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宙組への想い〜Le Grand Escalierを観て〜

Le Grand Escalier(ル・グラン・エスカリエ)。
通常と異なり1時間20分という短さの特別公演。
誰かも言っていた通りタカスペを見ているような感覚だった。
宝塚の歴史が詰まったレビュー作品。

この作品を配信で視聴する上で、正直何度も悩んでしまった。
それは、もはや宙組について発信する上で避けては通れなくなってしまったのではないかとすら思える件が原因だ。


宙組

私を宝塚の世界へ連れて行ってくれた組
永遠の贔屓に出会わせてくれた組
一生応援し続けると誓った組
だからこそ、この約1年の間、辛いという気持ちが私の心を占めていた。

正直言ってもう、前と同じ気持ちでは観ることができない。
ただ楽しいと、ただ美しいと思って観ることはできない。
それは私だけではなく、宙組を観ている他の人達もそうだろう。
例えそれぞれ意見が違っても、前と全く同じ気持ちで楽しむことができている人なんていないはずだから。
楽しかった、応援している、そんなプラスの言葉だけを発信している人が、心の中でどんな葛藤と戦っているかなんて、他人には分からないのだ。

この件をきっかけに、宙組から、宝塚から離れた人も多いだろう。
少し前まで、私もその一員になるかもしれなかった。
それは、愛が消えたからではない。
愛があるからこそ離れたかったのだ。
応援するという行為が正しいのか、分からなくなってしまったからだ。
だから、応援すると決めた人の気持ちも、離れると決めた人の気持ちもどちらも痛いほど分かる。
どちらも正しいのだ。
どちらかが間違っているなんてことはない。
この問題は、簡単に白黒つけられるものではない。


この約1年、あまりにも多くの情報が流れてきた。
どれだけ多くの人がこの件を知り、驚き、怒り、蔑んできたのかと思うと、やるせない気持ちになる。
世間の反応も重々承知した上で、それでも私は、宙組を応援することを決心した。
それはこの件を無かったことにしたいとか、分かっていながら大したことではないと矮小化したいとか、そうした気持ちからではない。
分かっているからこそ、応援する。
例え多くの人の賛同を受けられなくても、そのことで誰かに悪く言われたりしても構わない。

マスメディアの報道しか見ていない人であれば、この事件が起きた理由は単純で、その対策方法も簡単だと思うだろう。
しかし私は世間とは異なり、この件に関する多くの情報を集めてきた。
もう劇団が撤回している調査報告書も、双方の会見も、週刊誌記事も、ツイッター(X)やYoutube、ヤフコメなども、可能な限り全て。
そうして様々な意見に触れてきた。

その中で、私に一番衝撃を与えたのは、劇団が掲載した調査報告書だった。
この報告書への世間の評価は著しく低いと言っていいだろう。
劇団の息がかかっていると噂され、疑惑の一つについては事実と認定していないから。
私も別に、そこに書かれたことが全て真実だとは思っているわけではない。
そこには、確かに双方の主張が記載されていた。
どちらが正しいかを決めるのは私の役割ではない。
そしてどちらを正しいとも思いたくない。
どちらを正しいと思ったところで、悲劇が無かったことにできるわけではないからだ。

あの報告書で確かに事実と分かるのは、故人含むタカラジェンヌが負わされていた責任と過重労働。
そして、対策を求めても聞いてもらえなかった現役生達の苦しみ。
あの報告書を読めば、この問題が決して簡単に解決できる問題ではないとわかる。
誰かを処分すれば、誰かに責任を負わせれば解決する問題ではないのだ。
もちろん、今の状態のままで万事解決と思っているわけでもないけれど。

彼女の件は、あまりにも不幸が重なったために起きた悲劇であると認識している。
ちゃんと劇団側が彼女を気にかけサポートしていれば起きなかった悲劇であると思っている。
そのことに関して、私は劇団を一生許すことはないだろう。
あの状況の中で、彼女を救うことができたのは、救う義務があったのは、劇団なのだから。
彼女と同い年だった人間として、私は劇団を一生許さないと決めたのだ。

本来なら、彼女はもう26歳になっているはずだった。
でも彼女が年を重ねることはもうない。
彼女は永遠に25歳のままなのだ。
それでも私は、年をとる。
3月に26歳になり、彼女と同い年ではなくなってしまう。
その事実が辛いが、私にとってはこれが彼女のことを覚え続けるきっかけになるはずだ。
好きな舞台映像を見返そうと思えばそこに彼女がいるように。
忘れることはあり得ない。
そして忘れるつもりもない。
少なくとも私にとっては、宙組を応援する=彼女を忘れる、ということにはならないのだ。
二度と彼女のような目に遭う人を出してほしくないからこそ、見守りたい。
贔屓を中心とした宙組生を守りたい。
その気持ちだけは確かで、意見が異なる人もその気持ちは同じはずだから。


贔屓が元気でいてくれるなら。
贔屓が楽しく舞台に立つことができているなら。
私はきっと、宙組から離れることはないだろうと思う。
その満面の笑みを見続けたい。
それがあるなら、私も全て受け入れてついていく。
自分勝手だと言われても、その気持ちだけは消すことはできない。
大好きだから。
例えどんなに辛い思いをしても、この気持ちだけは消えなかったから。

そろそろ千秋楽の幕が開く。
お昼を早めに食べて、お茶の準備もして配信に備えければ。
冷凍しているずんだ餅、解凍して食べようかな。
ムラの配信の時みたいに、泣かないようにしないと。

画面越しからにはなるけれど、応援の気持ちが宙組生に伝わっていることを願う。
宝塚よ、宙組よ、永遠なれ。


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