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WAISのIQによる発達特性と東大入試の各科目の点数の相関についての考察

 最近、東大入試の点数の取り方と、それぞれの属性についてが話題になっているらしいため、便乗しました。

 

 私一個人としては、発達障害(ASD)かつ東大卒(文III入学)なので、どのような点数の取り方をしているのかについて、やや古いデータになりますが、考察してみます。ひとつのケースとして、参考になれば幸いです
 なお東大入試の結果は2017年2月、WAISのデータは2017年7月にとられたものであり、WAISは東大受験時のIQを、かなり忠実に反映したものとみなせると思うため、ある程度信頼性の高いサンプルとなっているかと思います。

 まず私のWAISのIQ値についてみていきます。


 かなり偏りがあり、さまざまな精神神経科に行く中でも、あまり見たことがない、と口々に言われました。
 特筆すべきはディスクレパンシーが57あるというところで、この値は、東大に7年いた間で30人以上の東大生のWAISデータを見てきましたが、ついにこれを塗り替える人には出会えませんでした。今年度の挑戦者にもいないようなので、東大ディスクレパンシー界隈の連覇記録(8連覇)を継続中です(57を上回るディスクレパンシーの東大生、東大卒の方、ぜひご連絡ください。)
 閑話休題。むしろディスクレパンシー関連で注目すべきなのは、東大生のほとんどは低い項目(8割方の人は処理速度凹)でも100前後で耐えていることが多いため、60近いディスクレパンシーはほとんど出てこない、というところでしょうか。言語理解or知覚推理が140で処理速度100、全検査IQ135というのが、東大生でIQに凹凸がある人のテンプレパターンですが、この場合もせいぜいディスクレパンシーは40程度に収まります。
 裏返せば、言語理解、知覚推理、ワーキングメモリ―、処理速度のどれかひとつでもIQ80台に割り込んでいる項目がある場合、東大合格はかなり難しくなる、ということが言えるように思います。後述しますが、それくらい総合的な能力が求められるのが東大入試だと思います。ただし、私のようになんとかなるというケースもたまにはあり、これについても後述します。
 
 私のデータの全検査IQが110というのも、東大に長くいた間では見たことがないような低さでした。東大生の平均IQは120という俗説がありますが、私が30人近い東大生のWAISのデータを見た限り、平均130は確実にありました。おそらく低く見積もっても、IQ125辺りが妥当な気がしています。

 おそらく私の全検査IQの低さは、遺伝的なもののように思えます。私の家系には大卒者はおらず、両親ともに高卒で、家族のIQはせいぜい100を超えるか超えないかくらいのところかと思います。なのでその子供である私が、いきなり全検査IQ130に生まれるようなことは、遺伝法則的にもかなり考えづらいところがあり、全検査IQ110はやや上振れしたものの、妥当なところでしょう。
 ただ、全検査IQが110と、相対的に低い値だったとしても、言語理解の一点特化に振り切り、動作性部門を犠牲にした脳の発達をしたこと、およびASD特性により、全体的な脳のスペックの低さの割に、IQ130以上がひしめく東大入試でもなんとか渡り合えたという気がしています。

 さて、ここまで私のWAISを見てきましたが、実際にこのような偏りのある発達をした生徒が東大文系を受験した場合、どのような得点が出てくるのでしょうか。答え合わせをする前に、Chat GPTにWAISのデータを読み込ませて、東大文系二次試験の各科目の得意不得意を予想させてみました。

あなたのWAISのデータをもとに、各科目に対する得意・不得意を次のように推測します。

1. 国語(得意科目)**言語理解(138)**の非常に高いスコアから、国語は得意な科目であると推測されます。文章の読解力、語彙の理解、論理的な言語表現が求められる国語の試験において、文章の内容を的確に理解し、要点を把握する能力が優れていると考えられます。また、長文読解や評論文、古典の解釈においても強みを発揮する可能性が高いです。


2. 数学(不得意科目の可能性)**知覚推理(81)**の低さから、数学は不得意科目の可能性が高いと推測されます。特に、空間的な問題や図形、パターン認識、論理的な推論が必要な幾何学的な問題に苦戦するかもしれません。ただし、数学の中でも言語的な要素が強い文章題や計算の正確さが求められる部分においては、ワーキングメモリー(115)の高さが助けになることが考えられます。


