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文転する東大受験生のために、社会と理科の互換性を考えてみる

 私の記事は基本的に東大文系専門なのだが、東大理系を指導できないのはちょっと不都合だよなぁと最近思い、理科の科目をいろいろ見ている。すると、文系の社会科目との関連性?が見えてきたので、思いつき程度にメモ。
ざっくり言うと
物理=日本史説
化学=世界史説
生物=地理説

の三つとなる。地学はどうしようもなかったので、割愛。駆け足になるが、一つづつ見ていこうと思う。あまり意味のない考察だが、文転して社会科目をどうするか迷っている人には、多少役立つかもしれない。なお、東大社会と東大理科における比較なので、他大に関しては当てはまらないかもしれません。あしからず。

・物理=日本史説

 文系からすると、猫も杓子も物化というイメージで、化学とともに理系からは圧倒的な支持を集める物理だが、これを社会に例えると、おそらく日本史になる。
 数学が得意だと物理でもアドバンテージになる、という話はよく聞くし、計算能力、解法の発想力など、似通った部分は多い。
 これの文系版がまさしく日本史だ。ただし、こちらは数学ではなく、国語とのシナジー効果が高い。     
 どういうことかと言うと、東大日本史はリード文の読み解きをもとに、必要最低限の(要求される知識としては共通テストよりも少ない)知識を組み合わせて論述するというスタイルであり、これが国語、とくに現代文的な発想と、かなり似通っているのだ
 相違点としては、現代文が基本的に本文中に答えがあるのに対して、日本史は問題文にヒントはあるものの、知識は暗記したうえで臨まなくてはならないというところだが、それを除けば、両者は重なりあう部分が大きい。
 
 もう一つの類似点としては、他の社会/理科科目に較べて、所要時間を抑えられるという点が挙げられる。
 物理に関しては、計算とともに論述がある程度の分量を占める化学や、論述量がかなり重い生物と比較すると、所要時間という面ではかなり軽くなっている。
 日本史の場合も似たようなことが指摘できる。
 世界史では構想に時間をとられる大問1の大論述(2024年は分割されたが、それでも日本史より長い)、地理では単純な設問の多さと、図表の多さとで、それぞれ制限時間がかなりシビアになっている(私は世界史地理選択だったが、本番でも時間がギリギリだった)
 その点、日本史は世界史のように高度な構想力が問われる長い論述もなく、史料のような読み解き問題はあるにしても、地理ほどではない。だから、地歴三科目のなかでは、時間的に余裕が生まれる科目である。
 理系で物理選択のメリットがしばしば説かれ、推奨されがちな割に、文系の日本史選択のメリットはあまり語られない。ただ、時間的な余裕と、他科目とのシナジー効果という二点から、かなり有力な選択肢であることは確かだ。
 三点目を付け加えると、高得点を狙いやすいというのもある。生物で50点以上はかなり困難だが、物理で50点以上はざらにいる。同じように、日本史以外で45点以上は(地歴の点数が暴騰?した2024は例外として)かなり狭き門なのに対して、日本史で46点辺りは毎年コンスタントに見かける印象だ。50点となるとさすがに少ないが、それでも世界史や地理よりは見ることが多い。
 なので文転組は物理=日本史だと思って選択してみて欲しい。国語とのシナジーは、純粋な文系でないとあまりメリットを感じないかもしれないし、高得点を狙うのも文転組には現実的ではないが、時間的余裕が生まれることだけでも、選択する価値がある。
 というか文転の地歴は日本史+地理の一択な気がする。世界史が知識重視で重すぎるので、多少知識に穴があっても勝負できる日本史、地理を選ぶのが賢い選択なのだ。


・化学=世界史説


 あまり思い浮かばない。単純に選択人口が多いところは共通点かもしれない。文転組にはおすすめできないので割愛。
 

・生物=地理説


 まず思いつくのは、生物が積み上げ型で、計算よりも論述が多く、理科科目ながら文系的要素も強いという点と、それと対照的に、地理が文系科目でありながら、図表などの視覚的データの分析といった、理系的要素を含んでいるという点との類似性だろう。
 文系的な思考や適性が高い人が生物を得意とする傾向があるが、文系における地理は、理系的な発想が要求されることが多いということだ。ただ理系では基本的に物化を主戦場として、生物には目もくれない受験生が多いの対し、文系で日本史+世界史という一見王道に見えるコース(これに加えて共通テストで暗記重視の生物基礎+地学基礎を選択するのがテンプレ)を選ぶ人は、そこまで多くないのが面白いところ。
 本題に戻ると、生物も地理も、教科書レベルの知識を重視しつつも、現場で対応する能力が求められること、それから時事問題が出がちなことは、大きな共通項かもしれない。このあたりが両科目の対策のしづらさの原因として挙げられるような気がするし、逆にいえば、生物的思考、地理的思考を身に着けた受験生にとっては、労力をあまりかけずに7割程度を狙えるということにもなる。
 文転勢にとっては、理系的思考が生きる科目なので、ぜひとっておきたい。少なくとも理科で培ったデータの読み解き能力は、日本史や世界史に較べて活かしやすいはずである。ただ、ある程度の基礎知識が要求されるのは覚悟しておく必要があるが、日本史同様、共通テストで必要とされる知識ほどは要求されないため、あまり恐れる必要はない。理系で共通テストの社会を地理に設定しており、なおかつデータの分析と推論に優れているタイプなら、基礎知識としては十分そろっているので、論述系の問題集や過去問に取り組むなど、少しの慣れで40点程度を安定して取れるようになるかもしれない。
 

まとめ


 文転組は、日本史+地理がよいだろう。日本史は実質物理だと思って取り組んでもらいたい。地理のほうは、理系で培った分析力が生かせるだろう。
 具体的な目標点だが、文転組ということもあって、地歴に関しては無理はしないのがベストだろう。そもそも理系から文転した場合、数学を主な武器にしつつ、英語でも80点くらい確保できれば、国語と地歴にはそれほど注力する必要がない。
 ということで文転組は、地歴二科目の合計で60点、内訳は日本史25点・地理35点を目指したい。推論重視の地理で5割ちょっととし、日本史は共通テストでなんとかしのげる程度の知識で挑む場合、これくらいに落ち着くところだろう。
 全体としては国語50/数学60/英語80/日本史25/地理35 Σ250辺りを目指すとよいだろう。
 数学は約7割超と、最近はめっきり平均点の落ちている文系数学では高い目標設定だが、元理系としてはなんとしても数学でアドバンテージを取らないといけないため、ここは死守したい。英語に関しても同様で、国語と地歴でビハインドを負う以上、やや高めの目標設定にせざるを得ない。
 こうして考えると、文転も茨の道だが、裏を返せば、英語と文系数学のできる理系にとっては、かなり楽に戦えるということでもある。数学は出たとこ勝負の面があり、安定して合格点を積むという意味では純粋な文系に及ばないが、それでも理科が壊滅的にできない理系や、文系科目でも5割程度でお茶を濁せる見通しが立っている理系にとって、やってみる価値はあると思う。



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