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海がみえる電車
ひさしぶりが
嘘みたいに聞こえて
もしかして昨日も明日も
一緒にいたりしないかな
電車に揺られた日ばかり
覚えているわたし
ガラスに映るふたりの
ぼやけた輪郭が
いちばんいい、
たぶんそれ以上の夕暮れはないよ
海がみえる
そのたびガラスにちょっと近づく
海がない街に生まれたから
海はいつも窓の向こう
踏切は越えないほうがいいし
波は被らないほうがいい
海のつめたさを
わたしは知りたくない
電車が狭い線路に入る
夢の話をする
電車はすこし傾く
すこしだけ
海がみえる
そのたび色はちょっと違って
知らない顔をしていたから
言えたこともあったかもね
あるはずだったいちにちが
急になくなってしまって
行くはずだった場所を
画面の中に収める
閉じこめて眺める
つぎはまた
ひさしぶりって言うことになるだろう
また嘘みたいだといいな
海がみえる
ガラスはふたつの影を
海のなかへほうりこんだ
海はまだ窓の向こう
ふたりはもう窓の向こう
今日、ごはんを食べていたら、旅の話になって、ある友人と旅行をしたことを思い出した。彼女とはしばらく会っていないけど、会うと無性に何か書きたくなる。彼女が見てきた世界のあまりの豊かさと美しさと、でもその裏側まで見通しているがゆえに、わたしとは全く違う考え方で生きているところに、わたしは何度も圧倒される。まだ自分の力では見つめられない感情が、通奏低音を奏でている。自分の薄っぺらさに気付かされながら、それでもわたしを認めてくれるその友人のおかげで、なお諦めたくないと思って、わたしはキーボードに両手を乗せる。なかなか終わらない小説ばかり書いていたらいちにちが終わってしまい、日記を書く体力がなかったので、最後に彼女に会ったあとに書いた詩をここに。