の春から夏にかけて続けざまに旅立ってしまった。
仲良しの親子だったせいかもしれない。
最晩年は闘病もあってすごく大変そうだったけれど、忙しい仕事をこなしながらもあげ子はしっかり3匹を看取った。
そして半年後、パステル通称パスちゃんを保護猫施設から引き取った時は「抱っこができる!」「膝に乗ってくるよ?!」とすごく嬉しそうだった。
すーちゃん一家よ…抱っこくらいさせてあげてもバチは当たらんかっただろうに。
あげ子に引き取られた時、パスちゃんは10歳で白血病のキャリアだった。
「一生発症しないコもいるよ」と後押ししたのは他でもないわたしだ。
なのに、たった一年でパスちゃんはあげ子のもとからいなくなってしまった。
ひたすらかわいくてかわいくて、あげ子のことが大好きだったパスちゃんはあっという間にいなくなってしまった。
後押ししたことをわたしはとても後悔した。あげ子に無駄につらい思いをさせてしまった気がして。
1年半のあいだに4匹を送ったあげ子はしばらく保護猫施設のお手伝いだけするわ、と言っていたけれど、猫神様はそんなあげ子にまたご縁を持って来た。
それがぷりんさんだった。
ご高齢だった飼い主さんがぷりんさんをペットホテルに預けたまま入院先で亡くなってしまい、ぷりんさんは大好きな飼い主さんとおうちを一度になくしてしまった。飼い主のおじいさんは入院中もぷりんさんのことを気にかけて何回もペットホテルに電話をしていたらしい。とてもとてもかわいがっていたのだ。
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チンチラシルバーというふわっふわで豪華な雰囲気を漂わせたぷりんさん。
14歳であげ子のもとにやってきて、おもちゃで遊んだりごろごろしたり、顔の周りの毛をカットされて丸顔になったり王冠をかぶったりかわいい首輪をしたり。
そんな日がまだまだずーっと続くと思ってた。
わたしも。あげ子も。
なのに、神様はいじわるだなあ。
夏、突然胸水が溜まるようになったぷりんさんは心筋症と診断された。
5ヶ月間ぷりんさんもあげ子もすごく頑張った。
おじいちゃんなのか子猫なのかわからない顔のぷりんさん。
顔もトシもちゃんとおじいちゃんになるまであげ子のそばにいてほしかった。
寝癖がついた高貴な顔をもっと見せてほしかった。
うちのねこと同い年なんだから、これから一緒にトシをとっていろいろ一緒に悩みたかった。
それでも。
たった一年しか一緒にいられなかったけど、きっとぷりんさんは
あげ子と一緒にいられて幸せだったと思う。
ねこの幸せは飼い主の幸せでしかはかれないから、あげ子がぷりんさんと一緒にいられて幸せだったのならぷりんさんも幸せだったんじゃないかな、とわたしは勝手に思っている。
わたしのまわりには今、がんばってるねことひとが何人かいて。
すごいなあ、ほんとすごいよ。
そのねこたちも、うちのねこも、世界中のねこたちも、みんな、
のんびりゆっくり少しでも長生きしてほしい。
わたしにはそう願うことしかできないけれど。
心からそう思う。
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