3. 英語(得意科目の可能性)言語理解の高さから、英語も比較的得意な科目である可能性があります。特に、文法や読解問題では、言語的な処理能力が役立つはずです。また、英語の語彙力や文章構造を理解する能力が高いことが期待されます。一方、リスニングやスピーキングのような瞬発的な情報処理が求められる部分では、処理速度(100)が平均的であるため、若干の難しさを感じることがあるかもしれません。


4. 地理(平均〜不得意科目の可能性)地理は視覚的な情報(地図や図表)や空間的な理解が求められるため、知覚推理(81)が低いことが影響し、特定の分野では苦手意識が生まれる可能性があります。地理では、地図の読み取りや空間的な配置の理解が必要なため、これらのタスクに対して時間がかかるかもしれません。ただし、言語理解の強さから、地理の用語や記述問題に関しては比較的対応できる部分もあります。


5. 世界史(得意科目の可能性)言語理解の高さに基づいて、世界史は得意な科目である可能性があります。世界史は膨大な量の情報を理解し、語彙や概念を把握する能力が重要です。複雑な歴史的背景や因果関係の説明、論述問題などにおいて、あなたの言語的な強みが発揮されるはずです。一方で、地図を用いた問題や空間的な認識が必要な部分では多少の困難があるかもしれませんが、全体的には得意科目に分類されると考えられます。


総合的な推測得意科目: 国語、英語、世界史
不得意科目の可能性がある科目: 数学、地理


この結果を踏まえ、特に苦手と感じる部分に対しては、工夫を凝らした勉強法を取り入れるとよいでしょう。

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これを実際の東大二次試験の得点にすると、こんな感じでしょうか
【WAISから予想する東大入試の得点】

国語 84/120点
数学 25/80点
英語 75/120点
世界史 40/60点
地理 30/60点

∑ 254/440点

それでは、実際の開示で答え合わせをしたいと思います。

【国語】WAISからの予想:高得点 実際:61点=合格者平均前後

 いきなり予想が外れました。国語は小学生時代から得意でしたが、小説などは嫌いで、新書などを含む一般の本は、大学に上がるまでほとんど読んだことがありませんでした。東大現代文は、文章への読み慣れ、言い換えれば読書体験の多寡が割と効いてくるので、活字に触れなかったせいでポテンシャルが相殺された感じがあります。古文・漢文はまずまず得意でしたが、古文では伊勢物語や源氏物語などの恋愛物語がかなり苦手(文学に転向したいまも苦手です)で、実際の入試では源氏物語が出題されてしまい、今一つ奮いませんでした。WAISを受けたのは東大入学後だったので、潜在的に国語能力が高いとは知る由もなかったのですが、もし知っていれば、もう少し積極的に国語対策をした気がします。

【数学】WAISからの予想:低得点 実際:44点=合格者平均かやや下

 こちらも外れました。もっとも東大模試では3/80点を記録するなど惨憺たる有様で、4回の模試を通じて数学0完だったので、苦手意識は強くありました。また、Chat GPTの幾何に弱いという指摘は、正鵠を射ており、小学生時代から図形問題が異様に苦手でした。
 東大の本番ではベクトルによる図形問題が1問でたのでこれは完全に白紙。ただ、大問1の微積分野は、同様に東大文系数学で頻出の数列や確率、整数分野で求められるような規則性の発見=知覚推理能力が必要とされないため、こちらで1問完答できました。その他は確率と数列でなんとか部分点をかき集め、44点と5割超えを果たしました。
 体感ではもっと低いと思っていて、開示の高さに驚いたのですが、おそらくは東大模試とは採点方法が根本的に違うのではないかと考えます。どうやら東大文系数学の採点現場では、東大模試のように途中式や答えの数値があっているかよりも、論証のプロセスやその言語的説明を重視する傾向があるようです。また、数学には文III採点なるものがあるという説が、まことしやかに囁かれていますが、もしあるとすれば、数式や答えの値への評価はそこそこに、言語的な論証であったり、方針の提示を特に重視する採点スタイルなのではないでしょうか。
 もしもこうした、数値や数式よりも言語的論証を重視する採点が行われているならば、言語理解分野での強みを反映させることができるため、私のように知覚推理が境界知能レベルで低くとも、ある程度の点が来たことに納得がいきます。なお、文系数学で44点は、例年なら平均前後ですが、この年の合格者平均は50前後だったので、やや低いと位置づけました。

