演奏活動の再開報告
こんにちは。
少し時間が空いてしまいましたが先日9月12日に和光市民文化センターサンアゼリアの大ホールで行われた「和光3.11を忘れない」チャリティーコンサートに出演させていただき、緊急事態宣言で活動自粛となって以来初の舞台を無事終えることが出来ました。このコンサートは本来3月に開催されるはずだった毎年恒例のチャリティーコンサートで、もとはオーケストラと合唱による大掛かりなプログラムが予定されていたのですが、まだ大人数で舞台に乗っての演奏が難しいという事で、和光や東北地方にゆかりのある声楽家17名によるソロステージと人数を半分以下に減らした合唱団によるピアノ版「第九」がメインのコンサートとして開催されました。当日は3時間を超える熱演に、こちらも通常よりもかなり人数を制限しての客席にお集まりいただいたお客様の拍手に「演奏会」が再開したことを実感し、開催までの幾多の困難を乗り越えた合唱団と主催者関係者の皆様に深い敬意と感謝をおぼえた演奏会でした。
石塚は先の記事でご紹介したようにイタリアの作曲家、F.P.トスティの歌曲を二曲披露させていただきましたが、当日のサプライズとして二回目の休憩中にテノール三人による「オー・ソレ・ミオ」のゲリラ演奏なども行い、他にもオペラアリアや歌曲など多彩なプログラムのコンサートとなりました。この手のガラコンサート形式では演奏時間が長くなってしまったり、基本的に奏者がそれぞれ曲を選ぶのでプログラムに一貫性が無くなってしまったりと難しさもあるのですが、当日のプログラムに一本の柱を築いたのは間違いなく複数回にわたって出演した和光3.11合唱団の力が大きかったと思います。「第九」の他にも「サウンド・オブ・ミュージック」や「群青」、東北を題材にした「石巻・わがふる里」なども熱演で、舞台全面に広がってお互いの距離を取り、マスクを着用しての歌唱は心を打つものでした。元来自分はソロよりもアンサンブルや合唱の方が好きで、舞台に一人ぼっちで歌うのはあまり性に合わないのですが、このような制限された状況下ではありながら合唱を歌えることに羨望と尊敬の念を込めて見守っていました。
自分の演奏はと言えば半年以上も舞台から遠ざかっている中で、もちろん発声の技術的な問題もですが「舞台上で歌う」という気持ちの作り方がまだつかめず、なんだか気が付いたら本番が終わっていたというような感じで、自分の演奏を評価することも難しい状態でしたが、とにかくホールで歌い演奏会のプログラムの一端を担うことが出来たのはひとつの成果であると思っています。おかげさまでご来場いただいた方からも好評をいただけたようで、その事が一番うれしく、やはり自分はお客さんの前で歌うという事に意義を見出したいと思った本番でもありました。サンアゼリアでは来月10月9日にも同じく和光近辺の声楽家によるガラコンサートへ出演することになっていますし、自分が主宰する団体での活動も少しずつ始まっています。半年という長い自粛期間は失ったものも多かったですが、「歌う」という事についてもう一度自分を見つけなおすきっかけにもなったと感じています。特に改めて思ったのは音楽を、演奏会を楽しみに来てくださるお客様のために歌いたいという事で、これはまだしばらくは演奏会開催に制限が課せられるであろう中で多くの人が安心して音楽を楽しめる環境を作らなくてはならないと感じました。
主宰する演奏家集団「石塚組」やサロンコンサートSaluto!では公演を全て来年以降に延期しましたが、オンラインでの取り組みも始めようとしています。また、新年1月10日にはニューイヤーコンサートを開催する予定で場所を確保していて、正直開催について迷っていたのですが、どんな形であろうとコンサートは開催しようと決断しました。まだ演奏会場に足を運ぶのは難しいという方にも楽しんでもらえる形を作れるように模索しているところです。
新型ウイルスの感染拡大のリスクは決してなくなったわけではありませんが、少しずつ社会も動き出しています。何よりも音楽が「不要不急」などではない、人の心に欠かせない潤いを与える存在であると確信し、様々のことに十分留意しながら活動再開していきたいと思います。皆様方に置かれましても決して無理はせず、それぞれのペースで日常を取り戻していただければと思います。活動の再開にあたり応援していただけるという方は是非下の「サポートする」よりご支援いただければ幸いです。今後とも演奏家石塚幹信をどうぞよろしくお願いいたします。