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IR-DX SaaS 「Hooolders」開発秘話 (その3:予想PERと実績PBR)

みなさまこんにちは。

FiguroutでIR-DXツール「Hooolders」のプロダクトマネージャーをしておりますzumiです。

今回も「プロダクト担当から見たIR」という切り口で、IR関連の情報を交えながら、Hoooldersの開発裏話を投稿させて頂きます。

※「Hooolders」は企業の経営者・IR担当者向けに作られたIR-DX SaaSです。(詳細はこちら → https://lp.hooolders.com/

今回のテーマは、予想PER(株価収益率)と実績PBR(株価純資産倍率)です。これまた業界の方からするとおなじみの指標ではありますが、プロダクト実装までには様々な困難がございました…

予想PER・実績PBRとは

詳しい説明は省きますが、要は、予想PERは企業の将来利益に対して現在の株価が割安か割高かを評価する指標で、実績PBRは企業の株価がその企業の純資産価値(簿価)に対してどの程度割高または割安であるかを評価する指標と言えます。PER・PBRは複数の文脈で語られ、それぞれいろんな意味を含みますが、その計算式は以下で定義されます。

予想PER = 株価 / 予想EPS(一株当たり純利益)
実績PBR = 株価 / 実績BPS(一株当たり純資産)

この一見単純な計算式が、殊プロダクトに実装するとなると、どういった部分が大変なのでしょうか。

※本コラムでは会社予想基準の予想PERを念頭にしております。

データ準備までの3つの難所

決算短信

1.データソースの問題

PER・PBRの計算式からもわかるように、両者には、株価に加えて「予想EPS」と「実績BPS」が必要になります。これらは以下の式で表現されます。

予想EPS = 当期純利益(予想)/ 発行済株式数
実績BPS = 純資産 / 発行済株式数

従って、PER・PBRの算出に必要なデータは、株価、当期純利益(予想)、純資産、発行済株式数の4つです。株価を除く後者3つは、決算短信や有価証券報告書に記載されており、Hoooldersでは速報性を重視し、各社の決算短信からこれら数値を取得することにしました。

決算短信には3つの会計基準があります。日本基準、IFRS、そして米国会計基準です。データ取得の段階で一番厄介だったのは、それぞれの会計基準で取得すべき要素名が異なるという点でした。例えば、実績PBRに必要な「純資産」は3様式でそれぞれ要素名が異なります。また、ある企業が一つの様式だけ提出しているかというとそうでない場合があり、さらには、途中で様式を日本基準からIFRSに変更するということが発生するため、もれなく、ダブりなく、各様式でどの要素名をターゲットにするかの仕組み作りが必要でした。

2.イレギュラー対応

データ取得にはたいていの場合このイレギュラー対応が必要になるということを最近しみじみ感じているのですが、本件も例にもれずでした。特に予想PERに関しての話になりますが、業績予想というのは、その名の通りあくまでも「予想」ですので、その数値自身の予想が困難な場合があります。最近ですとコロナ禍での短信発表が良い例なのですが、経済動向や社会動向の先行きに見通しがつかないような状況ですと、業績予想も出せなかったり、あるいは範囲を設けて数値提供するということが起こります。こうしたイレギュラーケースへの対応は時間もかかるし、骨が折れる作業でした。

3.数値更新を悩ませる株式分割

最後は、株式分割・併合などのイベントへの対応です。予想PER・実績PBRはどちらも計算要素に「株価」と「発行済み株式数」が入っているため、株式分割が行われても算出値に影響が出ないよう、調整後の「株価」と「発行済み株式数」を参照する必要があります。株式分割に係る一連の苦労は過去記事(IR-DX SaaS 「Hooolders」開発秘話(その1:株式分割))で記載しておりますのでここでは省略しますが、予想PER・実績PBRに関しては、過去数値との整合性やその後の短信発表後の新数値との兼ね合いなど、実装段階で複雑なロジックを構築する必要がありました。

いかがでしたでしょうか。予想PERも実績PBRもIR界隈の人にとってはお馴染みの指標ですが、殊自動化・システム反映となると、細かい仕様や実装についての深堀が必要なことが伝わったかと思います。最近、プロダクト開発とは、こういった「普段何気なく利用されているモノやコトの本質を突き詰め、いつもは隠れて姿を現さない根底にある定義や原理を掘り起こして言語化することなのかもしれない」と思うようになりました。ここまでご一読くださりありがとうございます。次回は、「流通株式時価総額」についてプロダクト観点で記載できればと思います。

是非この機会に一度「Hooolders」を ご利用ください。
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