【英語】WAISからの予想:やや高得点 実際:79点=合格者平均よりやや高い
 こちらはうまく合致しました。全体的には言語理解の高さが生きる科目で、懸案のリスニングも、聴覚優位だったことから、むしろ得意でした。ただ、GPTでも指摘されているように、処理速度が平均的なため、処理能力の問われる東大英語とはやや相性が悪かったと思います。実際、普通に解いていると時間が足りないことは模試で分かっていたので、4Aの記号選択の文法問題2点×5は捨て問とし、すべて同じ記号をマーク、捻出した時間を英作文などにまわすという戦略を採りました。

【世界史】WAISからの予想:やや高得点 実際:30点=低得点

 こちらは大きく外れました。もっとも夏模試などでは40点をとるなど、ある程度得意という印象でした。ただ、ASD由来の、分野・時代による好き嫌いが激しかったため、必然的に対策が行き届いた分野と、手薄な分野とが出来てしまいました。具体的には、東大の過去問で頻出だった、近現代のグローバルヒストリーを得意としていた一方、古代史や文化史は興味がわかずに、あまり対策しませんでした。本番では39年ぶりに大論述で古代史のみの出題にぶつかってしまい、あえなく惨敗しました。

【地理】WAISからの予想:やや低得点 実際:43点:まずまずの高得点

 こちらも外れました。確かにGPTの指摘するような、知覚推理凹による、地図やグラフ、表の読み解きの苦手さは、普通に考えればありがちだと思います。しかし私の場合、これもまたASDの興味関心の限局という特性から、幼時より極度の鉄道マニアであり、鉄道と密接な結びつきのある地理という分野に関しても、小学生時代から地誌の本を片っ端から読んでいたため、ある程度、図表や地図を見慣れており、経験的に対応することができました。学校の授業すらまともにとらず、塾や予備校も、他の科目含め高校3年間一切通っていなかったのでほとんど独学でしたが、鉄道マニアであることが幸いして?模試などでも絶対的な得意科目でした。

【まとめ】
 こうして見てみると、WAISの各分野のIQ特性と、東大入試の各科目の得意不得意とは、思いのほか関係性が薄い、ということがわかります。受験生界隈ではよく、凹凸の激しい、特異な点の取り方を「コンテンツ力」とよぶ風潮がありましたが、私の場合、WAISがコンテンツ力の塊なのに対して、東大入試の開示得点は、およそコンテンツ力のない、せいぜい世界史が低く、地理が高い程度で、平均的な取り方をしています。
 その齟齬の原因としては、数学で見て来たような、東大文系数学特有の採点方針や、世界史や地理のところで見て来たように、IQに反映されないその人の特性という部分が、かなり影響を及ぼしているのではないかと考えます。
 それからASDにありがちな、オタク的、興味の限局的性が、受験にうまくハマると強みを発揮するという点も、IQには表れないものの、合格に大きく寄与する要素として重要でしょう。私は公立無名校(虚弱体質で遠距離まで通えない&公立中で異性に蛇蝎の如く忌み嫌われていたため、最寄の公立別学校を選択)かつ、塾なし(金銭的事情ではなく、私が極度に内向的であり、学校以外の人がたくさんいるところに行きたくなかったため)という条件でしたが、高2の夏あたりに東大を志望校と定め、自力で東大入試を多角的に分析、点数の取り方のパターンをネット・本などで大量に調べ上げました。また、高3の一年で詰め込むのは、体力的に無理ということで、高2夏あたりから早めに受験勉強を準備したことも、現役合格に大きく寄与したと思います。
 こうしてみてみると、言語理解が高いから国語ができる、知覚推理が低いので数学は壊滅、というふうにIQがそのまま科目の得意不得意に反映されることは、決して必然ではないということが言えそうです。
 むしろIQ以外の要素、私の場合でいえば、ASDによる興味の限局、という要素が、各科目の結果により強い影響を与えているように思えます。
 
 結論としては、WAISの各項目のIQの値だけを鵜呑みにして、科目の得意不得意を決めることはあまり得策ではなく、むしろIQに反映されない発達特性などを加味することによって、発達に凹凸のある受験生にとって、よりよい受験計画が立てられるのではないか、というところに落ち着くかと思います。

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