安政5年、お盆。遠藤は寺の警護についていた。幽霊が出るということで、剣の腕の立つ遠藤ら数名が呼ばれたのだった。
遠藤は幽霊を見つけ次第斬るつもりだった。寺の娘に恋をしており良いところを見せたかったのだ。

丑三つ刻になった。
寺への階段を上ってくる白装束の集団が現れた。浮遊しながら一気に堂内になだれ込んでくる。遠藤らは怯まず刀を抜いた。
遠藤も10体は斬った。
あたりに静寂が戻った。
斬ったものを検分していく。狐や墓から出てきた死体だった。と、最後の一体のところで遠藤は震えはじめた。寺の娘だった。遠藤は短刀を取り出し、その場で腹を切った。
意識が薄れていく中、周りを見ると狐も墓から出てきた死体もなかった。全部剣道仲間だった。娘もいなかった。

「遠藤は気が触れたのか。仲間を全員殺して腹を切るとは」殿が言った。
「これこそがやつらの仕業なのでありましょう」
「なんということだ。貴重な人材を一気に失ってしまった。手厚く供養せよ」

その後、幽霊が出ることはなくなった。あの世に行った遠藤らがあの世で斬るべきものを斬ったからだと言われている。


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